製造業の呪縛

March 06, 2006

「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のようなソフトを作るべき

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第117号 2006/3/6
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 開発コストとユーザの意識の乖離
▼ [製造業の呪縛] マイクロソフトは、Solarisは怖くないが、Linuxは怖い
▼ [製造業の呪縛] のこぎり入れ方パターン計算ソフト
▼ [製造業の呪縛] オープンソースが苦手とするソフトを作るべき
▼ [製造業の呪縛] これまでにパッケージについて触れた号
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号は、パッケージソフトについて考えます。

「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html
を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[製造業の呪縛] 開発コストとユーザの意識の乖離
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2月中旬、S社を訪問し、T常務と会談しました。
S社は、創業1987年、売上高約9億円、社員数85名、資本金4,000万円の
会社です。

特殊な監視制御装置、計測機器の製造販売からスタートした会社で、
今でもハードウェアの売上が売上全体の1/3を占めています。
会社案内に、パッケージソフトの製作・販売もやっていると
書かれていたので、「パッケージは売れていますか?」と質問した
ところ、次のような回答が返ってきました。

「全然売れていません。開発コストは1,000万円以上なのに、ユーザの
意識は『パッケージなら1本10万円~20万円だろう』ですからね。」


日本ではもともと、パッケージソフトで儲かっている会社は
ほとんどありませんでしたが、その傾向はますます強まっています。

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[製造業の呪縛] Solarisは怖くないが、Linuxは怖い
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それでは、外国のパッケージソフト会社が好調なのかというと、
そうでもありません。


> 世界のパッケージ・ソフト市場は、急激な低価格化やセキュリティ問題、
> 優れたオープン・ソースの登場など、深刻な問題に直面しつつある。
> 現在、パッケージ・ソフト収入の源泉は、インストール・ベースの
> ライセンス料金から、保守サービス料金へと移っている
>   (日経コンピュータ2006/1/9号 
>    マイケル・クスマノ著「日本のソフトウェア産業の謎」より)


パッケージソフトが儲からなくなっているのは、世界的な傾向です。

現代は、技術の標準化が世界的な大競争を生み、その結果として、
あらゆる商品が安くなる時代です。
(第8号「ポスト産業資本主義の時代」
http://www.kei-it.com/sailing/08-040126.html 参照)

しかし、パッケージソフトの世界では、もう一つのデフレ要因が
あります。

例えば、自動車業界なら車を無料で配るなどという連中はいません。
しかし、ソフトウェアの世界ではそのような連中がいるのです。
オープン・ソース・コミュニティーです。

しかも彼らが無料で配るソフトウェアはものすごく優秀です。
巨大なソフトウェア・ベンダーが莫大な開発費をかけて開発した
製品よりも、優秀なオープンソース製品も少なくありません。


マイクロソフトもオラクルも、オープンソースを意識した事業
展開を余儀なくされています。

マイクロソフトはSolarisやAIXは怖くありませんが、Linuxは怖いのです。
オラクルもSybaseやDB2は怖くありませんが、MaySQLやPostgreSQLは
怖いのです。

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[製造業の呪縛] のこぎり入れ方パターン計算ソフト
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エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」の中で次のような話が
載っています。


> 1999年頭にぼくは、丸太から垂木をなるべくたくさんとりたい
> 製材所向けの、のこぎりの入れ方パターンを計算するソフトを
> 書いている会社から相談を受けた。
> 「うちはオープンソースにすべきでしょうか?」
> ぼくは「ノー」と結論した。


エリック・レイモンド氏はオープンソース運動の理論的な指導者です。
彼が書いた「伽藍とバザール」はオープンソース運動の聖典のような
存在です。

そのエリック・レイモンド氏がなぜ「のこぎり入れ方パターン計算ソフト
はオープンソースにすべきではない」と言ったのでしょうか?

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[製造業の呪縛] オープンソースが苦手とするソフトを作るべき
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エリック・レイモンド氏は、オープンソースのメリットが高いのは
次のようなケースだと言っています。

(a) 信頼性、安定性、スケーラビリティがとても重要な場合。
(b) デザインや実装の正しさが、独立ピアレビュー以外の方法では
  きちんと検証できない場合。
(c) そのソフトがその利用者のビジネス展開を決定的に左右する
  ような場合。
(d) そのソフトが、共通のコンピュータ・通信インフラを確立するか
  可能にする場合。
(e) その核となるメソッド(あるいは機能的にそれと等価なもの)が、
  よく知られた工学的な知識の一部であるとき。

Linux、Appache、MySQL、PsotgreSQL は、正しく、この要件を満た
しています。

しかし、「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」は、これらの要件を
一つも満たしていないのです。


あれば確かに便利だが、また特殊なノウハウが詰まっているのだろうが、
「でもいざとなったら、経験豊かなオペレータが自分でのこぎりの入れ方を
手動で計算できるだろう」(エリック・レイモンド氏)という類の
ソフトです。

また、市場が小さいから大手パッケージ会社も手を出さないソフトです。


パッケージを自社開発するとき、ついつい格好いい立派なコンセプトを
描いてしまいます。
しかし、実は、この「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のような
ソフトを作るべきなのです。

つまり、オープンソースにするメリットがないソフト、オープンソース
コミュニティが苦手とするソフト、そして、大手パッケージ会社も手を
出すメリットがないソフトです。


慶でも来期は「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のような
パッケージを作っていきます。

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[製造業の呪縛] これまでにパッケージについて触れた号
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これまで、パッケージソフトについて触れた号は次のとおりです。
参考にしてください。

第103号「パッケージソフト会社は何を売っているのか?」
http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html

第104号「立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう」
http://www.kei-it.com/sailing/104-051205.html

第106号「パッケージがプログラマの職を奪うことはない」
http://www.kei-it.com/sailing/106-051219.html

第109号「パッケージ・ソフトが置かれている状況」
http://www.kei-it.com/sailing/109-060109.html


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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主

技術系:
・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー

外国系:
・中国は脅威か?


次号は、3月13日発行予定です。

乞うご期待!!

