グーグルの衝撃

October 10, 2006

ウェブサービス時代のソフトウェア会社

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第148号 2006/10/9
▼ まえがき:「グーグルの衝撃」シリーズ完結
▼ [グーグルの衝撃] (1)Web2.0の世界
▼ [グーグルの衝撃] (2)ウェブサービス時代のパッケージソフト会社
▼ [グーグルの衝撃] (3)ウェブサービス時代のシステム開発請負会社
▼ 次回以降の予告


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まえがき:グーグルの衝撃シリーズ完結
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から開始した「グーグルの衝撃」シリーズも今回で11回目に
なります。今週号で「グーグルの衝撃」シリーズは完結です。


「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
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[グーグルの衝撃] (1)Web2.0の世界
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さて、これまでに断片的に行ってきた近未来予測をまとめてみましょう。

まず、Web2.0の世界を見てみましょう。

Web2.0の世界では下記の3人のプレーヤーが、主役となります。

(A)ウェブサービスAPIを提供する巨人
(B)厖大なアマチュア群
(C)ウェブサービスAPIを利用して少し金儲けをする「個に限りなく
 近い極小の存在」

 関連記事:第146号「(3)近未来のソフト業界の主要なプレーヤー」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_701e.html
 http://www.kei-it.com/sailing/146-060925.html


(C)についてコメントします。

Web2.0革命を標榜する起業家たちは、技術的にはグーグルやアマゾン
を追いかけることはできます。
しかし、「規模」を真似ることができなければ、打ち上げ花火、
または、単なる小遣い稼ぎに終わるでしょう。

 関連記事:
 第118号「(1)アイデア系ベンチャーは打ち上げ花火」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/03/post_8ea4.html
 http://www.kei-it.com/sailing/118-060313.html

 第141号「(4)そこは大多数の人々は、儲からない世界」
     「(5)「あちら側」は帝国主義の世界」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/08/post_a37c.html
 http://www.kei-it.com/sailing/141-060821.html

 第143号「(4)グーグルのアドセンス」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_70c5.html
 http://www.kei-it.com/sailing/143-060904.html

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[グーグルの衝撃] (2)ウェブサービス時代のパッケージソフト会社
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次に、パッケージソフト会社を見てみましょう。

ウェブサービスAPIの普及の影響は、オープンソースの普及の影響と
似ているでしょう。

インフラ系、ミドルウェア系パッケージの大部分はオープンソースと
ウェブサービスAPIに置き換わるでしょう。

アプリケーション系パッケージも開発コストとユーザの意識が乖離
してきて、苦しい状況に陥ります。

中小パッケージソフト会社は、オープンソースやウェブサービスAPI
を開発するメリットがない分野に焦点を絞らなければなりません。
また、収入源をインストール・ベースのライセンス料金から、保守
サービス料金へと移行させなければなりません。

 関連記事:
 第117号「(4)オープンソースが苦手とするソフトを作るべき」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/03/post_4a26.html
 http://www.kei-it.com/sailing/117-060306.html

 第109号「(3)パッケージ・ソフトが置かれている状況」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/01/post_3d3c.html
 http://www.kei-it.com/sailing/109-060109.html


ちなみに、下記は慶が開発・販売しているパッケージです。
 行政ナビ:http://www.kei-it.com/gyonavi/
 プラノPOS:
 http://www.kei-ha.co.jp/img/topic_nikkeisangyo060904.gif

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[グーグルの衝撃] (3)ウェブサービス時代のシステム開発請負会社
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ウェブサービスAPIの普及はシステム開発請負会社に対しても影響を
与えるでしょう。

インフラ、ミドルウェアはオープンソースやウェブサービスAPIに
置き換わっていくので、インフラ、ミドルウェア開発の一括請負は
減るでしょう。

一方、アプリケーションのカスタム開発が単純に減るということは
ないでしょう。顧客の環境に密に依存する開発だからです。

但し、「単純に減る」ことはないのであり、下記の意味で減る可能性は
大いにあります。

(A)オフショアの進展
(B)ユーザ企業間競争の激化によるコストの削減
(C)ソフトウェア会社間の競争激化による価格破壊

 関連記事:
 第108号「(1)2006年のインフラ、ミドルウェア開発」
     「(2)2006年のアプリケーション開発」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/01/2006_1a84.html
 http://www.kei-it.com/sailing/108-060102.html

 第49号:「(5)日本に残る仕事」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/11/post_dd89.html 
 http://www.kei-it.com/sailing/49-041115.html

 第79号:「(2)米国におけるインドオフショア開発の影響」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/06/post_a84f.html
 http://www.kei-it.com/sailing/79-050613.html

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次回以降の予告
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次号以降では、「グーグルの衝撃」シリーズでの未来予測をベースに、
今後の中小ソフト会社が目指すべき組織、営業、企画、労務に関する
シリーズを立ち上げる予定です。

次号は、10月16日発行予定です。

乞うご期待!!

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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

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October 02, 2006

市場から調達するか、少数の供給者から調達するか

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第147号 2006/10/2
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] WEB2.0の世界では、資金さえ必要ない
▼ [グーグルの衝撃] 日経「Web2.0革命の旗手たち」
▼ [グーグルの衝撃] IT革命論者が描く未来像
▼ [グーグルの衝撃] コア・コンピタンスを短期的に見てはならない
▼ [グーグルの衝撃] 外注は市場から調達しないという手
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

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[グーグルの衝撃] WEB2.0の世界では、資金さえ必要ない
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下記は「ウェブ進化論」の著者である梅田望夫氏のブログからの
引用です。

> Forbesのカールガードがしきりに言う「Cheap Revolution」が進行中
> であるために、VCから資金調達などしなくても、ネット・サービスの
> かなりのところまでを、一人または数人のチームでどんどん作って
> いくことができるようになった。99年から2000年にかけてのバブル・
> ピーク時から最も大きく変化したのがこの点だろう。
> VCから資金調達せず(自己資金とせいぜいエンジェルからの少額の
> 投資で)、いきなり大手に買収されるだけのエンティティを作ることが
> できる時代になったのである。
>      ( http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050309/p1 )


ハリウッドの映画スタジオは、資金、あるいは、固有の資金源は
持っています。
しかし、チープ革命が進行したWEB2.0の世界では、資金さえ多くは
必要なくなってくるのです。

 関連記事:第146号「ハリウッドの映画のように」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/
 http://www.kei-it.com/sailing/146-060925.html

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[グーグルの衝撃] 日経「Web2.0革命の旗手たち」
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最近、日本経済新聞で「Web2.0革命の旗手たち」という記事が連載
されてます。
そこでは、「Web2.0革命の旗手たち」は、楽天の三木谷社長や
ライブドアの堀江元社長とは違って、金儲けよりも技術に興味がある
かのように描かれています。

> 「インターネットの草創期はネット好きのマニアが中心だったが、
> 事業として成功したのは経営がうまいビジネスマンだった」と
> 藤田は分析する。しかしWeb2.0という新技術の潮流は「再びネット
> 好きが活躍できる場を与えた」と言う。
>        (2006年9月21日 日本経済新聞 夕刊)


Web2.0革命の旗手たちが、1990年後半のITベンチャーと違って、
詐欺師まがいの資金調達をしなくなった理由は、彼らがお金に淡白な
技術屋だからというよりも、チープ革命が進行したため資金がそれほど
必要なくなったからでしょう。

 関連記事:第138号「1990年代後半からITバブル崩壊まで」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/1990it_4944.html
 http://www.kei-it.com/sailing/138-060731.html

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[グーグルの衝撃] IT革命論者が描く未来像
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起業に大資本が必要なくなっていることは事実です。

