永久運動の設計

June 12, 2006

取締役と執行役員

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第131号 2006/6/12
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] ほとんどの会社で取締役会は機能していない
▼ [永久運動の設計] 業務執行取締役
▼ [永久運動の設計] 執行役員
▼ [永久運動の設計] ライブドアには業務執行取締役は存在しない
▼ [永久運動の設計] ライブドアでは取締役会は機能していなかった
▼ [永久運動の設計] 関連するバックナンバー
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号では、取締役と取締役会について解説します。

「永久運動の設計」シリーズに分類します。

「永久運動の設計」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_forever.html を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[永久運動の設計] ほとんどの会社で取締役会は機能していない
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取締役会の機能は下記の二つです。

(1)監督機能:執行機関(代表取締役)を監督する。

(2)決定機能:会社の重要事項を決定する。
 尚、法律で定められている取締役会の主な専決事項は次の4つです。

 ・重要な財産の処分、譲り受け
 ・多額の借財
 ・重要な使用人の選任、解任
 ・重要な組織の設置、変更、廃止


しかし、大企業でも中小企業でも、取締役会が、執行機関(代表取締役・
業務執行取締役・執行役員)とは独立した立場で、上記機能を発揮する
ことは、ほとんどありません。
これは日本だけではなく欧米でも同様です。


> 経営者側の提案する議案の何もかもが、従順な取締役たちによって
> 当たり前のごとく承認される。
> 劇的な倒産を招いたエンロンの経営者たちが突出した事例である。
> 伝統ある有名企業ゼネラル・エレクトリックもまた御多分にもれない。
>
>       (ジョン・K・ガルブレイス著「悪意なき欺瞞」より)


取締役会が機能しない最大の理由は、特に大企業の場合は、企業経営が
複雑で難しすぎるので、取締役会が経営陣を監督したり会社の重要な
問題を判断することが現実的に不可能だからです。

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[永久運動の設計] 業務執行取締役
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取締役会が機能しない二番目の理由は、取締役会が執行機関を監督する
と言っても、実際には取締役会のメンバーが業務執行担当者となって
いる場合が多いからです。

業務執行を兼任する取締役を「業務執行取締役」と呼びます。

大企業でも業務執行取締役は多いですが、中小企業の場合は業務執行を
しない純然たる(本来の)取締役の方が、むしろ珍しいでしょう。

業務執行取締役は、従来は法律上の制度ではありませんでしたが、
新会社法では法律上の制度として認められています。

ここは誤解しやすいところなので強調しておきますが、旧会社法でも
新会社法でも取締役会そのものには執行機能はありません。
「業務執行取締役会」というものは、昔も今もあり得ないのです。
(従来の有限会社や新会社法での「ボードなき会社」では「業務執行
取締役会」はあり得ると言えなくもないのですが、この点については
説明を割愛します。)

「業務執行取締役」とは「取締役会」の一部ではなく、執行機関の
一部です。

肩書きが「取締役副社長」「専務取締役」「常務取締役」である
人たちは、明らかに業務執行取締役です。
しかし、肩書きが「取締役」でも実態としては業務執行取締役である
場合が多いです。

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[永久運動の設計] 執行役員
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業務執行取締役と似た制度として、執行役員という制度があります。

執行役員は企業側が工夫して作り上げてきた自主的な制度であり、
従来は法律上の制度ではありませんでしたが、新会社法では「執行役」
という名称で明確に認められています。

執行役員制度が考え出された理由は、業務執行取締役という制度には
次のような弊害があると考えられるようになってきたからです。


> たとえば、「工業用地買収の件」の例で、取締役会から一任された
> 業務執行取締役が、候補地を探し出し、売主の内諾も得て、取締役会
> の承認決議を求める場合を考えてみましょう。
> この場合、業務執行取締役は「工業用地買収の件」の提案者ですから、
> 「ここまで来た以上、なんとかして認めてもらいたい」と思うのが
> 当然です。
> けれども、その立場は「その土地は会社が求める土地として本当に
> 妥当なのか」を「ボードの一員」として改めてクールに判断する
> 取締役の立場と必ずしも一致しません。
> そこで、用地買収の決定機能、監督機能を担当する取締役と、執行を
> 担当する執行役員とを最初から分けたらよいのでは、ということに
> なったのです。
>
>            (中島茂氏著「取締役の法律知識」)


つまり、「監督する側とされる側とが同一人物なら、判断が甘くなる
から、取締役と執行担当者は別人であるべきだ」という主張です。
立場に着目した分離論と言えます。

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[永久運動の設計] ライブドアには業務執行取締役は存在しない
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これに対し、能力に着目した分離論と呼べるものもあります。