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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
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February 27, 2006

社内持ち帰り開発ができる会社

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第116号 2006/2/27
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 個人情報保護法の影響
▼ [製造業の呪縛] 今でもほとんど社内持ち帰りという会社
▼ [製造業の呪縛] 継続的な関係を前提とした下請け構造
▼ [製造業の呪縛] 社内持ち帰り開発ができる会社
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号は、社内持ち帰り開発について考えます。

どのシリーズに分類しようか迷いましたが、「製造業の呪縛」シリーズに
分類します。

「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html
を参照してください。

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[製造業の呪縛] 個人情報保護法の影響
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去年4月1日に個人情報保護法が完全施行されました。
その影響について次のような声を聞きます。

○S社I常務の談話(2006年2月)
「全てのデータ、ドキュメントが持ち出せなくなりました。
パソコンの持ち込みすらできなくなりました。
弊社はこれまでずっと社内持ち帰りでやってきましたが、去年4月
以降は全部常駐になりました。
社内の開発フロアには今は誰もいませんよ。」

 S社は、1985年設立、従業員数約140名、売上高12億円、
 ISO9001認証も取得している会社です。
 業務的には金融・流通系を得意とし、顧客は大手メーカ、大手SIerが
 ほとんどです。

○U社コンサルタントの談話(2006年1月)
「今までは調査分析のための元データをCD-ROMでもらえましたが、
去年4月以降は常駐しないと調査分析ができなくなりました。」

 U社はデータマイニングのパッケージの販売とそれに伴う
 コンサルテーション、カスタマイズを得意とする会社です。


個人情報保護法の影響で、持ち帰りの仕事は減っています。

もっとも、持ち帰りの仕事が減っている理由は、プロジェクトの
度重なる失敗の方が大きいかもしれません。
例えば、次のような声も聞こえます。

○R社営業の談話(2006年2月)
「2004年度は持ち帰りと中国オフショアの失敗で大赤字を出して
しまいました。2005年度は2年分の利益を出さないといけないんですよ。
今は持ち帰りと中国オフショアは止めて、ほとんど常駐です。」

R社は東証一部上場企業です。

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[製造業の呪縛] 今でもほとんど社内持ち帰りという会社
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しかし、今でもほとんど社内持ち帰りという会社もあります。

先週、B社を訪問し、Y取締役と会談しました。

B社は1982年設立、社員数55名、売上高約4億の会社です。
大手メーカ数社からの直取引が売上の大半を占め、そのほとんどは
社内持ち帰りです。

持ち帰りが多い理由は、大手メーカとの付き合いが長いからです。
付き合いが長く、信用があるからというだけでなく、開発環境の
問題もあります。

大手メーカの製品(ハードウェア、パッケージ、ミドルウェア)を
使った開発経験が豊富で、その製品特有の開発環境(ハードウェア・
ソフトウェア)が社内にあるから、持ち帰らせてくれるのです。

例えば、大手メーカN社のPOSシステム開発の前提となるN社製
POS専用機も社内に設置しています。

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[製造業の呪縛] 継続的な関係を前提とした下請け構造
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要するに、「継続的な関係を前提とした下請け構造に基づいた
持ち帰り」なのです。

このことは、大手メーカの製品や文化に縛られるという結果も
もたらします。

まず、技術的に縛られます。
例えば、VB.NETによるC/Sシステムの開発はB社の売上でかなりの比重を
占めていますが、それは、ベースとなるメーカ製パッケージがVB.NET
によるC/Sシステムだからです。


また、独自の顧客開拓、事業展開ができなくなります。
その結果、社歴のわりには規模や範囲は拡大しなくなります。


そして、企業文化が製造業の文化に近くなります。

> 製造現場の目標は明確だ。よりよい品質のものを、少しでも安い
> コストで作ること以外に目標はない。
>      (森永卓郎著「リストラと能力主義」より)


ここでは、「粒の揃った労働者が一丸となって努力しよう」という
文化が支配的になります。

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[製造業の呪縛] 社内持ち帰り開発ができる会社
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今後、社内持ち帰り開発ができる会社は下記の二つでしょう。

(1)コンサルテーション→パッケージのカスタマイズ
例えば、上記U社の場合、調査分析は常駐になりましたが、パッケージの
カスタマイズは、今でも自社内で行っています。

(2)顧客と継続的な関係を築ける会社
上記B社は大手メーカと継続的な関係を築きました。
そのため、持ち帰りが可能となったのです。
顧客がエンドユーザであっても、強固な信頼関係を築くことができれば、
持ち帰りは可能となります。

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次回以降の予告
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次号では、「パッケージを作るとしたら、どこを狙ったらよいか」
について考えます。


次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主

技術系:
・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー

外国系:
・中国は脅威か?


次号は、3月6日発行予定です。

乞うご期待!!

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January 10, 2006

ソフトウェアのコモディティ化が進むということ

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第109号 2005/1/9
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 3分の2は開発・実装に関連するサービス収入
▼ [製造業の呪縛] インドはサービスとしてのソフト開発に専念している
▼ [製造業の呪縛] パッケージ・ソフトが置かれている状況
▼ [製造業の呪縛] 安くて気の利いたものしか売れなくなる
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
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 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
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[製造業の呪縛] 3分の2は開発・実装に関連するサービス収入
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日経コンピュータ2006/1/9号にマイケル・クスマノ氏が書いた
「日本のソフトウェア産業の謎」という記事が載っています。

「製造業の呪縛」シリーズで私が言いたかったことと近いことが
書かれているので、今回その記事を引用しながら、これまでの
まとめをします。


第103号、第106号では、「ソフトウェア産業というと、ついつい
パッケージ・ソフトを思い浮かべてしまうが、実際にはインハウス
開発の方がはるかに大きい」ということを述べました。
( http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html
http://www.kei-it.com/sailing/106-051219.html 参照)

マイケル・クスマノ氏も同じようなことを言っています。

> ソフトウェア産業の3分の1は標準化された製品の販売、残りの3分の2は
> カスタマイズやITコンサルティングといったソフトウェア開発・実装に
> 関連するサービス収入である。

上記数字にはシステム運用管理やデータ・エントリといったサービスは
含まれていません。これらも含めると、サービス系の比重はさらに大きく
なります。


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[製造業の呪縛] インドはサービスとしてのソフト開発に専念している
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マイケル・クスマノ氏は、富士通、日立、NEC、CSK、NTTデータなどの
日本のITベンダーは従業員数や売上高では世界屈指のITベンダーだが、
「ソフトウェア企業というよりは、注文でソフトを生産するカスタム・
ショップであり、システム・インテグレータだ」と指摘しています。

ここまでは誰でも言うことですが、マイケル・クスマノ氏は、「それは
日本だけではない」ということを指摘しています。

> 欧州の大部分やインド、中国でも、パッケージ・ソフトの開発より、
> 顧客個別のニーズに応えるためのソフト開発のボリュームのほうが
> 大きい。例えばインドは、サービスとしてのソフト開発に専念
> している。


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[製造業の呪縛] パッケージ・ソフトが置かれている状況
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マイケル・クスマノ氏はパッケージ・ソフトが置かれている状況
について次のように書いています。

> 世界のパッケージ・ソフト市場は、急激な低価格化やセキュリティ問題、
> 優れたオープン・ソースの登場など、深刻な問題に直面しつつある。
> 現在、パッケージ・ソフト収入の源泉は、インストール・ベースの
> ライセンス料金から、保守サービス料金へと移っている