したがって、IT革命論者は未来を、個人または「個に限りなく近い
極小の存在」が活躍できる世界として描きたがります。

> 今後ますます続いていく「Cheap Revulution」は、「個に限りなく
> 近い極小の存在」にとっての朗報である。
>
> ( 梅田望夫氏 http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050309/p1 )


IT革命論者は未来を次のように描きます。

・専門化された企業や個人が対等に水平分業しあう世界。
・系列的・固定的に密接に結合した垂直分業ではなく、市場原理で
 緩やかに繋がり合った世界。
・企業や個人がバラバラに動いても「見えざる手」が機能してうまく
 いくというアダム・スミス的世界。


それを技術的に実現するウェブサービスAPIが、RPC(リモート・
プロシージャ・コール)のような密接な結合ではなく、メッセージと
XMLによる緩やかな結合であるということも、上記イメージを強固に
しています。

IT革命論者は、インターネットの世界が超巨大な存在をさらに
超巨大にしていく世界であるということよりも、「個に限りなく近い
極小の存在」が活躍できる自由主義的、民主主義的な世界であることを
強調したがります。「ウェブ進化論」にもその傾向があります。

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[グーグルの衝撃] コア・コンピタンスを短期的に見てはならない
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IT革命論者が理想とするのは、米国流の「市場主義」「選択と集中」
「水平分業」であり、ハリウッドの映画制作のように必要に応じて
解散と再結成を繰り返す合目的的な組織です。

逆に彼らが嫌いなのは、総花的で自前主義的で終身雇用的な日本
企業です。


岩井克人氏も「会社はこれからどうなるのか」の中で、個々の会社が
自分のコア・コンピタンスを特定化することの重要性を説いています。

 関連記事:第115号「小さくなって大きくなる」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/02/post_c7c8.html
 http://www.kei-it.com/sailing/115-060220.html


しかし、岩井克人氏は同書で次の非常に重要な指摘もしているのです。

(1)コア・コンピタンスという概念をあまり短期的な視点から考えては
 いけない。

(2)外注先を広く市場に求めるのではなく、長期的な関係を結んでいる
 少数の会社に限定するほうが成功する場合もある。


(1)については、次号以降で解説します。
今週号では(2)のみ解説します。

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[グーグルの衝撃] 外注は市場から調達しないという手
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コア・コンピタンスを追求すれば、不得意な製品や部品の生産や開発
を他の会社に外注することは避けられません。
しかし、それは、必ずしも、外注する会社を広く市場に求めることを
意味しません。

> つねに技術を革新していかなければならないハイテク産業や、つねに
> 斬新な製品をお客様に提供していかなければならない消費財産業に
> おいては、急激な変化に迅速に対応していくためには、それぞれの
> 部品の供給者と、製造技術や製品デザインの細部についての情報を
> たえず交換していく必要があります。

そのような産業では、

> それぞれの部品ごとに、共同で技術を開発したりデザインを検討
> したりすることのできるごく少数の供給者と長期的な関係を築き上
> げていくほうが、広く市場から部品を調達していくよりも、長い目で
> 見れば、良い結果を生み出す可能性が高いというわけです。
>
>     (岩井克人氏著「会社はこれからどうなるのか」より)


また、今回は触れませんが、「会社はこれからどうなるのか」では、
ポスト資本主義であるが故の長期雇用の重要性、組織の重要性が
語られています。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制


次号は、10月9日発行予定です。

乞うご期待!!

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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
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September 25, 2006

ハリウッドの映画制作のように

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第146号 2006/9/25
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] クリンジリーの映画スタジオモデル
▼ [グーグルの衝撃] 進化した映画スタジオモデル
▼ [グーグルの衝撃] 近未来のソフト業界の主要なプレーヤー
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

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[グーグルの衝撃] クリンジリーの映画スタジオモデル
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「コンピュータ帝国の興亡」の「第15章 未来のコンピューティング」
の中でロバート・X・クリンジリーは、ハリウッドの映画制作のような
方式でソフトウェアを生産すべきだと主張しています。
要約すると次のようなことです。

 ハリウッドの映画スタジオは、資金、管理、製造、そして配給の
 機能しか持っていない。それ以外のほとんどすべては外部との契約
 でまかなっている。ライター、監督、プロデューサー、俳優と
 いったほとんどすべての人間は、契約によって雇っている。
 
 ソフトウェア業界もこのモデルを採用すべきだ。
 映画スタジオモデルを採用したソフトウェア会社のマネージャは、
 それぞれの仕事に合わせて最良のスタッフを調達することになる。
 
 また、大物になりたい人間は自分のスタジオを作ってもいいし、
 現代の映画界の独立プロデューサのようにアイデアと才能を結び
 つける仕事をしてもいい。


スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスの世界です。

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[グーグルの衝撃] 進化した映画スタジオモデル
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「コンピュータ帝国の興亡」は1991年に書かれた本です。
その後、インターネットの爆発的な進歩があり、現代の映画スタジオ
モデル論は次のように進化しています。

 通信コストが低下し続け、インターネットの統合力が強まれば、
 企業による集中的な管理とは無縁の状態であっても、企業が行って
 いる活動の大半は市場を介して行えるようになる。産業界は、
 ハリウッドの映画制作のような方式で、商品を生産するようになる。

上記は「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」の中で、ニコラス・
G・カーが要約したIT革命論者たちの主張です。


梅田望夫著「ウェブ進化論」では「ハリウッドの映画制作のような
方式」という言葉は使われていませんが、梅田望夫氏やWeb2.0革命を
標榜するベンチャー企業の経営者は、おそらく次のような考え方に
賛同するのではないでしょうか。

「今後は様々なウェブサービスAPIを無料または無料に近い金額で
利用できるようになる。斬新なアイデアを持った若くて俊敏な企業は、
それらのAPIを利用して極めて容易にシステムを作り上げ、インター
ネット上でビジネスを展開できる。そして、インターネット上の
ビジネスは極端に変化の激しいものである。
したがって、それらの俊敏な企業は長期継続型の組織ではなく、
ハリウッドの映画制作のように、目的に応じて解散と再結成を繰り
返す組織になるであろう。」

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[グーグルの衝撃] 近未来のソフト業界の主要なプレーヤー
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梅田望夫著「ウェブ進化論」を読むと、近未来のソフトウェア業界の
主要なプレーヤーは次の三者になるように思えます。

(1)ウェブサービスAPIを提供する巨人

グーグルやアマゾンのように、ウェブサービスAPIを無料または
無料に近い金額でグローバルに提供する巨人たちです。
ウェブサービスAPIは技術的には、誰でも作ることも公開することも
できますが、それで大儲けをするためには、まず無料または無料に
近い金額で提供して、デ・ファクト・スタンダードの地位を確立
しなければなりません。そのためには規模が必要なのです。

参考記事:
 第144号「デ・ファクト・スタンダード」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_a59f.html
 http://www.kei-it.com/sailing/144-060911.html


(2)映画スタジオモデル

アイデアと才能あふれる小さな会社です。
公開されているウェブサービスAPIを駆使して、ごく短期間に優れた
システムを作り、それを使ってインターネットサービスを提供する
会社です。
長期継続型の組織ではなく、ハリウッドの映画制作のように、必要に
応じて解散と再結成を繰り返す組織です。

(3)厖大なアマチュア群

ここには次の3種類の人々が含まれます。
・無償でウェブサービスAPIを作るオープンソースプログラマ。
・ウェブサービスAPIを使って自社システムを作成するユーザ。
・アドセンスやアマゾン・ウェブサービスなどで小遣い稼ぎをする人々。


そして、一方で、ネットの「こちら側」にいるインハウス開発や
パッケージは徐々に衰退していくように思われます。
「インハウス開発」については、第103号を参照してください。

 第103号「インハウス開発とは」:
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/11/post_5f75.html
 http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html


本当にそうでしょうか?