「取締役に要求される能力と執行役員に要求される能力とは異質だから、
取締役と執行担当者とは別人であるべきだ」という主張です。


> プレイングマネージャーとマネージャーというのは、執行役員と
> 取締役の違いにもつながってくる。目の前に横たわっている仕事を
> 遂行する能力が高いということと、経営全体を総合的に判断する
> 能力というのは、イコールではない。自分の事業範囲しか見られない
> 人間は、取締役には決してなれない。
> わが社では、執行役員と取締役を明確に分けている。
> 執行役員には経験や実力に優れている人物を配置し、取締役には
> 参謀的な人間を入れている。しかも取締役は経験ではなく、ビジネス
> センスや発想が重視されるポジションだから、年齢もできれば
> 若い方がいい。
>
>      (「堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方」より)


「わが社では、執行役員と取締役を明確に分けている」が本当だと
すれば、ライブドアには業務執行取締役は存在しないはずです。

そして、ライブドアの組織図を見てみると、確かに「取締役副社長」
「専務取締役」「常務取締役」などは存在しません。
( http://corp.livedoor.com/company/organization.html 参照)

証券取引法違反で起訴された宮内亮治氏や熊谷史人氏も単なる「取締役」
でした。

また、平松社長は、執行役員社長であり、代表取締役社長では
ありません。
そして、事業本部ごとに執行役員副社長がいます。

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[永久運動の設計] ライブドア平松社長は取締役ではない
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取締役に要求される能力と執行役員に要求される能力とは異質である
という堀江氏の主張には、私も賛同します。

堀江氏の主張の中で、さらに私が面白いと感じた点は次の部分です。

・取締役には参謀的な人間が向いている。
・取締役は経験ではなく、ビジネスセンスや発想が重視される。

一般には、取締役会は監督機関なので、取締役は経験豊富でバランス
感覚のある人が適しているとされています。

しかし、堀江氏が持つ取締役のイメージは、斬新な発想で事業を
企画するアイデアマン、参謀、策士、策略家です。
逮捕前の宮内亮治氏のように・・・。

冒頭で、取締役会の機能には、監督機能と決定機能があると述べました。
法律家が描く取締役会像は監督機能が強調される傾向があるのに対し、
堀江氏の描く取締役会像は極端に積極的な決定機関です。
私はこれ自体は悪くないと思っています。むしろ評価しています。

それでは、ライブドアでは、取締役会は機能していたのでしょうか?

やはり、機能していなかったのです。
監督機能が全く存在していなかったのです。

宮内亮治氏や熊谷史人氏は、代表取締役である堀江氏も取締役としての
自分自身も監督することができませんでした。
ライブドア事件は、取締役会が機能しなかったが故に発生したという
点では、エンロン事件と同じなのです。

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[永久運動の設計] 関連するバックナンバー
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第29号「会社法の主要な登場人物」
http://www.kei-it.com/sailing/29-040621.html

第32号「株式会社の基本形」
http://www.kei-it.com/sailing/32-040712.html

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

技術系:
・グーグルの衝撃
 (本を読むこと、ネットで読むこと)
・OSS(オープンソースを持ち上げる人々、オープンソースの実態)
・Linux台頭とSUN
・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

法務系:
・コンプライアンス
・取締役と執行役員

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、6月19日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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March 20, 2006

採用が事業モデルを決める

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第119号 2006/3/20
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 急速に深刻化するIT技術者不足
▼ [永久運動の設計] IT技術者不足なのに単価は上がらない
▼ [永久運動の設計] 採用の側からの事業再構築
▼ [永久運動の設計] MS日本法人が7月にサポート料を値上げへ
▼ [永久運動の設計] オープンソースの導入が急速に進展 他
▼ [永久運動の設計] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号は、日経コンピュータ2006年3月20日号
( http://itpro.nikkeibp.co.jp/NC/index.html ) の中で、
私が面白いと感じた記事について、コメントします。


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[永久運動の設計] 急速に深刻化するIT技術者不足
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○急速に深刻化するIT技術者不足

> IT技術者不足が、この1年で急速に深刻化している。
> 本誌が2月末から3月上旬にかけて実施した緊急調査では回答した
> IT企業の70%が、過去6カ月間に技術者不足を経験。
> そのうちの67%が、昨年4月以降に不足の傾向が顕著になったと
> 答えている。 ・・・(中略)・・・
> 特に、金融、通信、運用、組み込みの技術者不足が顕著。・・・