これは、第104号( http://www.kei-it.com/sailing/104-051205.html )で
私が言いたかったことです。

パッケージ・ソフトの保守サービスは、工業製品の保守サービスよりも
はるかにコストがかかります。
したがって、パッケージ・ソフトで長期的に成功するためには、次の
3つの方法しかないのです。

・マイクロソフトのような独占企業になって、自分の都合で保守サービスを
 打ち切れるようになる。

・保守サービスで金を取れるビジネスモデルを作る。
(例えば、オープンソースの保守サービスを売っているRed Hat
などの Linux ディストリビュータがこれにあたります。)

・保守サービスをセットにした製品企画をする。
(例えば、SAP R/3やオラクルEBSがこれにあたります。)

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[製造業の呪縛] 安くて気の利いたものしか売れなくなる
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オープン・ソースの台頭、パッケージ・ソフトの急速な低価格化により、
ソフトウェアはコモディティ(日用品)化します。
会計ソフトもCADソフトも既にコモディティ化しています。

コモディティ化とは、100円ショップ化するということです。
安いのは当たり前、安くて気の利いたものしか売れなくなるという
ことです。
パッケージ・ソフトだけでなく、カスタム開発もこの巨大な潮流に
引きずられて、価格が下落しています。

これは次のことを意味します。

ソフト会社が開発技術で儲けるためには、極端に安くできるような
優れた生産技術・ノウハウが必要となります。
マイケル・クスマノ氏も「ソフトウェアのコモディティ化が進む
ということは、ソフトウェア開発における効率の高さが極限まで
求められる」と言っています。

もしも、開発で儲けられないなら、気の利いたサービスで儲ける
ことを考えなければなりません。


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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー


次号は、1月16日発行予定です。

乞うご期待!!

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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
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January 05, 2006

2006年の展望(顧客と共に、他社と共に)

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第108号 2005/1/2
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 2006年のインフラ、ミドルウェア開発
▼ [製造業の呪縛] 2006年のアプリケーション開発
▼ [製造業の呪縛] 2006年の持ち帰り型一括請負
▼ [製造業の呪縛] 顧客と共に、他社と共に
▼ [製造業の呪縛] 特許
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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明けまして おめでとうございます。
本年も宜しくお願い致します。

蒲生嘉達(がもう よしさと)です。
今週号では、年頭に当たり、2006年の展望をお話します。


・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[製造業の呪縛] 2006年のインフラ、ミドルウェア開発
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2006年は、景気回復によって、システム開発の総量は増えていきます。

しかし、インフラ、ミドルウェアの世界ではオープンソース化が、
一層進みます。
(第107号「インフラの世界」
http://www.kei-it.com/sailing/107-051226.html 参照)

したがって、インフラ、ミドルウェアの世界では、メーカがソフト
会社に一括請負として発注する仕事の量は減少します。
開発案件の数は増えますが、オープンソースを使う、またはオープン
ソースをハッキングするなどによって、開発費を劇的に減らしていきます。

> 何を書けばいいかわかってるのがよいプログラマ。なにを書き直せば
> (そして使い回せば)いいかわかってるのが、すごいプログラマ。
>          (レイモンド著「伽藍とバザール」より)

インフラ、ミドルウェアの世界では、このようなハッキング型の開発
スタイルがますます主流になっていくでしょう。

したがって、メーカが大規模開発を一括請負として丸投げすることは減り、
オープンソースとの調整部分やハッキング部分のみの発注となり、
常駐型開発かごく小規模な一括請負が主流になるでしょう。

また、インフラの世界でも、開発ではなく、ネットワーク構築・運用
などのサービス分野は2006年も拡大し続けます。

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[製造業の呪縛] 2006年のアプリケーション開発
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アプリケーションの世界では、昔はゼネコン型の一括請負が盛んでした。
メーカや大手SIerが、銀行や証券などの大手ユーザから一括請負し、
それを分割して孫請けに発注するというパターンです。

このパターンは2006年も減り続けるでしょう。

その理由は、次の二つです。
・きれいに切り出して孫受けに出せるような仕事が減ったから。
・きれいに切り出せる仕事はオフショアに出した方が安いから。

きれいに切り出せない開発のみが国内に残り、増え続けます。

きれいに切り出せない開発とは、顧客の環境に密に依存する開発です。
ここで言う「環境」とは、顧客の業務、ビジネスモデル、社内IT環境、
社内事情(組織、人間関係、場合によっては発注者の性格)などを含みます。
(第49号「日本に残る仕事」
http://www.kei-it.com/sailing/49-041115.html 参照)

そして、この種の開発は、次のような性格を持ちます。
・小規模
・短納期
・仕様変更が多発する。仕様が不明確でなかなか決まらない。
・客先常駐、または、元請常駐の要求が強い

したがって、2006年も客先常駐型の技術者の需要は増え続けます。
慶で言うなら、ITサービス事業部は市場拡大を前提として、積極的な
運営を図っていくべきです。

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[製造業の呪縛] 2006年の持ち帰り型一括請負
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上述のとおり、インフラ、ミドルウェアの世界でも、アプリケーション
の世界でも、従来型のゼネコン的一括請負案件は減ります。


では、持ち帰り型一括請負で儲けられる会社はないのでしょうか?

そんなことはありません。

2005年に慶と取引の始まったG社は、持ち帰り型一括請負で成功
しています。

注目すべきなのは、G社は、開発技術の側からではなく、
ビジネスモデルの側からアプローチしているという点です。
コンサルティング、企画提案から運用・メンテナンスに至るまで、
顧客に長期的なサービスを提供しています。

「最初に持ち帰り開発ありき」ではなく、「最初に顧客満足ありき」です。

地方に事業所を持っているのみならず、大連に子会社も持っています。
地方での開発、海外での開発が有利な場合は、それらを十分に活用し、
東京本社で開発した方がメリットがあるもののみ、本社内で開発
しています。


慶としては、2006年は、大手エンドユーザであるD社に対し、
ビジネスモデルの側からアプローチをしていきたいと思っています。

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[製造業の呪縛] 顧客と共に、他社と共に
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ここでもう一つ指摘しておきたいことは、ビジネスモデル側からの
アプローチとは、「顧客と共に」であると同時に、「他社との連携」も
意味しているということです。

中小ソフトウェア会社にとって、顧客満足は自社のみで実現できる
ものではないからです。

慶は、D社を満足させるために、データマイニングに強いU社、
マーケティングに強いS社と連携して話を進めています。

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[製造業の呪縛] 特許
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第107号( http://www.kei-it.com/sailing/107-051226.html )で
発明を取り上げたところ、読者から、「ビジネスモデル特許が
難しい理由は、大概のビジネスモデル特許は他人の発明に依存し
単独で機能することがないからだ」というご指摘を受けました。