次号以降では、長期継続、企業文化、会社組織が、ウェブサービス
時代だからこそ重要なのだという話をします。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制


次号は、9月25日発行予定です。

乞うご期待!!

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September 19, 2006

取引コスト

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第145号 2006/9/18
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」
▼ [グーグルの衝撃] 取引コストとは市場を利用するためのコスト
▼ [グーグルの衝撃] ソフトウェア請負契約の取引コスト
▼ [グーグルの衝撃] 内製する米国、外注する日本
▼ [グーグルの衝撃] 労働者派遣契約・準委任契約と取引コスト
▼ [グーグルの衝撃] インターネットは取引コストを下げる
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
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[グーグルの衝撃] ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」
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複雑な世界を見通すときに役立つ強力なレンズが存在します。

例えば、WEBでのマーケティングについては、ロングテール理論は
強力なレンズと言えるでしょう。

第143号「ロングテール」参照:
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_70c5.html
http://www.kei-it.com/sailing/143-060904.html


今週号では、ロングテール理論よりもはるかに応用範囲の広い
レンズを紹介します。

ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」です。

「取引コスト」という概念は、名前からして非常に地味な概念です。
「ロングテール」はネット上でも様々な論争が繰り広げられていますが、
「取引コスト」の方はほとんど話題にのぼりません。

例えば、先ほどグーグルで「ロングテール」で検索したところ、
3,660,000件ヒットしました。
一方、「取引コスト」で検索したところ、わずか138,000件しかヒット
しませんでした。
しかも、その138,000件の半分以上は証券会社のサイトで、「外貨
取引のコスト」という意味で使われていました。
例えば次のように・・・。

 『米ドル/円の取引を行った場合1ドルにつき、わずか1銭の
  取引コスト!!』

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[グーグルの衝撃] 取引コストとは市場を利用するためのコスト
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したがって、コースが提唱した「取引コスト」を知らない人も多いと
思います。実は私も、つい数ヶ月前に知りました。

コースの「取引コスト」の詳細については、下記URLを参照してください。
http://www.stanford-jc.or.jp/research/news-event/imai/imai030203.html

日本経済新聞で2003年2月2日から2月12日にかけて連載された「やさしい
経済学-巨匠に学ぶ『コース』」(今井賢一氏筆)というコラムが転載
されています。


製品やサービスを提供するためには、原材料費、人件費、輸送費、
資本費といった様々なコストがかかります。
今までの経済学では、これらのコストの分析ばかりしてきました。
しかし、市場での価格メカニズムを利用するためには、実は他にも
様々なコストがかかります。
「諸価格がいくらであるかが発見されねばない。交渉が行われねば
ならず、契約が書き下ろされ、検査が行われ、紛争を処理するための
取り決めが設定されねばならない」(コース)

この「市場での価格メカニズムを利用するためにかかる様々なコスト」
を「取引コスト」と呼びます。

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[グーグルの衝撃] ソフトウェア請負契約の取引コスト
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これだけ聞いても、「取引コスト」がいかに重要な概念であるか
理解できないと思います。

「取引コスト」が企業、組織、雇用などの複雑な問題を見通すために
いかに強力であるかを示すために、「取引コスト」の観点から、
ソフトウェアの請負開発について考えてみましょう
ソフトウェア会社にとって身近な問題なので、分かりやすいと思います。

請負契約では、ビル建設でもソフトウェア開発でも、納品物の価格は
市場での価格メカニズムで決まります。
ごく小規模なシステム、大手SIやメーカにぶら下がっている下請け
会社への発注の場合を除き、請負契約には「入札」や「相見積もり」
という手順が発生します。
発注側が要件を提示し、複数の請負会社が見積もりを提出します。
発注側はその中から、価格・納期・品質の観点で最も優れた業者を
選択します。

請負業者間で競争が発生するので、発注側から見ると、外注コストを
削減できます。

しかし、請負契約とは、実は取引コストが非常に高い契約形態なのです。
要件の確定、見積もりの妥当性の検討、詳細な契約書の作成、発注後の
進捗管理、納品後の検収テストといった様々な取引コストが発生します。
仕様変更が発生した場合の追加契約では、さらに同じループが何度も
発生します。
そして、失敗した場合のリスクも引き受けなければなりません。

請負開発がしばしば失敗するのは米国も日本も同じです。

参考記事:
 第63号「途中放棄の米国、品質低下の日本」
  http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/02/post_61ce.html
  http://www.kei-it.com/sailing/63-050221.html

 第73号「ファウラー氏の請負契約観」
  http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/05/post_deaf.html
  http://www.kei-it.com/sailing/73-050502.html

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[グーグルの衝撃] 内製する米国、外注する日本
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請負契約による外注の対極が、自社情報システム部門による内製です。
社員を使って作れば取引コストはゼロになります。
しかし、別のコストが発生します。長期的な人件費です。

したがって、社内で作るかどうかは、「社員を雇うことにより発生
する長期的な人件費」と「外注費+取引コスト」のどちらのコストが
高いかという問題です。

以前、マイクロソフトのPOS関係の営業マンから、次のような話を
聞いたことがあります。
「日本ではイトーヨーカドーやセブンイレブンなどの巨大な店舗
システムは、NECなどのベンダーに一括請負契約で発注される方が
一般的ですが、米国の流通業では社内で開発される方が一般的です。
したがって、社内の情報システム部の要員数は、日本より米国の方が
多いのです。」


社内の情報システム部の要員数が、日本より米国の方が多いことが
事実だとしたら、それには下記の理由が考えられます。
・日本の場合、終身雇用制がまだ生きていて、長期雇用によるコスト
 の方が取引コストよりも大きい。
・日本では、請負契約といえども、純粋な市場メカニズムで決まって
 いるわけではなく、長期的・系列的な取引で決まっており、それが
 取引コストを押し下げている。
・日本では、受注会社が頑張って大赤字になってでもやってしまうので、
 それが取引コストを押し下げている。

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[グーグルの衝撃] 労働者派遣契約・準委任契約と取引コスト
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自社での内製と請負開発による外注の中間形態として、労働者派遣や
準委任契約という形態があります。
労働者派遣の場合、発注側には長期雇用によるコストも、請負契約の
ような取引コストもかかりません。
但し、労務管理コスト、指揮命令コストは発生します。

特定派遣の場合は長期雇用によるコストを派遣会社側が負担しますが、
一般派遣の場合は派遣会社側も負担しません。

準委任契約は請負契約の一種ですが、納品物ではなくサービスに
着目した契約形態です。
労働者派遣では労務管理コスト、指揮命令コストは発注側が負担
しますが、準委任契約の場合は労務管理コスト、指揮命令コストは
受注側が負担します。

労働者派遣契約と準委任契約については下記を参照してください。

第52号「人材派遣業は指揮命令権のレンタル業」
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/12/post_8e31.html
http://www.kei-it.com/sailing/52-041206.html

第54号「準委任と人材派遣を分かつもの」
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/12/post_75f8.html
http://www.kei-it.com/sailing/54-041220.html


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[グーグルの衝撃] インターネットは取引コストを下げる
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取引コストという概念は、今後の組織、企業のあり方を考える上で
極めて重要です。

> 社外の企業との取引コストが上昇すれば、企業の規模は大きく
> なりがちだ。逆に、取引コストが低下すれば、企業の規模が
> 小さくなる。
> (ニコラス・G・カー著「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」)


そして、インターネットは取引コストを下げると言われています。

面白いところは、IT革命論派とアンチIT革命論派とでは、
「インターネットが取引コストを下げる」という点では一致して
いながら、それぞれが描く未来の組織像が正反対であると言う点です。