日経コンピュータは、技術者不足の原因として下記の3つを上げています。
・最大の原因は、金融機関のIT投資の増加。
・業績が好調な製造業大手をはじめ、さまざまな業種でIT投資が増えている。
・ユーザ企業が自社システム部門再強化に乗り出している。
 そのため、IT業界からユーザ企業のシステム部門に転職する技術者が
 増えている。

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[永久運動の設計] IT技術者不足なのに単価は上がらない
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それほど技術者不足が深刻なら、普通に考えると、需要と供給の関係で、
IT技術者単価が上昇するはずです。
しかし、日経コンピュータは、一概に上がっていないことも指摘しています。

> 自社のIT技術者の単価は、「上がった」と答えた企業は5%にとどまった
> のに、9%の企業が「下がった」と答えている

ユーザからの価格引下げ要求が依然として根強いため、単価は逆に
下がっているのです。

但し、協力会社への支払い単価は上昇傾向です。

> 仕事を依頼するパートナー企業のIT技術者に支払う単価が上がった、
> と答えた企業が36%に達した


これは私の実感とも一致しています。


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[永久運動の設計] 採用の側からの事業再構築
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現在、大手も中小もソフトウェア会社は、次のような悩みを抱えています。

・技術者を採用できない。(中途も新卒も)
・採用コストがかかる。(採用広告費はほとんどドブに捨てることになる。)
・採用しても定着率が悪い。
・協力会社の技術者単価は上がっているので、協力会社に頼ると採算が
 取れない。

参考ページ:
 第96号「定着率が悪く、中途採用も難しい」
  http://www.kei-it.com/sailing/96-051010.html 

 第45号「中小企業の中途採用の現状」
  http://www.kei-it.com/sailing/45-041018.html


このような状況の中で、中小ソフトウェア会社が採るべき戦略は
次のどちらかです。

(1)未経験者採用を前提としたモデルを確立する。
(2)人が増えないことを前提としたモデルを確立する。

(1)(2)の戦略のどちらを採るかによって、営業、人事などの基本方針が、
正反対なくらい大きく異なります。
慶は、サービス系は(1)、開発系は(2)でいきます。


(2)の場合、人が増えなくても、昇給は必要なので、人件費は上昇します。
したがって、次のどちらかが実現できないと、事業は成り立ちません。

・人数は同じでも売上は上げる
・売上が横ばいなら、人件費以外の経費を削減する。

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[永久運動の設計] MS日本法人が7月にサポート料を値上げへ
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「IT技術者不足」以外に面白かった記事をいくつか上げます。


○MS日本法人が7月にサポート料を値上げへ

アップグレード権付きのサポート契約「ソフトウェア アシュアランス(SA)」
の料金を約3割値上げするそうです。

この記事は下記の号と合わせて読めば、背景が分かります。

第109号「パッケージ・ソフトが置かれている状況」
http://www.kei-it.com/sailing/109-060109.html
> 現在、パッケージ・ソフト収入の源泉は、インストール・ベースの
> ライセンス料金から、保守サービス料金へと移っている

第104号「独占企業は自由にサポートを打ち切る」
http://www.kei-it.com/sailing/104-051205.html

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[永久運動の設計] オープンソースの導入が急速に進展 他
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○オープンソースの導入が急速に進展 ミドルウェアの利用が拡大

> ユーザ企業・公共の情報システムにおけるOSSの導入率は48.8%となった。
> 前回調査(※)の32%からこの1年間で16.8ポイントも上昇しており、
> OSSの導入が活発に進んでいる。

このあたりは、第107号「インフラの世界」
http://www.kei-it.com/sailing/107-051226.html
を読めば、背景が分かります。


○グローバル経営に飲み込まれた決算発表

IBMは多国籍企業経営からグローバル統治に変わり、日本IBMには
地域本社的な機能は無くなったという内容の記事です。

第46号「超巨大企業の時代へ」
http://www.kei-it.com/sailing/46-041025.html
と関連しています。


○「2年以内に抜本的改革」動き出す日本の経営者

米IBMが実施した世界各国のCEO800人へのインタビューによると、
76%のCEOが「新しいアイデアを顧客ないしビジネスパートナーから得る」
と答えたそうです。
「コアになるアイデアは個人からしか生まれない」のも事実
http://www.kei-it.com/sailing/85-050725.html 参照)ですが、
「商売になるアイデアは、顧客と接することからしか生まれない」
のも事実です。
営業の大切さを感じさせる文章でした。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主

技術系:
・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー

外国系:
・中国は脅威か?


