客先常駐の今後
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第208号 2008/8/11 『客先常駐の今後』
▼ まえがき:コンプライアンス問題と技術者余り
▼ [請負と派遣] (1)偽装請負問題の整理:社員のチーム常駐
▼ [請負と派遣] (2)偽装請負問題の整理:常駐作業の再委託
▼ [請負と派遣] (3)偽装請負問題の整理:社員の一人常駐
▼ [請負と派遣] (4)ブローカー的な会社は壊滅的打撃を受けている
▼ [請負と派遣] (5)仕事の減少に伴う技術者余り
▼ [請負と派遣] (6)ソフト会社が取るべき戦略
▼ [請負と派遣] (7)おまけ:偽装請負の極端な解釈
▼ [請負と派遣] (8)メルマガ紹介「ソフトハウスのための幸福経営論」
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まえがき:コンプライアンス問題と技術者余り
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蒲生嘉達(がもうよしさと)です。
多くのIT技術者が客先で常駐開発をしています。
本日は客先常駐の今後についてお話しします。
現在、次の2点が客先常駐開発の方向性に大きな影響を与えています。
(1)コンプライアンス問題
(2)仕事の減少に伴う技術者余り
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[請負と派遣] (1)偽装請負問題の整理:社員のチーム常駐
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コンプライアンス問題からお話しします。
コンプライアンス問題には、偽装請負、多重請負、機密情報保護、
個人情報保護などの問題が含まれます。
そして、それらが絡み合っています。
まず、偽装請負問題を整理してみましょう。
抽象的な概念ではなく、具体なパターンで考えていきます。
最も基本的なパターンを「図208-1:社員のチーム常駐」
http://www.kei-it.com/sailing/2008/208-1.htm に示します。
請負契約(民法632条)で客先常駐する場合もありますが、ここでは
委任契約(民法656条)を前提としています。
請負契約と委任契約の基礎知識については「新航海術の補足ブログ」の
下記記事を参照してください。
新航海術の補足ブログ「用語の基礎知識(請負・委任・派遣)」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/post_405c.html
この場合、請負会社Bシステムの業務責任者である山田さんは、
その業務に関してBシステムを代理する権限があります。
そして、エンドユーザ(A商事)からの具体的な注文・相談を受け、
Bシステムの社員(杉山さん)に指図・命令します。
これが、業務委託契約による客先常駐開発の基本形であり、法律的な
問題は全くありません。
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[請負と派遣] (2)偽装請負問題の整理:常駐作業の再委託
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パターンを徐々に変化させていきます。
元請会社Bシステムが下請会社Cソフトに再委託するパターンを
「図208-2:チーム常駐+再委託」
( http://www.kei-it.com/sailing/2008/208-2.htm )に示します。
元請会社と下請会社が共に客先常駐しているというごく一般的な
パターンです。
これについては細かいことを言うと「委任契約の再委託」という点で
少し怪しいところもありますが、実務上は全く問題とされません。
「少し怪しい点」に興味のある方は「新航海術の補足ブログ」の下記の
記事を参照してください。
新航海術の補足ブログ「委任の再委託、再々委託」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/post_f88d.html
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[請負と派遣] (3)偽装請負問題の整理:社員の一人常駐
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次に、技術者が一人で常駐するパターンを考えてみましょう。
「図208-3:社員の一人常駐」に示すような
( http://www.kei-it.com/sailing/2008/208-3.htm )パターンです。
これもよくあるパターンです。
作業ボリュームが一人分しかなかった場合はこのようになります。
または、設計時点ではSEの一人常駐、製造段階ではSE/PGのチーム常駐、
最後の保守フェーズでは再びPGの一人常駐となる場合もよくあります。
この場合、「Bシステム側に業務責任者がいない」とも言えるし、
「山田さんは業務責任者と作業者を兼任している(部下なしリーダ)」
とも言えます。
業務責任者と作業者が分離していないので、山田さんがA商事から
受けている要求は「注文/相談」(実態として委任)なのか、それとも
「指図/命令」(実態として労働者派遣)なのかという議論が起きやすい
パターンです。
このパターンについては「新航海術の補足ブログ」の下記の記事で
細かい議論をしているので、興味のある方は参照してください。