この点について次号以降で解説します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制


次号は、9月25日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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September 11, 2006

デ・ファクト・スタンダード

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第144号 2006/9/11
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ネットの「こちら側」と「あちら側」
▼ [グーグルの衝撃] マイクロソフトの圧倒的な強さの理由
▼ [グーグルの衝撃] デ・ファクト・スタンダード
▼ [グーグルの衝撃] グーグルが標準になるということ
▼ [グーグルの衝撃] 猛烈な価格破壊が始まる(?)
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

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[グーグルの衝撃] ネットの「こちら側」と「あちら側」
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梅田望夫氏は「ウェブ進化論」で、ネットの「こちら側」と
「あちら側」を次のように説明しています。


> ネットの「こちら側」とは、インターネットの利用者、つまり
> 私たち一人一人に密着したフィジカルな世界である。

> 一方、ネットの「あちら側」とは、インターネット空間に浮かぶ
> 巨大な情報発電所とも言うべきバーチャルな世界である。
> いったんその巨大設備たる情報発電所に付加価値創造のシステムを
> 作りこめば、ネットを介して、均質なサービスをグローバルに提供
> できる。


そして、IT産業の重心がネットの「こちら側」から「あちら側」に
移行することによって、グーグルがマイクロソフトに代わって、
IT業界の盟主になるというのが、「ウェブ進化論」で提示されている
近未来像です。

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[グーグルの衝撃] マイクロソフトの圧倒的な強さの理由
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ここで、マイクロソフトが圧倒的な強さを持てた理由について復習
しておきましょう。

インテルは最近AMDの激しい追い上げを受けて、業績に陰りが出て
きています。
SUNはここ数年業績が低迷しています。

しかし、マイクロソフトだけは、嫌われたり、けなされたりしながらも、
毎年増収増益を続けています。

本メルマガの第124号、第125号、第132号で、私は、
「マイクロソフトの大成功の理由を、ビル・ゲイツの天才にのみ求める
のは間違えている。マイクロソフトが売れる製品を出し続けることが
できたのは、マイクロソフト独特の『プログラムマネージャ』という
制度がうまく機能したからだ」ということを述べました。

・第124号 マイクロソフトの「ブルックスの法則」対策
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/04/post_3020.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/124-060424.html

・第125号 マイクロソフトのプログラムマネージャ
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/05/post_a4c0.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/125-060501.html

・132号 オープンでもクローズドでも良い製品を生み出す環境は似ている
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/06/post_8949.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/132-060619.html


しかし、もちろん「プログラムマネージャ」だけではマイクロソフトの
圧倒的な強さは説明できません。

周知のとおり、マイクロソフトの力の源泉は、OSとオフィス製品で
デ・ファクト・スタンダードの地位を獲得したことです。

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[グーグルの衝撃] デ・ファクト・スタンダード
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岩井克人氏は「会社はこれからどうなるのか」で、「情報を流通させる
ための媒体」と「デ・ファクト・スタンダード」について次のように
解説しています。

> 情報の商品価値とは、その差異性です。
> いくら有用な情報であっても、それが多くのヒトによって共有されて
> しまえば、経済的な意味での価値を失います。
> だが、情報そのものではなく、その情報を流通させるための媒体に
> かんしては、これとはまったく逆の原理がはたらくのです。
> それは「デ・ファクト・スタンダード」の原理です。
> デ・ファクト・スタンダードとは、直訳すれば「事実上(DE FACTO)
> の標準(STANDARD)」ということです。
> それは、あるモノが標準として使われているのは、それが標準として
> 使われているという事実以外には何の理由もないという意味です。
> すなわち、あるモノがデ・ファクト・スタンダードであるというのは、
> それが他のモノより優れているから多くのヒトに使われるのでは
> なくて、それがたんに多くのヒトに使われているから多くのヒトに
> 使われているにすぎないということであるのです。
> まさに、「自己循環論法」にほかならないのです。


インターネットの検索サービスも「情報を流通させるための媒体」
です。

私はグーグルの動きには、デ・ファクト・スタンダードの地位を獲得
するために米国企業が持つ凄まじいまでの執念を感じます。
マイクロソフトと同じDNAを感じます。

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[グーグルの衝撃] グーグルが標準になるということ
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グーグルは検索エンジンとして非常によくできていたから、多くの
人がグーグルを使うようになりました。

日本語でも「ググる」と言いますが、英語でも'google'は動詞として
使われています。

しかし、そのうち、「多くのヒトに使われているから多くのヒトに
使われている」という状況になります。

そこで起きることは次のようなことです。

> サービス提供者が「個」に対して「あちら側」での利便性を提供する。
> 「個」がその利便性を享受するために、色々な情報を「あちら側で
> オープン」にしていく。「個」が「あちら側でオープン」にした情報
> をサービス提供者が集積し「全体」としての新たな価値を創出する。
> これが、Web2.0時代のサービスの構造である。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


かつてPCの世界で、Windowsがデ・ファクト・スタンダードとなった時、
世界中のソフトウェア会社がWindows上で動く様々なソフトウェアを
開発し、それがさらにWindowsのデ・ファクト・スタンダードを強固な
ものにしました。

それと似たことが、グーグルでも起こります。

世界中の利用者の情報がグーグルに集積される。
→グーグルはその膨大な情報を利用して新しいサービスを提供する。
→さらに新たに莫大な情報が集積される。
という循環が始まるのです。

ネットでデ・ファクト・スタンダードの地位を獲得したグーグルは、
かつてのIBM、マイクロソフト以上の巨人になるでしょう。

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[グーグルの衝撃] 猛烈な価格破壊が起きる(?)
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では、今後ソフトウェア会社はどうなるのでしょうか?

> ネットの「あちら側」では、ありとあらゆるリソースが自在に融合
> され始めている。それがWeb2.0の核心だ。
> 「はてなマップ」の開発に1週間しかかからないのだとすれば、
> いずれ「あちら側」のサービスのコスト構造は、「こちら側」の
> システムのコスト構造の何万分の一になってしまう。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


そして、次の10年間でシステム開発において猛烈な価格破壊が
起きるというのが、梅田望夫氏の予測です。

> それだけのコスト差が出れば、徐々に経済合理性が働き、少しずつ
> 大企業の情報システムも「あちら側」「開放性」といったキーワード
> で動き始める時がやってくる。
> チープ革命とWeb2.0が手に手を取り合って進展することで訪れる
> その時に、IT産業は再び大激震に見舞われる。
> それが「次の10年」の間に必ず起こるはずだ。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


しかし、私の意見は違います。

次号以降では、この点について解説します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・取引コスト
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、9月18日発行予定です。

乞うご期待!!