次号は、4月3日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
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March 13, 2006

日銭を稼ぐことが第一目標

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第118号 2006/3/13
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] アイデア系ベンチャーは打ち上げ花火
▼ [永久運動の設計] 日銭を稼ぐことが第一目標
▼ [永久運動の設計] 「インターネットビジネス成功の法則」セミナー
▼ [永久運動の設計] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号は、事業全体の話なので「永久運動の設計」シリーズに分類します。

「永久運動の設計」シリーズを最初から読みたい方は、
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[永久運動の設計] アイデア系ベンチャーは打ち上げ花火
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去年1月、某ソフトウェア業界紙(毎月3回発行、発行部数1回10,000部)に、
慶が『「注目の開発手法」Webシステム開発のコスト・工期を従来の約1/2に』
として紹介されたことがあります。

先週、その業界紙の記者が、1年ぶりに慶に取材に来ました。


その業界紙には、「ベンチャーがこんな新商品、新サービスを
始めました!」という記事が多いので、私は記者に次のような
質問をしてみました。

「毎号、アイデア系ベンチャーの記事がたくさん載っていますが、
こういったアイデア系ベンチャーはその後続いているんですか?」


記者の答えは次のようなものでした。

「取材した会社の名刺の束が社内にあって、今回、その名刺をもとに、
多くの会社に再取材の依頼の電話をしました。
しかし、電話が通じない、電話の移転先が分からないという会社が
非常に多かったです。
ベンチャーはほとんど打ち上げ花火のようなものです。」

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[永久運動の設計] 日銭を稼ぐことが第一目標
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堀江貴文氏も昔の著作ではまともなことを言っています。
「堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方」によると、
オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)起業当時は、「とにかく日銭を
稼ぐことを第一目標にして、ウェブ制作やホスティングなどの事業に
精を出した」そうです。

> 当時は新しいビジネスモデルがもてはやされ、他社が思いつきもし
> なかったような新しいサービスをいち早くスタートさせるのがカッコ
> いいと思われた時代だったから、ウェブ制作やホスティングなどの
> 業務はいかにも地味で、カッコ悪かった。
> でも流行の最新ビジネスモデルが一銭のカネも生み出さず、コストを
> どんどん吸収してベンチャー企業の経営を悪化させていくのを横目で
> 見ながら、ウェブ制作やホスティングはきちんと毎日毎日、安定した
> 収入を上げ続けてくれたのである。
>
>      (「堀江貴文のカンタン!儲かる会社のつくり方」より)

周りを見渡しても、カッコいいことを言っていたベンチャーは
ほとんど潰れています。

その理由については、次の号が参考になります。
・第85号「成功確率が低く、成功しても寿命が短い」
 http://www.kei-it.com/sailing/85-050725.html

・第107号「今週号は「発明」がテーマ」
 http://www.kei-it.com/sailing/107-051226.html


カラに閉じこもっている会社の方がかえって長続きしています。
しかし、カラに閉じこもってばかりいたら、長期的には衰退するので、
日銭をきっちり稼いだ上で、その利益の中から、新規事業への
投資を地道に行っていかなければなりません。

投資すべき新規事業を考えるにあたって、下記のセミナーが参考
になるかもしれません。

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[永久運動の設計] 「インターネットビジネス成功の法則」セミナー
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慶が所属している業界団体「羅針盤21」http://r-21.jp/ で
下記のセミナーを開催します。

【テーマ】インターネットビジネス成功の法則
【日 時】平成18年3月20日(月)13:00~17:00    
【場 所】トスラブ赤坂 会議室
【内 容】
1.インターネットビジネスを展開するための基本的な考え方について
2.インターネットビジネス上での市場調査について
3.ターゲットユーザー(本当のお客様)について
4.ホームページの活用方法について
5.商品(サービス)を販売する場所の選択について

【講師】
マックシステム株式会社
セールス&マネージメント部 企画推進室 ウェブビジネスコンサルタント 
 落合 和義 氏


最初は「SEO対策」というテーマで落合講師に依頼しましたが、
「インターネットビジネスの基本を理解しないとSEO対策は意味がない」
という講師からのアドバイスがあり、上記内容となりました。

例えば、Yahoo!とGoogleのビジネスモデルの比較などもあり、私も
期待しています。


本来なら羅針盤21会員しか参加できませんが、非会員のために
5名の枠を用意しました。

本メルマガの読者は、無料でご招待いたします。
また、セミナー後の懇親会にも無料でご招待いたします。

聴講希望の方は下記までメールください。
office@kei-ha.co.jp

枠が5名なので、お早めにお申し込みください。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主

技術系:
・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー

外国系:
・中国は脅威か?