> 加えて、『その発明単独で実現可能か?』は、実施段階での大事な
> 一要素だと考えております。
> 多くの発明、特にビジネスモデル特許は、他人の発明に依存し単独で
> 機能することはなく、権利配分など様々な問題を抱えることになる
> のではないでしょうか?
>
> 従って、単純発明で効果が高く、その製造コストが低く、同時に
> 製造段階でも他の発明に依存しないものが最も実現性が高いと考えます。

2006年は、慶の営業・企画部門では上述の「ビジネスモデル側からの
アプローチ」に加え、オリジナルサービスの開発、ソフトウェア特許
取得も積極的に進めていきたいと考えています。

(第107号「ある発明家との業務提携」
http://www.kei-it.com/sailing/107-051226.html 参照)

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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー


次号は、1月9日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
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December 26, 2005

公開戦略vs.非公開戦略vs.特許戦略

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第107号 2005/12/26
▼ まえがき:今週号は「発明」がテーマ
▼ [製造業の呪縛] 4つの世界
▼ [製造業の呪縛] インフラの世界
▼ [製造業の呪縛] インフラの世界でのITベンチャーの発明
▼ [製造業の呪縛] アプリケーションの世界
▼ [製造業の呪縛] ミドルウェアの世界
▼ [製造業の呪縛] ビジネスモデルの世界
▼ [製造業の呪縛] ある発明家との業務提携
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき:今週号は「発明」がテーマ
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

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ある顧客からのシステム開発費支払いが滞っているので、調査した
ところ、経営不振に陥っていることが分かりました。
その顧客は資本金4億円を超えるITベンチャーです。
それだけの資本金の大半を一つの発明につぎ込み、それが全く収益に
結びついていないのです。

発明や新しいビジネスモデルを核とした事業展開をし、経営不振に
陥ってしまったITベンチャー、倒産にまで至ったITベンチャーは
少なくありません。
むしろ、発明やアイデアで儲けているITベンチャーは、例外的な
存在だと言っても過言ではないでしょう。


今週号では、発明について考えます。

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[製造業の呪縛] 4つの世界
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発明した人、アイデアを思いついた人は、どうしても自分の世界で
妄想を膨らましてしまいます。

その発明やアイデアを客観的に見るために、世界を下記の4つに分類し、
その発明やアイデアがどの世界にあるのかを考えることは非常に
役立ちます。

1.ビジネスモデルの世界
2.アプリケーションの世界
3.ミドルウェアの世界
4.インフラの世界


これらの4つの世界はそれぞれ性格が異なり、それ故、下記の3つの
戦略の有効性も異なるのです。

・オープン化戦略
・非公開戦略
・知的所有権戦略(公開するが知的所有権で守る)

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[製造業の呪縛] インフラの世界
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インフラの世界とは、OS、ネットワーク、WEBサーバなどの世界です。

水道、電気、ガスが途絶えたら一般の人は生活できなくなります。
それと同様に、ITインフラが止まったり、不安定だったり、あるいは
セキュリティ面などで障害が発生したりすれば、ほとんどの人の仕事は
深刻なダメージを受けます。

したがって、信頼性、安定性、スケーラビリティが強く求められます。
その結果、公共財化、共有物化、標準化、オープン化の力が強烈に
働くのです。

したがって、この世界では、長期的には次の二つしか成功パターンは
ありません。

(1)マイクロソフトやシスコシステムズのように圧倒的な力を持った
 グローバル企業が、自ら世界標準を作ってしまう。
(2)LinuxやApacheのように、世界中のオープンソースコミュニティを
 味方に付ける。


(1)の場合は、非公開戦略を採ることによって、製品として独占し、
利益を得ることが可能です。
また、知的所有権戦略を採ることによって、ライセンス料で利益を
得ることも可能です。
しかし、それらの戦略を採って、尚且つ、極めて高水準の信頼性、
安定性を維持するためには、莫大な開発費が必要となります。
また、技術とは関係ない強力な力(圧倒的な政治力、営業力、企業力)が
必要となります。

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[製造業の呪縛] インフラの世界でのITベンチャーの発明
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冒頭で述べたITベンチャーの発明はインフラの世界の発明でした。
現実のビジネスモデルと不可分に結びついているわけではなく、
「ブラウザでこんなこともできるようになりました。ビジネスモデルは
皆さんで考えてください」という性格の発明でした。

マイクロソフトがIEの追加機能としてリリースするなら、「画期的だ」と
評価されたでしょうが、同じことを中小企業がやっても莫大な開発費に
見合うだけのメリットがありません。

オープンソースにしてオープンソースコミュニティを味方に付ければ、
開発費は節約できるでしょうが、その場合は知的所有権による直接的な
収益はありません。

したがって、インフラの世界で個人や中小企業が非公開技術や
知的所有権だけ持っていても利益を生み出せないのです。

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[製造業の呪縛] アプリケーションの世界
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アプリケーションの世界は、オープンな技術規格が弱い、または、
存在しない世界です。

例えば、Wordや一太郎などのワープロソフト、筆王などの年賀状ソフト、
AutoCADなどのCADソフト、Illustratorなどの画像編集ソフトなどは
全て、非公開の独自ファイルフォーマットを持っています。
おそらくそのアプリケーションを組む上では、最適なファイルフォーマット
になっているのでしょう。

ITインフラの障害はほとんどの人の仕事に深刻な影響を与えますが、
アプリケーションが多少不安定でも、バグがあっても本当に困る人は
ごく少数です。
したがって、アプリケーションの世界では、信頼性、安定性、
スケーラビリティはインフラの世界ほどには求められません。
それ故、公共財化、共有物化、標準化の力は弱いのです。

ここでは、個人や中小企業が非公開戦略、知的所有権戦略を採ることは
理にかなったことです。

しかし、この場合、知的所有権の目的は、ライセンスで稼ぐことではなく、
真似されるのを防ぐことになるでしょう。

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[製造業の呪縛] ミドルウェアの世界
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ミドルウェアの世界とは、Oracleのようなデータベース、シトリックスの
MetaFrameのような開発ツールの世界で、技術規格はあるけれど不完全
な世界です。

インフラの世界とアプリケーションの世界の中間的な性格を持っています。
また、インフラとミドルウェア、アプリケーションとミドルウェア
との境界線は実際には曖昧です。

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[製造業の呪縛] ビジネスモデルの世界
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ビジネスモデルの世界とは、現実の業務の世界です。

この世界では、知的所有権はあまり意味がないと思います。

特許取得には時間と費用がかかる上に、ビジネスモデルを特許で
守ることは現実的には難しいからです。

知的所有権で守るよりも、他人が容易に真似できないノウハウを
蓄積していくこと、才能ある人を集めていくことの方が重要でしょう。

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[製造業の呪縛] ある発明家との業務提携
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私は11月末から、ある発明家と業務提携について話し合っています。
慶が請負開発や技術者派遣だけでなく、発明や新しいビジネスモデルを
狙って行かなければならないことは確かだからです。

その発明家が持っている発明はインフラ系の発明なので、それ単独
ではなく、アプリケーションまたはビジネスモデルと密接に結びつけて
世に出したいと考えています。


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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方


次号は、1月2日発行予定です。

乞うご期待!!