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September 04, 2006

ロングテール

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第143号 2006/9/04
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ロングテールとは
▼ [グーグルの衝撃] ロングテール現象は標準化が前提
▼ [グーグルの衝撃] ニッチな規格品を安く売る人が恩恵を受ける
▼ [グーグルの衝撃] グーグルのアドセンス
▼ [グーグルの衝撃] 無に近いものの提供者とそれを集積するグーグル
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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[グーグルの衝撃] ロングテールとは
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今週号では、ロングテールについてお話します。

ロングテールは、WEB2.0の話をするときに必ず出てくるキーワードで、
一般的には次のように説明されます。

> インターネットを利用したネット販売などにおいては、膨大な
> アイテム(商品)を低コストで取り扱うことができるために、ヒット
> 商品の大量販売に依存することなく、ニッチ商品の多品種少量販売に
> よって大きな売り上げ、利益を得ることができるという経済理論。
>
>  ( http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/longtail.html )

ロングテールが、「インターネットの本質に関わる極めて重要な問題
提起を含んでいる」(梅田望夫氏)ということは事実でしょう。

しかし、ロングテール現象を正しく理解するためには、まずインター
ネットの基本的性格を理解する必要があります。
ロングテール現象とは、インターネットの基本的性格の上で起きている
現象ですから。

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[グーグルの衝撃] ロングテール現象は標準化が前提
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ロングテール現象を「規格外の製品、非標準の製品がインターネット
で売れるようになった」と理解しているとしたら、それは誤りです。

ロングテール現象の大前提として標準化、規格化があるのです。

> インターネット企業初の最大店舗は書籍の販売店だった。
> 書籍は最も古くから大量生産されている日常的製品だ。
> 見事に標準化され、ある版の書籍は次に出る版のそれとほとんど
> 変わらない姿をしている。
>
> (ブラウン, ドゥグッド著「なぜITは社会を変えないのか」より)


アマゾンが成功したのは、書籍がもともと「見事に標準化された」
製品だったからです。
標準と規格に対する信頼があるからこそ、デルもインターネット上で
受注生産ができるのです。

規格化されていないものはたとえアマゾンと言えども、売りづらい
のです。
規格化されていないものの品質をアマゾンが保証しなければならない
からです。

例えば、同じ本でも古本には「本の汚れ」「希少性」といった規格化
されていない要素が入りこみます。
したがって、新刊書にはない難しさが出てきます。

> アマゾンは最低価格の書籍を薦めるという保証のもとに絶版書の
> 検索をするボット(注)を提供しているのだが、このサービスを
> 利用した人は市場の最低価格でない本をよく薦められるという苦言を
> 呈している。
> (ブラウン, ドゥグッド著「なぜITは社会を変えないのか」より)
(注)ボット:人工知能エージェント


ロングテール現象とは、より正確に言うと、

「標準化が進んだ世界のネット販売では、ヒット商品の大量販売に
依存することなく、『ニッチな規格品』の多品種少量販売によって
大きな売り上げ、利益を得ることができる」

ということなのです。

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[グーグルの衝撃] ニッチな規格品を安く売る人が恩恵を受ける
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もう一つ理解しておかなければならないことは、インターネットでは
低価格が決定的な購買動機になるということです。

インターネットは規格品の価格の比較は得意です。
しかし、サービス(例:店員の態度、料理人の腕前)や品質(例:
本の中身、靴の履き心地)の比較は苦手です。
そこには主観的な要素が入ってくるからです。

低価格ではなく、気のきいたサービスや高い品質を売りにしている
サービスや製品は、もともとネット販売には向いていません。
これはロングテールに対しても作用するインターネットの本質的な
性格です。

したがって『ニッチな規格品を低価格で提供している人』が、最も
ロングテール現象の恩恵を受けることになります。
(本当に最も恩恵を受けるのは、プラットフォームを提供している
アマゾンやグーグルなどでしょうが・・・。)

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[グーグルの衝撃] グーグルのアドセンス
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「ロングテール現象は標準化が前提」と書くと、次のように反論
されるかもしれません。

「本を売っているアマゾンではそうかもしれないが、グーグルの
アドセンスは違う。アドセンスは標準や規格に関係なくどんな製品
でもバーチャル市場に出せる。」

アドセンスについては私には梅田望夫著「ウェブ進化論」で得た
知識しかありません。

「無数のウェブサイトの内容を自動識別し、それぞれの内容にマッチ
した広告を自動掲載する登録制無料サービス」だそうです。
自動マッチングされたアフェリエイトのようなものでしょうか。

しかし、それを利用して普通の人がどれだけ稼げるというのでしょうか?
少ししか稼げないということは、梅田望夫氏も認めています。

> 月に10万円稼ぐにはテーマ性の高い人気サイトを作らなければ
> ならないからたいへんだが、月数万円規模ならば少々の努力で、
> 月数千円規模ならばかなりの確率でたどりつく。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)

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[グーグルの衝撃] 無に近いものの提供者とそれを集積するグーグル
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梅田望夫氏はアドセンスで少ししか稼げないことをむしろ肯定的に
考えています。
彼が言わんとしていることは次のようなことです。

「個人にとっては月数千円でもありがたいはずです。
グーグルは全世界の人々に小遣い稼ぎをさせてやって、そこから
ほんの少し徴収します。
全世界から広く浅く徴収するので、グーグルは莫大な利益を得る
ことができます。」


> わずかな金やわずかな時間の断片といった無に近いものを、無限大に
> 限りなく近い対象から、ゼロに限りなく近いコストで集積できたら何
> が起こるのか。ここに、インターネットの可能性の本質がある
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


そこは、「わずかな金やわずかな時間の断片といった無に近いもの」を
ほんの少しの報酬で提供する大衆と、それを集積して莫大な利益を生み
出すグーグルの世界です。

その世界で、中小ソフトウェア会社はどのようにして生きていったら
よいのでしょうか?

第141号で「その世界で利益を上げていくためには、他の会社が容易に
模倣できない独自の差異性を創造し維持し拡大していくしかありません」
と書きました。

第141号:
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/08/post_a37c.html
または、http://www.kei-it.com/sailing/141-060821.html


次号以降では、この点についてもう少し具体的に考察します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・取引コスト
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、9月11日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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August 28, 2006

グーグルの検索やアマゾンの推薦は中立か?

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第142号 2006/8/28
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] オプティミズムに支えられたビジョン
▼ [グーグルの衝撃] 「ウェブ進化論」だけ読んだら誤解する
▼ [グーグルの衝撃] 電子メールに広告を忍ばせる
▼ [グーグルの衝撃] 実は金を出した出版社の利益を守っていた
▼ [グーグルの衝撃] グーグル八分
▼ [グーグルの衝撃] 誰が本当にコントロールしているのか
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
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[グーグルの衝撃] オプティミズムに支えられたビジョン
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> シリコンバレーにあって日本にないもの。それは、若い世代の創造性
> や果敢な行動を刺激する「オプティミズムに支えられたビジョン」
> である。
>
>          (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


「ウェブ進化論」は、日本もシリコンバレーのように「オプティミズム
に支えられたビジョン」を持って欲しいという、梅田望夫氏の願いが
込められている本です。

したがって、IT革命に懐疑的な議論(注)はあえて無視して、グーグル
やアマゾンの輝かしい部分のみが書かれています。

暗い面は書かず、肯定的な面のみを描いたことによって、「ウェブ
進化論」は、分かりやすく、読みやすい本となっています。


(注)IT革命に懐疑的な議論の例:
 ・なぜITは社会を変えないのか
  (ジョン・シーリー ブラウン, ポール ドゥグッド著)
 ・ITにお金を使うのは、もうおやめなさい
  (ニコラス・G・カー著)
 ・日本経済「暗黙」の共謀者
  (森永卓郎著)

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[グーグルの衝撃] 「ウェブ進化論」だけ読んだら誤解する
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上記(注)で示したような本を読んで理解した人が「ウェブ進化論」を
読んだ場合、単に「シリコンバレーの最新情報」として読むでしょう。
あるいは、IT革命に懐疑的な本と「ウェブ進化論」での主張とを比較
しながら、バランスの取れた読み方をするでしょう。

しかし、IT革命論に批判的な議論を聞いたことがない人が「ウェブ
進化論」だけを読んだら、誤解する点も多いと思います。
なにしろグーグルやアマゾンの輝かしい面しか書かれていないの
ですから・・・。


例えば、彼らは次のように考えるでしょう。

「グーグルの検索もアマゾンの推薦(リコメンデーション)も、
中立で公平で清潔で、我々の味方である。」

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[グーグルの衝撃] 電子メールに広告を忍ばせる
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「ウェブ進化論」ではグーグルもアマゾンも(特にグーグルは)、
テクノロジー志向の会社として描かれています。