次号は、3月20日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年3月6日現在、460名です。


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July 25, 2005

M&Aが大好きな会社

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_/_/_/_/_/_/_/  ソフトウェア業界 新航海術  _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第85号  2005/07/25
  ▼  まえがき
  ▼  [永久運動の設計] M&Aが大好きな会社
  ▼  [永久運動の設計] コアになるアイデアは個人からしか生まれない
  ▼  [永久運動の設計] 成功確率が低く、成功しても寿命が短い
  ▼  [永久運動の設計] インターネットは規模の利益が大きく作用する
  ▼  [永久運動の設計] M&Aする側の論理・される側の論理
  ▼  [永久運動の設計] 次回以降の予告

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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

「永久運動の設計」シリーズは、ソフトウェア会社の最適な組織
について探っていくシリーズです。

「永久運動の設計」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_forever.html を参照してください。

今週号は金持ち会社がM&Aをする理由を解説します。

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  [永久運動の設計] M&Aが大好きな会社
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先月GMOメディア社 http://www.gmo.jp/ を訪問しました。
システム部門の方とお会いし、今後慶が取引可能かどうか打ち合わせ
しました。

その際、GMOメディア社の担当者から頂いた名刺の裏には、GMOグループが
行っている事業のロゴが数十個印刷されていました。
「GMOグループ概要」( http://www.gmo.jp/profile/group_outline.html )
に載っているロゴの全てです。

これらの事業はGMOインターネット社が自前で立ち上げたものではありません。
全て会社買収( M&A:Mergers and Acquisitions )で手に入れたものです。

「うちはM&Aが大好きな会社なんですよ」とGMOメディア社のシステム
部門の方もおっしゃっていました。

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  [永久運動の設計] コアになるアイデアは個人からしか生まれない
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楽天、ライブドア、サイバーエージェントなど、上場して莫大な資金を
手にした金持ち会社は皆M&Aが大好きです。
これらの金持ち会社は何故M&Aが大好きなのでしょうか?

それはインターネットビジネスの次のような性格から来ています。

(1)コアになるアイデアは個人からしか生まれない
インターネットビジネスで成功している例として
トクー!トラベルがあります。
通常のインターネットビジネスでは、利用者は無料にして、
企業の側からお金を取りますが、トクー!は利用者から会費を
徴収しています。
ちなみに私もプレミアム会員になって、会費を払っています。
会員から金を取って成功している例を、私は他に思いつきません。
トクー!はよくできたビジネスモデルなのです。

このような優れたビジネスモデルのコアになるアイデアは、
個人の才能、ノウハウ、人脈、さらには運からしか生み出せません。
大企業が金と時間をかけたら生み出せるというものではないのです。
ライブドアがいくら金を持っているからといっても、自前では生み
出せないのです。
組織が大きくなれば、逆に、新規なアイデアは生まれなくなって
しまいます。

> ほとんどの大企業で、新規事業開発室が新規事業の開発に成功した
> ためしがない。
>          (森永卓郎著「リストラと能力主義」より)

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  [永久運動の設計] 成功確率が低く、成功しても寿命が短い
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(2)成功確率が低い
我々はAmazon.comやトクー!のようにヒットして利益を上げている
ビジネスしか目にすることがありません。
しかし、我々が目にすることすらなく、消えていったビジネスの方が
はるかに多いのです。
ヒットすれば莫大な利益を手にできますが、実際には、ヒットせず
開発コストも回収できない投資のほうが圧倒的に多いのです。

> 欧米というモデルがあり、技術開発の目標がはっきりしている場合
> には、どの分野に投資をして何をやればよいかがはっきりしていた。
> しかし、いまは何を開発すれば市場が受け入れるのかが、まったく
> 見えない時代である。
>          (森永卓郎著「リストラと能力主義」より)

(3)ビジネスの寿命が短い
上述のように成功確率は低いのに、その成功の寿命は短いのです。
ブログがはやったかと思うと、次はソーシャルネットワークです。
トクー!だって5年後も同じ形で存続しているとは思えません。
インターネットビジネスはアイデアがベースになっているだけに、
すぐにマネされて、いずれは「当たり前」のものになってしまい、
利益を生み出せなくなってしまうのです。