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December 19, 2005

パッケージが請負を駆逐することはない

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第106号 2005/12/19
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] パッケージがプログラマの職を奪うことはない
▼ [製造業の呪縛] プログラマの労働時間のほとんどはインハウス開発
▼ [製造業の呪縛] どこに焦点を絞るか
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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[製造業の呪縛] パッケージがプログラマの職を奪うことはない
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これまで「製造業の呪縛」シリーズで考察してきたことを基にして、
いくつかの未来予測をしてみましょう。

そのうちの一つは、「パッケージ製品が、請負開発をしている
プログラマの職を奪うことはない」という予測です。

製造業の場合、工場で大量生産された製品が、手作業の職人を駆逐
しました。
コンピュータソフトウェアのパッケージ製品も大量に複製される製品
ですが、それによってプログラマの職が奪われるということは、
これまでも無かったし、今後もあり得ません。


確かに、我々が日常的に使うソフトウェアのほとんどはパッケージ
製品です。
MS-Windows、MS-Office、ブラウザ、メーラ、グループウェア、
会計ソフト、給与計算ソフト、画像編集ソフト、CADソフト、
データベースソフト、データ分析ソフト、・・・など。

今から20年前、世界中で動いているプログラムの90%は汎用機で動く
社内システムでしたが、今ではPC上のプログラムを含めると、
世界中で動いているプログラムの90%以上はパッケージ製品だと
言っても過言ではないでしょう。

今後さらにERP、SCMなどの大規模なパッケージ製品が普及すると、
企業の基幹システムもかなりの部分がパッケージ製品に置き換わって
いくでしょう。

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[製造業の呪縛] プログラマの労働時間のほとんどはインハウス開発
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しかし、工業製品に駆逐された職人と同じように、ソフトウェア
受託開発会社やプログラマがパッケージ製品に駆逐されるかと言うと、
それはあり得ないことです。


CPU使用時間、ユーザの利用時間という観点では、パッケージ製品の
比重は圧倒的です。
新聞、雑誌、テレビなどで広告宣伝されている割合は、もっと圧倒的です。
(請負開発のテレビCMなど見たことありません。)
世界的なソフトウェアの売上高という観点でも、パッケージ製品が
占める割合は大きいでしょう。

しかし、手間、労働時間、雇用、人件費という点では、依然として
インハウス開発が圧倒的な比重を占めているのです。
(第103号「『インハウス開発』とは」
http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html 参照)

尚、インハウス開発には、パッケージ製品のカスタマイズも、パッケージ
製品の上に乗るアプリケーション開発も含まれています。


パッケージ先進国の米国ですら、プログラマの労働時間のほとんどは
インハウス開発です。

> This is called `maintenance', and any software engineer or
> systems analyst will tell you that it makes up the vast majority
> (more than 75%) of what programmers get paid to do. Accordingly,
> most programmer-hours are spent (and most programmer salaries
> are paid for) writing or maintaining in-house code that has no
> sale value at all.
>
> これは「メンテナンス」と呼ばれていて、どんなソフトエンジニア
> でもシステムアナリストでも、これがプログラマの賃金の大部分
> (75% 以上)を占める点には同意するはずだ。そしてこれにともなって、
> ほとんどのプログラマの労働時間が割かれるのは(そしてプログラマの
> 給料の大部分を占めるのは)、まったく販売価値のないインハウスの
> コーディングやメンテナンスだ。
>
>       (レイモンド著、山形浩生訳「魔法のおなべ」より)

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[製造業の呪縛] どこに焦点を絞るか
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したがって、in-house code を書くことを(持ち帰りまたは常駐で)
請負っているプログラマやソフトウェア会社は、自分たちがパッケージ
製品に駆逐されることを心配する必要はありません。

しかし、どこに焦点を絞るかということは重要です。

例えば、私は、1986年から1993年まで某ソフトハウスで、F社独自の
UNIXに組み込まれる通信制御ドライバや通信系ユーティリティの
請負開発に携わりました。
ところが、このようなメーカ独自OS内に組み込まれるソフトウェアの
請負開発は、当時と比べて今は激減しています。

OSのドライバやユーティリティ開発は、オープンソースコミュニティが
得意とする分野だからです。


オープンソースコミュニティが得意とする分野、パッケージ会社が
得意とする分野、オフショア会社が得意とする分野では彼らと競合せず、
彼らにできない分野を狙う、または彼らと協業する、利用するという
戦略を採らないと請負会社は成功しません。

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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方
・オープンにすること、クローズにすること、特許についての考え方


次号は、12月26日発行予定です。

乞うご期待!!

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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
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December 12, 2005

産業分類上の「ソフトウェア業」

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第105号  2005/12/12
  ▼  まえがき
  ▼  [製造業の呪縛] 新産業分類ではソフトウェアはサービス業ではない
  ▼  [製造業の呪縛] 情報通信業などの大分類新設は国際的な流れ
  ▼  [製造業の呪縛] 「サービス業→お客様は神様」を生み出す曖昧さ
  ▼  [製造業の呪縛] 次回以降の予告

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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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  [製造業の呪縛] 新産業分類ではソフトウェアはサービス業ではない
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「ソフトウェア業はサービス業だ」と主張している人も「いや、
やっぱり製造業だ」と主張している人も、一般的な産業分類では
ソフトウェア業はサービス業に分類されていると思っています。

しかし、日本標準産業分類では、ソフトウェア業は大分類レベルでは
サービス業に分類されていません。「情報通信業」に分類されているのです。
( http://www.stat.go.jp/index/seido/sangyo/3.htm 参照)

確かに昔はサービス業に分類されていましたが、2002年3月の改定で、
「情報通信業」が新設され、ソフトウェア業はそこに分類されるように
なりました。

「情報通信業」は、単純に旧サービス業から分離したのではなく、
下記の3つが統合されたものです。
・電気通信と郵便業の一部(旧分類では「運輸・通信業」)
・新聞・出版(旧分類では「製造業」)
・放送、情報サービス、調査、映画・ビデオ制作、ラジオ番組制作
 (旧分類では「サービス業」)

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  [製造業の呪縛] 情報通信業などの大分類新設は国際的な流れ
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2002年3月の改定では、他にも「医療、福祉」「教育、学習支援」が
旧サービス業から独立し、大分類となっています。