そして、テクノロジー志向が強く人間の介在を嫌う会社だからこそ
中立で公平で清潔なサービスを提供できるのだという書き方がされて
います。

例えば、グーグルは「個々人の電子メールの内容を自動的に判断し、
最適な広告へのリンクを電子メールに忍ばせる」というビジネスを
構想しているそうです。
これについて、梅田望夫氏は、「グーグルがやれば人間が介在
しないからプライバシー侵害の危険はない」というグーグルの
考え方を代弁しています。

> 「迷惑メールの除去やウィルスの駆除のために、電子メールの
> 内容をその判断材料に使うのは現代の常識です。これまで
> それを誰も問題にしなかったでしょう。電子メールへの広告挿入
> にも同じような技術を使います。作業は全部コンピュータが
> 自動的にやるんです。そのプロセスに人間は関与させません。
> 悪いことをするのは人間でコンピュータではありません。
> 人間はこのプロセスから遠ざけます。このルールはがっちり守ります。
> だからプライバシー侵害の危険はないのです」
> こんな全く独特の思考回路で、個人の電子メールというプライベート
> 空間までを広告事業の対象にできないかと、グーグルは発想するの
> である。
>             (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)

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[グーグルの衝撃] 実は金を出した出版社の利益を守っていた
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しかし、グーグルの検索やアマゾンの推薦は本当に中立なのでしょうか?

例えば、アマゾンは過去に書評記事を広告として売買していたことが
あります。

(1)
> 2月8日『ニューヨーク・タイムズ』の記事は,新たなる不信感と幻滅の
> 始まりとなったかもしれない。書評記事が広告として売買されていた
> のである。
> アマゾン・パッケージという書籍広告の仕組みでは,出版社は最大
> 12500ドルを支払うと,分野別に紹介したトップページにタイトルを
> 載せることができる。

( http://www.tdupress.jp/network/network_606.html )

(2)
> オンライン小売り大手のAmazon社は、顧客向けの電子メールで書籍を
> 推薦する代わりに、その料金を出版社に負担させるという計画を始め
> ようとしている。Amazon社はこれを出版社に提供するサービスとして
> 位置づけており、これにより出版社は書籍をAmazon社のWWWサイトで
> より目立つように掲載することが可能となる。

( http://bizns.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/search/wcs-bun.cgi?ID=122953&FORM=biztechnews )


両方とも古い記事です。((1)は1999年、(2)は2001年)

今はどうなっているかは分かりません。

当たり前のこととしてやられているのか、分からないようにやって
いるのか、「これは広告です」と明示してやっているのか、それとも
批判を受けたので止めたのか・・・。


もしも今でもやっているなら、アマゾンの推薦は、消費者の便宜を
図っているかのように見せて実は金を出した出版社の利益を守って
いるということです。

今やっていないとしても、批判を受けなければ続けていたでしょう。
あるいは将来、多少批判されても広告収入の方が重要だとアマゾンの
経営者が判断すれば、再開するでしょう。

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[グーグルの衝撃] グーグル八分
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グーグル八分とは、グーグルが特定のウェブサイトをグーグルの
検索用インデックスから削除し、グーグルの検索で表示されなく
することです。

グーグルがウェブサイトをグーグル八分にする基準は公開されて
いません。

ある日突然検索しても出てこなくなり、初めてグーグル八分にされた
ことが分かるのです。

通常グーグル八分は検索する国の法律に従って行われますが、その
国の法律に反するか否かはグーグルが判断します。
また、米国内の法律によって違法と判断されたサイトは全世界で
表示されません。
さらに、中国のグーグルでは、同国政府側からの要請により、
同政府に反する記事を検索しても一切表示されません。

ウェブサイトの来訪者は、通常、検索エンジン経由でたどり着きます。
したがって、検索エンジンで表示されないということは、事実上
インターネット上で存在しないということに近くなります。

この「抹殺」が、グーグルという一米国企業の判断に委ねられて
いるのです。
そして背後には米国人の世界観・倫理観があり、(米国法に準拠する
という意味で)米国政府の意図も入ってきます。
さらに、グーグルは中国政府から圧力を受ければ中国政府の便宜まで
図ってしまうのです。

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[グーグルの衝撃] 誰が本当にコントロールしているのか
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上記「電子メールに広告を忍ばせる」の節で、「ウェブ進化論」の
下記の言葉を引用しました。

> 悪いことをするのは人間でコンピュータではありません。
> 人間はこのプロセスから遠ざけます。このルールはがっちり守ります。


しかし、アマゾンの推薦もグーグルの検索も、コントロールしている
のは、コンピュータだけではありません。
陰でコントロールしているのは、グーグルやアマゾンのごく少数の
経営者であり(彼らが独善的判断を下さない保証はありません)、
スポンサー企業であり、米国政府であり、さらに中国政府も関与して
いるのです。


> われわれは誰でもエージェントを利用できるかもしれないが、そのうち
> どれだけの人間が、自分の嗜好の組み合わせを積極的に導き出すための
> 複雑な計算処理に組み込まれているバイアス(偏り)を理解できる
> だろうか。
> 自分のエージェントは中立なのか、バイアスがかけられているのか、
> あるいは単に操作が偏っているだけなのかといったことを確認する必要
> がある。
> 誰がそのエージェントを本当にコントロールしているのか、それは自分
> なのか、設計者それとも情報提供者なのか。
>
>          (「なぜITは社会を変えないのか」より)

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ロングテール論の誤解
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、9月4日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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August 21, 2006

ウェブサービスの世界

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第141号 2006/8/21
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ネットは本質的にビジネスに向いていない(?)
▼ [グーグルの衝撃] ブライアン・アーサーの技術革命史観
▼ [グーグルの衝撃] I(情報)インフラの構築で革命的変化が起きる
▼ [グーグルの衝撃] そこは大多数の人々は、儲からない世界
▼ [グーグルの衝撃] 「あちら側」は帝国主義の世界
▼ [グーグルの衝撃] 容易に模倣できない独自の差異性を
▼ 次回以降の予告
▼ メールマガジン「Don't think. Just feel.」の紹介


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
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[グーグルの衝撃] ネットは本質的にビジネスに向いていない(?)
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第138号で紹介したとおり、森永卓郎氏はIT革命論を「単なる幻想」
さらには「暗黙の共謀者による詐欺」だったとさえ言っています。

 第138号「IT革命論は、ほとんど詐欺に近いものだった」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/1990it_4944.html
 http://www.kei-it.com/sailing/138-060731.html
 

森永卓郎氏に言わせれば、インターネットは本質的にビジネスに向い
ていないのです。

> インターネットは情報を瞬時に世界中に広げるシステムだから、
> 経済学の教科書に書いてある完全競争の世界に近いことがそのなか
> では起こることになる。
> そして完全競争の世界とは利益がゼロになる世界だということは、
> すでに教科書のなかに書いてあるのである。
>
>      (森永卓郎著「日本経済「暗黙」の共謀者」より)

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[グーグルの衝撃] ブライアン・アーサーの技術革命史観
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一方、梅田望夫氏は「ウェブ進化論」で徹底したIT革命論を展開して
います。

そしてその背後にはブライアン・アーサーの技術革命史観があります。

「ウェブ進化論」によれば、ブライアン・アーサーの技術革命史観は
次のようなものです。

 ○人類は過去に次の4つの革命を経験している。
  ・産業革命(1780年~1830年) 発祥地:英国
  ・鉄道革命(1830年~1880年) 発祥地:英国
  ・重工業分野での革命(19世紀後半)  発祥地:ドイツ
  ・製造業革命(1913年~1970年) 発祥地:米国