新航海術の補足ブログ「技術者の一人常駐」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/post_78b2.html
結論のみ言うと、山田さんを専門家として扱うなら委任契約が適して
いますし、細かい指示を必要とする作業員として扱うなら労働者派遣
契約が適しています。
少なくともシステム開発(運用・サポートではなく)の場合には、
労働者派遣よりも委任契約を選択するケースの方が多いです。
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[請負と派遣] (4)ブローカー的な会社は壊滅的打撃を受けている
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図208-1から図208-3では問題とならないパターンを示しました。
今度は逆に問題とされているパターンを示します。
「図208-4:多重請負」http://www.kei-it.com/sailing/2008/208-4.htm
のパターンです。
元請会社Bシステムの社員が常駐していません。
さらにBシステムとCソフトとの間に中間会社が入っています。
現在、多くの元請会社が排除しようとしているのはこのパターンです。
その理由は次のとおりです。
【委任の再々委託】
排除する第一の理由として「委任の再々委託」という点に無理があると
いうことがあげられます。
「委任の再々委託」に無理があるので、形式的には請負(民法632条)に
しますが、実態としては完成を約束していないので、偽装請負となります。
詳細は下記記事を参照してください。
新航海術の補足ブログ「委任の再委託、再々委託」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/post_f88d.html
【機密情報・個人情報保護】
第二の理由として、機密情報保護、個人情報保護で問題が発生しやすい
ということがあげられます。
多くの元請会社がこのような多重請負、偽装請負を排除しようとして
いるため、ブローカー的な会社は壊滅的な打撃を受けています。
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[請負と派遣] (5)仕事の減少に伴う技術者余り
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コンプライアンス問題で話が長くなりました。
次に、「仕事の減少に伴う技術者余り」についてお話しします。
> 実は3月以降、大型プロジェクトの凍結や
> 派遣人材の突然の解約といった
> IT投資縮小の流れが表出しています。
上記は、船井総合研究所の長島淳治氏が発行しているメルマガ
「ソフトハウスのための幸福経営論」8月11日号からの引用です。
今年の3月前後から、仕事が減り技術者が余ってきました。
詳細は「新航海術の補足ブログ」の下記の記事を参照してください。
新航海術の補足ブログ「ソフト業界は3月を境に技術者余りに転じた」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/3_fb49.html
持ち帰り開発案件も客先常駐案件も減っています。
その結果、下記の技術者は常駐作業に入れなくなっています。
・外国人
・高年齢者
・経験の少ない人
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[請負と派遣] (6)ソフト会社が取るべき戦略
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このような状況下で、ソフト会社が取るべき戦略は次の3つ、または
その組み合わせです。
・元請会社として営業力を高める。
・社員を積極的に雇用して育てる。
・客先常駐以外の仕事(持ち帰り開発、自社製品・サービス)を増やす。
慶としては上記3つを同時に推進しています。
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[請負と派遣] (7)おまけ:偽装請負の極端な解釈
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さて、下記の主張は正しいでしょうか?
○超過時間清算があるなら偽装請負である。
○「図208-1:チーム常駐」のパターンで進捗会議などに個々の
担当者(例では杉山さん)が出席したら、偽装請負である。
(進捗会議の場で注文や相談を受ける可能性があるから。)
○「図208-1:チーム常駐」のパターンでシステムがダウンした時などの
いわゆる緊急時にA商事の社員が直接個々の担当者(例では杉山さん)
に直接的な指示・指図を出したら、偽装請負である。
興味のある方は「新航海術の補足ブログ」の下記の記事を参照してください。
新航海術の補足ブログ「偽装請負の極端な解釈」
http://www.gamou.jp/comment/2008/08/post_c318.html
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[請負と派遣] (8)メルマガ紹介「ソフトハウスのための幸福経営論」
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本文でも引用したメルマガを紹介します。
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本メルマガについて
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