また、一般にはサービス業と思われている飲食店は、旧分類では
「卸・小売業」でしたが、旧サービス業の旅館・その他宿泊所と合体し、
「飲食店、宿泊業」となりました。

したがって、現時点で日本標準産業分類上、大分類レベルでサービス業と
言えるのは、次の2分類のみです。
・複合サービス業:郵便業、協同組合
・サービス業(他に分類されないもの):
    専門サービス業(他に分類されないもの)、学術・開発研究機関、
    洗濯・理容・美容・浴場業、娯楽、修理、リース、広告など

「情報通信業」「飲食店、宿泊業」「医療、福祉」「教育、学習支援」
を独立した大分類にするということは、日本の総務省の独創では
ありません。
むしろ日本の総務省が国際的な流れに追随したというのが実態です。

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  [製造業の呪縛] 「サービス業→お客様は神様」を生み出す曖昧さ
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もちろん、今でも、「有形の物を生産する第一次および第二次産業」
に対する「無形のサービスを供給する第三次産業」という概念は
存在します。

したがって、「ソフトウェア業は第三次産業だ」あるいは
「ソフトウェア業はサービスを供給する産業だからサービス業だ」という
言葉自体は、間違いではありません。

実際にソフトウェア業は情報通信業の中の小分類では「情報サービス業」
に分類されています。

しかし、「第三次産業」「サービスを供給する産業」という概念が
あまりにも広すぎるので、「これはこういう意味で言っているんだ」
と説明しないと、イメージだけの無意味な言葉になってしまいます。

「ソフトウェア業はサービス業だ。サービス業ではお客様は神様だ。
だから、無理難題を何でもきけ」という乱暴な三段論法を展開する
人も出てきてしまうのです。

レイモンド氏も「魔法のおなべ」で「ソフトウェア業はサービス産業だ」
と言っています。
この言葉の意味するところは「ソフトウェア業を工場モデルで考えては
いけない」ということです。
そして、それを根拠にして、レイモンド氏は、ソフトウェア業界で
現実に起きている流れを説明し、未来を示唆しています。

> Red Hat をはじめとする Linux ディストリビュータがやっているのは、
> こういうことだ。かれらが実際に売っているのは、ビット自体という
> 意味でのソフトではない。
> ちゃんとうごく OS を組み立てて試験することによる付加価値なんだ。
>        (エリック.S.レイモンド著「魔法のおなべ」より)

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  [製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方

次号は、12月19日発行予定です。

乞うご期待!!

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  本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年12月10日現在、444名です。

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December 05, 2005

パッケージソフトで長期的に成功することが難しい理由

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第104号 2005/12/05
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] うらやましいが、参入できない
▼ [製造業の呪縛] 立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう
▼ [製造業の呪縛] パッケージで長期的に大成功することは難しい
▼ [製造業の呪縛] その理由は「サポートのコスト」
▼ [製造業の呪縛] 独占企業は自由にサポートを打ち切る
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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[製造業の呪縛] うらやましいが、参入できない
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受託ソフト開発会社にとって、パッケージソフト会社はうらやましく
感じられます。

自分達は毎日働かないとメシが食えないのに、パッケージソフト会社は
一旦商品を開発してしまうと、後はコピーするだけでお金が稼げるように
見えるからです。

しかし、第64号、第65号で解説したようなパッケージソフト開発の
難しさを前にして、彼らはパッケージソフト開発に参入することを
あきらめます。

・第64号「仕様がない世界でのソフトウェア開発」
 ( http://www.kei-it.com/sailing/64-050228.html )

・第65号「改善に明け暮れて開発が遅れるとゴミになる」
 ( http://www.kei-it.com/sailing/65-050307.html )  参照

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[製造業の呪縛] 立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう
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しかし、パッケージソフト開発は、小規模な成功でよいなら、極端に
難しいわけではありません。

例えば、船井総合研究所ソフトハウス活性化チームでは
「ソフトハウス経営者が180日で利益率20%のレールに乗り換える法!」
http://www.funaisoken.co.jp/search/search_3/GO1099.html
というセミナーを行っています。
(このセミナーを企画されている斉藤芳宣氏は、本メルマガの読者で、
慶に来社されたこともあります。)

私はセミナーには出席していませんが、無料小冊子は読みました。
下記はその小冊子に書かれている斉藤芳宣氏の言葉です。

・パッケージはポイントさえ外さなければ、それほどムリせず確実に
 利益を生むことができるんです。

・パッケージ商品の開発というと、すぐに「何をつくるか」と考えて
 しまうことが多いのですが、一番大切なのは「どの市場向けにつくるか」
 なんです。


確かにそのとおりです。

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[製造業の呪縛] パッケージで長期的に大成功することは難しい
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しかし、より巨視的に見るなら、パッケージソフトで長期的に大成功
している会社は世界中でも数えるほどしかありません。
マイクロソフトだけと言ってもいいかもしれません。

大概のパッケージソフトおよびそのパッケージに依存したソフト会社が
たどる運命は次のようなものです。

 「最初の数年間は成長するが、市場の成熟とともに売上は横ばいとなり、
 下降線を描き、やがて消えていく。」


この盛衰の中から、カテゴリーごとにガリバーが誕生します。
DBのオラクル、ERPのSAP、そしてPCソフト全体のマイクロソフト、
というように・・・。

私はこれまで、この現象について、「OSや汎用的アプリケーションは
一種の媒体であって、規模の経済が働くからだろう」と思っていました。

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[製造業の呪縛] その理由は「サポートのコスト」
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しかし、エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」を読んで、
パッケージソフトで長期的に成功することが難しい理由、および、
パッケージソフト市場が寡占化する理由が分かりました。

その理由は、「サポートのコスト」です。
ここで言う「サポート」とは、ヘルプデスク、バグフィックス、
アップグレードなどのアフターサービスです。

通常、パッケージソフトの購入価格は高く、サポート料は無料に
(有料でもうんと安く)設定されます。
これは工業製品の価格設定を真似たものです。

売上が伸びている場合はこのような価格設定でも、うまくいきます。
ユーザが増え、そのためサポートコストが増えても、売上の伸びで、
サポートコストの増加を賄えるからです。

しかし、市場が成熟して、売上の伸びが鈍化してくると、この価格
設定は破綻します。

売上が横ばいになっても、ユーザは売れた本数分増え続けるので、
サポートコストは増大し続けます。
売上が減っても、ユーザは減らないので、サポートコストは減りません。


工業製品も購入価格は高く、サポート料は低いのですが、それらは
ソフトウェアほどにはヘルプデスク、バグフィックス、バージョン
アップは必要としないので、大きな問題になりません。

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[製造業の呪縛] 独占企業は自由にサポートを打ち切る
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バージョンの数が増えるにしたがって、サポートはますます複雑・
煩雑になり、コストは膨らみ続けます。