 ○1960年代から米国を発祥地として情報革命が始まり、現在も
  続いている。

そして、ブライアン・アーサーは、次のように予言しています。
 ・21世紀の最初の20~30年間に経済に深い変質が起こる。
  (これが「大規模な構築ステージ」)
 ・我々が想像したこともなかったような完全に新しい産業が
  勃興する。
 ・長期的にみれば、これは産業革命よりももっと深く、もっと
  重要な転換である。


「ウェブ進化論」に「目先のことではなく、20~30年間続く革命の
話をしているんだ」という壮大さを与えているものは、このブライ
アン・アーサーの理論です。


私はブライアン・アーサーの著作は読んでいないので、深くは
論じられません。
ここでは、ブライアン・アーサーの理論には、批判的な意見もある
ことのみ指摘しておきましょう。

> 1990年代の後半、ナスダックの株価が青天井に上昇していた頃、
> 「ニューエコノミー」という言葉が流行った。複雑系の経済学の
> パイオニア、ブライアン・アーサーによれば、オールドエコノミーが
> 収穫逓減の法則に基づいていたのに対して、ニューエコノミーは、
> 収穫逓増の法則に基づいているので、無制約的な成長が可能という
> ことになる。このバブルを煽った理論は、どこが間違っていたのか。
>
> ( http://www.nagaitosiya.com/a/new_economy.html )

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[グーグルの衝撃] I(情報)インフラの構築で革命的変化が起きる
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梅田望夫氏は、ブライアン・アーサーの言う「大規模な構築ステージ」
とは「 I(情報)インフラの構築によって、情報そのものに関する革命的
変化が起きることだ」と説きます。


> アーサーが言う10年・20年単位での「大規模な構築ステージ」を、
> 90年代には誰もが「情報スーパーハイウェイ」つまり「物理的な
> ITインフラ」の構築なのだと考えていた。
> しかし実際に21世紀に入ってみて明らかになったのは、「大規模な
> 構築ステージ」で作られるのは、実はITインフラではなく、 I(情報)
> インフラで、それによって「情報そのものに関する革命的変化」が
> 起ころうとしているということである。
> Iインフラの本質は、インターネットの「あちら側」に作られる情
> 報発電所ともいうべき設備だったのだ。
>
>           (梅田望夫氏「ウェブ進化論」より)

インターネットの「あちら側」で、I(情報)インフラが作られて、
それが社会に大きな影響を与えていくという見方には、私も賛同
します。

また、Iインフラ側からウェブサービスのAPIが提供されることに
よって、「ネット・サービスのかなりのところまでを、一人または
数人のチームでどんどん作っていくことができるようになった」
( 梅田望夫氏のブログhttp://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050309/p1
より)ということも事実でしょう。


しかし、本メルマガでは、ウェブ進化論に書かれていないことを
指摘します。

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[グーグルの衝撃] そこは大多数の人々は、儲からない世界
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Iインフラ側からウェブサービスAPIが提供されて、システム構築が
容易になる世界、一人または数人のチームでどんどん作っていくこと
ができるようになる世界とは、どのような世界でしょうか?


たとえば、第140号で取り上げたアマゾン・ウェブサービスやecosecの
世界とは、商品情報も物流・決済システムも標準化された世界です。

 第140号「アマゾン・ウェブサービスとecosec」:
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/08/ecosec_dcc3.html
 http://www.kei-it.com/sailing/140-060814.html 

アマゾン・ウェブサービスやecosecの加盟店の全員が同じ土俵に上がって、
アマゾンやドンキホーテの商品を売るための独自サービス開発競争を
させられる世界なのです。

確かに、そこでは規模は必要ありません。
これは金のない起業家にとっては朗報でしょう。

しかし、そこは大多数の人々は、儲からない世界です。

私は「2010年のシステム開発 第3章(試読版)」
( http://www.kei-it.com/sailing/pdf/2010-shidoku-2.pdf )で、
「『素材では差別化を否定しながら、結果は差別化しなければならない』
という根本的な難しさがオープンシステムには存在する」と述べました。

そのオープンシステムの厳しさが極限にまで追求されるのが、
ウェブサービスの世界なのです。

冒頭に紹介した森永卓郎説「インターネットは完全競争だから
本質的にビジネスに向いていない」の世界です。
現在アフェリエイトで普通の人々が儲けられる金額は、どんなに
頑張ってもせいぜい月に数万円程度だということを考えれば、普通の
人がアマズレットをやっても儲けはたかが知れていることは明らかです。

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[グーグルの衝撃] 「あちら側」は帝国主義の世界
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一方、Iインフラ提供側(梅田望夫氏の言う「あちら側」)から見ると
どうでしょうか?

ウェブサービスの世界は、その土俵に上がる人々が成功しようが失敗
しようが、確実にマージンを徴収できる世界です。
アマゾン・ウェブサービスでは売り上げの15%が徴収されます。
その利益率はアマゾン本体よりも高いそうです。

しかし、彼らもけっして楽ではありません。
「あちら側」は徹底して規模の経済が支配する世界だからです。

規模を求めて、熾烈な覇権競争が繰り広げられる帝国主義的な世界
なのです。

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[グーグルの衝撃] 容易に模倣できない独自の差異性を
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再び、ウェブサービスの利用者の立場に戻ってみましょう。

標準化された世界でも優れたアイデアを持つ参加者なら、儲けられる
可能性はあります。
しかし、長期的に利益を生むことは容易ではありません。
アイデアはすぐにマネされてしまうからです。

 関連記事:第85号「成功確率が低く、成功しても寿命が短い」
 http://www.kei-it.com/sailing/85-050725.html 
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/07/post_b7f3.html


その世界で利益を上げていくためには、他の会社が容易に模倣できない
独自の差異性を創造し維持し拡大していくしかありません。

それ故に、私は慶の経営理念は下記のとおりであるべきだと述べて
いるのです。

「市場を驚かす差異性をもった製品及びサービスを効率的かつ
迅速的に提供し続けること。
そのために、個々の事業部は自らのコア・コンピタンス
(中核的競争能力)を特定化し、そこに人的資産を集中的に
投入すること。」

 関連記事:経営理念
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/07/post_54a6.html
 http://www.kei-it.com/sailing/137-060724.html

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・グーグルの「検索」やアマゾン「推薦」は中立ではない。
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、8月28日発行予定です。

乞うご期待!!


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August 14, 2006

アマゾン・ウェブサービスとecosec

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第140号 2006/8/14
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] アマゾンのWeb2.0化
▼ [グーグルの衝撃] ecosec(エコセック)
▼ [グーグルの衝撃] なぜアマズレットは日本で普及しないのか?
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「グーグルの衝撃」をクリックして
ください。

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[グーグルの衝撃] アマゾンのWeb2.0化
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梅田望夫氏は「ウェブ進化論」で、Web2.0の代表例としてアマゾン・
ウェブサービスを挙げています。

アマゾン・ウェブサービスはアマゾンが取り扱っている厖大な商品
データを自由に利用できるウェブサービスです。

小売り業者やネット事業を始めてみたい開発者たちは、このウェブ
サービスを利用してアマゾンの商品データベースにアクセスし、自ら
のサイトでアマゾンの商品を自由に売ることができます。
また、アマゾンの物流システムや決済システムも自由に利用できます。

そのようにしてできたショピング・サイトをアマズレット(amazlet)
と呼びます。

アマゾンはアマズレットから売り上げの15%を手数料として徴収します。


> 自社の生命線たる商品データベースを公開することで、アマゾンは
> ネット小売り業者から、eコマースのプラットフォーム企業へ、
> テクノロジー企業へと変貌を遂げたのである。
> これがアマゾンの Web2.0 化である。
>           (梅田望夫氏「ウェブ進化論」より)

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[グーグルの衝撃] ecosec(エコセック)
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日本にはアマゾン・ウェブサービスに似たサービスは存在しないの
でしょうか?