サポートコストに耐え切れなくなったソフト会社は、旧バージョンの
製品のサポートを打ち切ります。
これは、シェアの小さい会社から行われます。

サポート打ち切りは、ユーザを離反させ、シェアをさらに小さくし、
やがて、その会社は市場から撤退していきます。

このようにして、寡占市場が形成され、いずれは独占企業が誕生します。

そうなったら、ユーザは他に流れようがないから、独占企業は自由に
サポートを打ち切るようになります。

例えば次のように。

> Windows 95 の無償サポートに関しては 2001 年 3 月末を持ちまして
> 終了し、オンライン セルフ サポートも、2002 年 12 月末を持ちまして
> 終了させていただきました。
> http://www.microsoft.com/japan/win95/default.asp


> ■ Windows 98 Second Edition アップデート CD の提供は終了しました。
> ■ Windows 98 Service Pack 1 の提供は終了いたしました。
> http://www.microsoft.com/japan/win98/

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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・オープンソース時代のソフトウェア会社のあり方
・製造を外注した場合のソフトウェア会社のあり方
・ソフトウェア全体を外注するサービス会社のあり方

付け足しとして
・日本標準産業分類(平成14年3月改訂)ではソフトウェア会社は
「サービス業」ではなくなっている。


次号は、12月12日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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November 28, 2005

請負開発の納品プログラムは「製品」ではない

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第103号 2005/11/28
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」
▼ [製造業の呪縛] 「インハウス開発」とは
▼ [製造業の呪縛] インハウス開発が多いのは、米国も同じ
▼ [製造業の呪縛] 請負開発の納品プログラムは「製品」ではない
▼ [製造業の呪縛] パッケージソフト会社は何を売っているのか?
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき:新シリーズ開始
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[製造業の呪縛] エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」
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エリック・レイモンド氏はオープンソース運動の理論的な指導者です。

1998年に「伽藍とバザール」という有名な論文を書きました。
「Linuxはブルックスの法則(遅延したプロジェクトへの要員追加は、
さらなる遅れをもたらす)を打ち破った」と主張している論文で、
非常に面白いので、そのうち本メルマガでも解説します。

下記URLから、原文と山形浩生氏の翻訳版がリンクされています。
http://cruel.org/freeware/cathedral.html


次いで、エリック・レイモンド氏は1999年に、「魔法のおなべ」
という論文を書きました。
やはり、オープンソースについての論文ですが、「伽藍とバザール」が
開発方法論的な観点から論じているのに対し、「魔法のおなべ」は
経済学的な観点から論じています。

下記URLから、原文と山形浩生氏の翻訳版がリンクされています。
http://cruel.org/freeware/magicpot.html


本メルマガの「製造業の呪縛」シリーズは「魔法のおなべ」を参考に
しています。

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[製造業の呪縛] 「インハウス開発」とは
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今から20年前、世界中のプログラムの90%は汎用機COBOLで書かれて
いました。業種的には、ほとんどが銀行や保険会社などの金融系でした。
そしてそれらのプログラムは、ユーザが社内開発していました。
(社内開発には、システム開発受託会社への下請けも含まれます。)

その後、流通、製造などあらゆる産業でコンピュータが使用される
ようになりました。
現在では、自動車もパチンコもマイクロチップで制御されています。

しかし、そこで動くプログラムの開発は、ユーザが社内開発する、
または、それをシステム開発受託会社に下請けして開発するという
点については、全く変わりがありません。

これらの開発は、「インハウス開発」あるいは「カスタム開発」と
呼ばれます。


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[製造業の呪縛] インハウス開発が多いのは、米国も同じ
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インハウス開発は、それが使われる環境と密に統合されています。
ここで言う「環境」とは、業務系では、業務のやり方、社内組織、
既存システムなどですし、制御系では、そのソフトウェアが組み
込まれるハードウェア・ソフトウェア環境です。

インハウス開発は環境と密に統合されているが故に、再利用が難しく、
また、環境が変わるにつれて、ソフトウェアをそれに適合させるために、
たえず様々な作業が継続的に必要になってきます。
この作業を「メンテナンス」と呼びます。

米国は日本に比べてパッケージ利用率が高いと言われます。
そして、「日本のシステム開発はインハウス開発が多いからダメなんだ」
と言われます。

しかし、インハウス開発が多いのは、米国でも同じです。


> これは「メンテナンス」と呼ばれていて、どんなソフトエンジニア
> でもシステムアナリストでも、これがプログラマの賃金の大部分
> (75% 以上)を占める点には同意するはずだ。
> そしてこれにともなって、ほとんどのプログラマの労働時間が
> 割かれるのは(そしてプログラマの給料の大部分を占めるのは)、
> まったく販売価値のないインハウスのコーディングやメンテナンス
> だということになる。
>        (Eric S. Raymond 著「魔法のおなべ」より)

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[製造業の呪縛] 請負開発の納品プログラムは「製品」ではない
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システム開発受託会社がインハウス開発を請負う場合、確かに
「もの作り」はします。

しかし、他に転用できない特注品を作っているのです。

ネジや歯車などの工業製品は、規格に合っていれば、様々な用途に
使用されます。だから大量生産に意味があるのです。
しかし、インハウス開発プログラムの複製には、販売価値どころか
利用価値もありません。
セブンイレブンのPOSシステムをコピーしても、ローソンでは使えない
のです。


住宅でも衣類でも、中古市場が形成されるのは、他に転用できる
からです。
しかし、インハウス開発プログラムの中古市場など考えられません。
中古住宅にも古着にも販売価値はありますが、インハウス開発
プログラムには販売価値はないのです。

請負開発の納品プログラムは、「市場で販売できない」という意味で
「商品」でも「製品」でもありません。
請負開発会社は「提示された仕様のプログラムを作成する」という
サービスを販売しているのです。

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[製造業の呪縛] パッケージソフト会社は何を売っているのか?
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それでは、多くの複製が作られ、パッケージ化され販売されるプログラムは
「製品」でしょうか?
パッケージソフト会社は、商品を販売しているのでしょうか?
それとも、サービスを販売しているのでしょうか?

一般には、商品を販売していると考えられています。

しかし、Raymond氏は「魔法のおなべ」で、パッケージソフトに関して、
「消費者が支払う価格の上限は、そのベンダのサービスの期待将来価値
である」と述べています。


面白い見解なので、次号でこの点について解説します。

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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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November 21, 2005

ソフトウェア産業は製造業かサービス業か

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第102号 2005/11/21
▼ まえがき:新シリーズ開始
▼ [製造業かサービス業か] 本シリーズで書きたいこと
▼ [製造業かサービス業か] 上司が部下に言う定番の一つ
▼ [製造業かサービス業か] 違いは「商品の有無」
▼ [製造業かサービス業か] 注文住宅を建てる工務店もサービス業?
▼ [製造業かサービス業か] 「製造業である」という主張も健在
▼ [製造業かサービス業か] 次回以降の予告


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まえがき:新シリーズ開始
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。


第101号( http://www.kei-it.com/sailing/101-051114.html )で
次の予告をしました。


> 米国のソフトウェア会社が、それもPC系ソフトウェア会社に限って、
> 儲かっているか否かに関わらず、自社のソフトウェアを減価償却
> しないのなら、このことはもっと本質的で重大な問題を含んでいる
> のではないでしょうか?
>
> 「ソフトウェアの価値をどのように考えるのか」という問題を・・・。
>
> 次号以降で、「ソフトウェアの価値とは何か?」というテーマにまで
> 踏み込みます。


これは非常に大きなテーマなので、新シリーズ「製造業かサービス業か」を
立ち上げます。


「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズでは、まだ、「資本金」
「増資」「新会社法の1円起業」などについて書きたいことが残って
いますが、しばらくお休みします。

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[製造業かサービス業か] 本シリーズで書きたいこと
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「製造業かサービス業か」シリーズでは、次のようなことを書く予定です。

(1)「ソフトウェア産業は製造業である」という主張も健在。

(2)パッケージソフトは製造業かサービス業か?

(3)米国ですら、プログラマの給料はパッケージの販売価格で
   決まっていない。

(4)デルはPC製造ですら、流通業、サービス業に変えた。

(5)広告が主たる収入源になる時代のソフトウェア会社の姿。

(6)オープンソース(つまり製造が無料の世界)との関係。

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[製造業かサービス業か] 上司が部下に言う定番の一つ
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「君たちはソフトウェア産業は製造業だと思っているだろうが、
本当はサービス業なんだよ。」

私がこの業界に入った20数年前から、この言葉は、上司が部下に言う
言葉の定番の一つでした。

この場合、上司が言いたいことは次のようなことです。

・顧客満足が目的であって、良いプログラムを作ること自体が目的ではない。
・顧客とのコミュニケーションを大切にしなければならない。
・オタクっぽいマニアックなプログラマではなく、ビジネスマンであれ。
・自己満足的な職人芸の追求に走ってはいけない。


しかし、これらは、サービス業であるが故の要請でしょうか?
製造業なら、顧客満足を軽視してもよいのでしょうか?
製造業なら、自己満足的な職人芸に走ってもよいのでしょうか?


「顧客満足が目的」という点では、製造業もサービス業も同じはずです。
街角の理髪店でも、松下電器やトヨタのようなメーカーも消費者の満足
がなければ成り立ちません。

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[製造業かサービス業か] 違いは「商品の有無」
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製造業とサービス業の違いは、「顧客満足を目的とするか否か」ではなく、
「商品の有無」です。

例えば、我々が自動車を買う場合、顧客が買うものは、自動車という
商品が主で、付随するサービスは従です。
自動車そのものに商品価値があり、その自動車を買った人はそれを
中古市場で売ることもできます。

一方、理髪店は髪を切るというサービスで対価を得ているのであり、
納品物はありません。

納品物があるサービス業もあります。
例えば、調査を依頼された探偵は、最終的には報告書や証拠写真を
納品物とするでしょう。
しかし、それらには顧客にとっての(調査対象の相手を問い詰める際の)
「利用価値」はありますが、商品としての「販売価値」はありません。

また、調査結果は「分かりませんでした」となることもあり得ます。
しかし、その場合でも、利用者は調査というサービスに金を払います。
最初から調査結果の仕様があるわけではないからです。

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[製造業かサービス業か] 注文住宅を建てる工務店もサービス業?
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「ソフトウェア産業は製造業ではなく、サービス業である」という主張は、
コンサルタントがコンサルタント契約によって調査やアドバイスをする場合、
ネットワークエンジニアやプログラマが準委任契約で常駐作業をする場合
には、異論はないでしょう。

しかし、システム請負開発の場合は、それほど自明ではありません。

サービス業派は次のように言うでしょう。
「システム請負開発の仕事とは、顧客のニーズを汲み出し、顧客と
相談しながら仕様を詰め、実装し、納品後はメンテナンスするという
一連の作業です。
この複雑で多岐にわたる作業の中で、納品プログラムが占める割合は
大きなものではありません。」

しかし、これに対しては、次の反論が考えられます。

「例えば、注文住宅を建てる工務店もオーダーメイドの仕立屋も、
顧客のニーズを汲み出し、顧客と相談しながら仕様を詰め、実装し、
納品後はメンテナンスしています。
それらも、みんなサービス業なんですか?」


経済学では、商品としての販売価値のあるものを消費財と呼び、
道具として利用価値のあるものを中間財と呼びます。

注文住宅を供給する工務店も、オーダーメイドの仕立屋も、
システム請負開発会社も、契約当時に仕様が存在した中間財を
製造して納品しています。

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[製造業かサービス業か] 「製造業である」という主張も健在
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「我々は中間財の製造という『モノ作り』に責任と誇りを持っている。
だから、製造業なんだ」という主張は十分に成り立ち得ます。

例えば、インターネットで検索すれば、下記のような記事が幾つも
出てきます。


・日本総合システム株式会社のホームページより
> 当社はソフトウェア業界で「真の物創りのできる企業」として確固たる
> 地位を占めることを目指しています。一般にはソフトウェア産業は
> サービス業と言われますが,当社は製造業と考えています。
> ( http://saiyou.nssys.co.jp/html/gyoumu-annai.html


・「硬派のホームページ」より
> ソフト産業も、製造業と同じはず。確かに、メーカに属していない
> ソフト開発組織の場合は、産業分類では、サービス業に分類される。
> だが、「もの作り」であることには変わりはない。
> ソフトウェアの設計や開発は、どう見ても「サービス業」ではおかしい。
> 部品のチップや歯車を作るのは製造業で、同じように部品の一つである
> 「ROM」チップに納まるソフトを作る会社(組織)が「サービス業」
> というのはおかしい。
> 製造業であるのなら、製造技術を競う必要がある。
> 製造業でやって来たように、ソフト産業でもそれをやればよい。
> ( http://homepage3.nifty.com/koha_hp/Else/Head0207.html )

 
これらの堂々たる主張にサービス業派は、果たして反論できるでしょうか?

また、パッケージソフトウェア会社は中間財ではなく、消費財を
売っています。
「パッケージソフトウェア会社は製造業ですか?それとも、
サービス業ですか?」という質問に、サービス業派は答えられる
でしょうか?

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[製造業かサービス業か] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・製造業派への反論。
・パッケージソフトは製造業かサービス業か?
・米国ですら、プログラマの給料はパッケージの販売価格で決まっていない。


次号は、11月28日発行予定です。

乞うご期待!!

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