たとえば楽天では、販売店が独自に商品を仕入れ、在庫を抱え、
商品の発送をし、代金の回収もしなければなりません。

商品情報から物流・決済までアマゾンに依存し、自らはユーザ向け
サービスの開発に専念できるアマズレットとは根本的に違います。

日本でアマゾン・ウェブサービスに似ているものを強いて挙げると
すれば、ecosec(エコセック)でしょう。
ecosecはドンキホーテの子会社であるドンキコムが提供している
ショッピングモールです。
( http://www.ecosec.jp/ 参照)

ecosecは、加盟店にドンキホーテが取り扱っている膨大な種類の
商品を安価で提供しています。
また、物流システム、決済システムも提供しています。

ドンキホーテがecosecに提供している商品数は数万点にものぼり、
その多様性はアマゾンよりも上かもしれません。

しかし、ecosecは今年2月に加盟店の一般募集を開始したばかりで、
まだ実際の店舗を見ることはできませんし、実態はよく分かりません。

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[グーグルの衝撃] なぜアマズレットは日本で普及しないのか?
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梅田望夫著「ウェブ進化論」では、「日本でもアマズレットのような
サイトを自由に誰もが作ることができる」と書かれていますが、
ほとんど普及していません。

これは何故でしょうか?

私は、アマゾン・ウェブサービスもecosecも利用したことがないので、
以下は憶測です。

アマゾン・ウェブサービスはプログラミング指向が強く、プログラマに
とっては強力なツールを提供する反面、素人には敷居が高いのではない
でしょうか?

一方、ecosecは、楽天に対抗するために素人でもできる「らくらく設定」
指向で行くでしょうから、普及するかもしれません。

もっとも、あまりにも「らくらく設定」にしてしまうと、ウェブサービス
が本来持つ柔軟性、創造性を排除することになり、単なるASPサービス、
あるいはアフェリエイトに近づいてしまうかもしれません。


さて、アマゾン・ウェブサービスやecosecが普及することによって、
経済、社会、そして、ソフトウェア会社やソフトウェア技術者が
どのように変わっていくのでしょうか?


結論を出す前に、もう少し考えてみましょう。

次回は、いよいよ「検索」について考えてみます。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:

・「検索」とは
・2000年のITバブル崩壊と日本のITベンチャー
・日本のITベンチャーとマネーゲーム
・2000年までのIT革命で社会が変わらなかった理由。

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

技術系:
・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

財務系
・資産と費用

経営系:
・壊れ窓の理論

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、8月21日発行予定です。

乞うご期待!!

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August 07, 2006

ITの発展が資本主義の変化をもたらしたのではない

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第139号 2006/8/07
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ITバブルはソフト会社にとっては別世界の話
▼ [グーグルの衝撃] ITベンチャーは異業種の新興企業
▼ [グーグルの衝撃] ITバブルの発生と崩壊
▼ [グーグルの衝撃] ITが資本主義を変化させたのではない
▼ [グーグルの衝撃] WEB2.0バブル(?)
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

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[グーグルの衝撃] ITバブルはソフト会社にとっては別世界の話
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第138号では、1990年代後半からITバブル崩壊までを概観しました。

第138号の前半の短納期化・低価格化の話は、ソフトウェア技術者や
ソフトウェア会社にとって、今現在でも進行している切実な問題です。

しかし、後半のITバブルの話は、ソフトウェア技術者やソフトウェア
会社経営者にとっては、いまひとつ実感が沸かない話だったのでは
ないでしょうか?

一般のソフトウェア技術者やソフトウェア会社にとって、1990年代
終盤から2000年にかけてのITバブルの発生と崩壊は、自分とは直接
関係のない別世界のできごとでした。

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[グーグルの衝撃] ITベンチャーは異業種の新興企業
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1999年から2000年にかけて株式公開した主なITベンチャーを10社
挙げてみました。

・グローバルメディアオンライン(旧インターキュー)
・光通信
・サイバー・ミュージックエンタテイメント
 (旧リキッドオーディオジャパン)
・インターネット総合研究所
・クレイフィッシュ
・サイバーエージェント
・ライブドア(旧オン・ザ・エッヂ)
・楽天
・サイボウズ
・まぐクリック

この中でソフトウェア会社と言えるのは、サイボウズだけです。
それ以外の会社は、IT関連とは言ってもソフトウェア会社ではあり
ません。

1990年代終盤に登場したITベンチャーは、一般のソフトウェア会社
にとっては、単なる異業種の新興企業だったのです。

ITベンチャーが構想したことも、実際に行った事業も、一般のソフト
ウェア会社の受託開発や業務請負のビジネスには全く影響を与えません
でした。
ITベンチャーが新たな顧客になったり、そのITベンチャーが倒産して
貸し倒れ損失が発生したりすること以外は・・・。

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[グーグルの衝撃] ITバブルの発生と崩壊
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ドットコム企業に対する過剰な期待と、「ITが社会を変える」という
IT革命論によって、ITバブルは発生し、そしてバブル故に崩壊しました。

米国では多くのIT関連ベンチャーは倒産に追い込まれ、2002年の米国の
IT関連失業者数は56万人に達しました。

日本でも上で例示したようなITベンチャーの大半が、業績、株価
ともに低迷していました。

しかし、このITバブルの発生と崩壊によって、日本のソフトウェア
技術者やソフトウェア会社が影響を受けることはありませんでした。

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[グーグルの衝撃] ITが資本主義を変化させたのではない
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それでは、IT革命とは何だったのでしょうか?

岩井克人氏は「会社はこれからどうなるのか」で「IT革命もグローバル
化も金融革命も、それぞれが独立した現象ではなく、まさにポスト
産業資本主義の三つの現れ方にすぎない」と説いています。

> つい最近までIT革命の「革命性」を熱っぽく説いていた論者の
> 多くは、一種の技術史観にとらわれているのです。
> かれらは、情報技術(IT)の進歩のあまりの急激さと広範さに目を
> 奪われてしまい、情報技術の進歩によって資本主義の変化が引き起
> こされていると考えています。
> だが、このような考え方は、原因と結果を取り違えているのです。
>  ・・・(中略)・・・
> 情報技術の発展が資本主義の変化をもたらしたのではないのです。
> 逆です。資本主義のポスト産業資本主義化が、情報技術の発展を
> うながしているのです。


私はこの見方は正しいと思います。

ポスト産業資本主義化の結果として発生している、標準化・短納期化・
低価格化の強烈な流れは、ソフトウェア技術者の仕事を根本的に変えて
しまいましたし、今でも変え続けています。

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[グーグルの衝撃] WEB2.0バブル(?)
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ところが、グーグルの登場によって、最近再びIT革命論が復活して
きました。

梅田望夫氏によれば、グーグルは「ITの進歩によってはじめて可能
となる新しい仕組みを是とし、人間の側こそがそれに適応していく
べき」という視点で世界を眺め、その視点で世界を作り直そうと
しているそうです。

しかも、(前回のITバブルと違い)ソフトウェア技術者の仕事も
ソフトウェア会社のあり方も大きく変えていくと主張しています。

これらの主張について、次号以降で考察します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:

・2000年のITバブル崩壊と日本のITベンチャー
・日本のITベンチャーとマネーゲーム
・2000年までのIT革命で社会が変わらなかった理由。
・梅田望夫氏が「ウェブ進化論」で「本当の大変化はこれから
 始まる」と言っている理由。
・日本でのeコマースのプラットフォーム企業の例

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

技術系:
・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

財務系
・資産と費用

経営系:
・壊れ窓の理論

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、8月14日発行予定です。

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