> 産業資本主義の時代において、製鉄会社が建設した溶鉱炉、
> 造船会社が建設した造船所、石油精錬会社が建設した製油施設は、
> 20年も30年も利益を生みだし続けてくれます。・・・(中略)・・・
> これに対して、ポスト産業資本主義の利益の源泉である「違い」の
> 耐用年数は、短い。
>           (岩井克人著「会社はだれのものか」より)

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  [永久運動の設計] インターネットは規模の利益が大きく作用する
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(4)インターネットは規模の利益が大きく作用する
一方、インターネットは規模の利益が大きく作用する世界でもあります。
アイデアは個人にしか生み出せなにのに、普及させる段階では莫大な
資金が必要となります。
ヒットする目処がついたら、模倣者に追いつかれないように全速力で
走り抜けなければならないのです。
ここで、組織力、資金力が必要となります。
個人や小さな企業にはこれがありません。

(第48号「巨大にならなければならない理由」
http://www.kei-it.com/sailing/48-041108.html 参照。)

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  [永久運動の設計] M&Aする側の論理・される側の論理
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そこでM&Aが登場します。

M&Aをする金持ち会社にしてみれば、新規ビジネスを一から自分達で
作り上げるよりも、成功する兆しを見せている小さな会社を大金
(彼らにしてみれば「はした金」)を出して、買収してしまった方が
楽なのです。

また、買収される企業にしても、「自前で普及させるのは大変だし、
(彼らにとっては)夢のような大金でアイデアを売れるなら、その方が得」
という思惑が働きます。

しかし、金持ち会社がM&Aに成功し、豊富な資金力、組織力で
ビジネスを軌道に乗せたとしても、上述(3)のようにビジネスの寿命が
短いために、そのビジネスでいつまでも利益をあげられるわけでは
ありません。
次から次へと新しいサービスを立ち上げていかなければならないのです。
したがって、次から次へとM&Aを繰り返さなければならないのです。

第84号では、「今後は人材登録型の業務請負をやる大手派遣会社とそれに
登録している個人事業主が、ソフトウェア業界の大きな勢力になっていく
であろう」という予測を述べました。

今週号でお話したことは、システム開発そのもののノウハウで生きていこう
としているソフトウェア会社にとっては、直接的には関係のない世界です。
システム開発そのもののノウハウは時代によってあまり変わるものでは
ないからです。
(第12号「ソフトウェア技術者の幸福:難しさが市場を守る」
http://www.kei-it.com/sailing/12-040223.html 参照。)

しかし、「金持ちをますます金持ちにする」デフレ経済のもとで、
M&Aする側の金持ち会社はますます強大になり、日本の経済、社会、
そしてソフトウェア業界にも大きな影響を与えるようになってきています。
システム開発そのもののノウハウで生きているソフトウェア会社も
彼らと付き合う機会は増えてくるはずです。

また、独自サービスやパッケージ商品で生きていこうとするソフトウェア
会社にとっては、今週号でお話した世界は近しい世界です。

・コアになるアイデアは個人からしか生まれない。
・成功確率が低く、成功しても寿命が短い。
・M&Aと親しい関係にある。

という点において・・・。

慶としてもこれまでのノウハウ・資産を生かして、様々な独自
サービスを立ち上げていきたいと考えています。

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  [永久運動の設計] 次回以降の予告
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次号以降で下記のことを書いていきます。

・創造的な技術者が個人的な能力で牽引する会社は短期的には成功するが、
 長期的には息切れする。

・「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」方式の会社が長期的には成功する。
 でも、それをやるためには、個人ではなく組織が必要である。

・技術の標準化が引き起こす人材流動化は正社員の給与体系にも影響を
 与える。成果主義型報酬体系とは正社員の社内個人事業主化である。

・M&Aは成功するか?

次号は、8月1日発行予定です。

乞うご期待!!

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  本メルマガについて
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July 12, 2004

株式会社の基本形

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第32号 2004/07/12
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 株式会社の基本形
▼ [永久運動の設計] 銀行
▼ [永久運動の設計] 業務執行兼任取締役・執行役員
▼ [永久運動の設計] 「新航海術」のホームページ
▼ 次回以降の予告

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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。


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[永久運動の設計] 株式会社の基本形
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通常、会社の組織図で表されているものは「システム開発部」「営業部」
「総務部」「パートナービジネス推進部」などの部門です。
しかし、これらは会社の執行機能に含まれる一単位にすぎません。

これらの部門の背後には「図:株式会社の基本形」(添付ファイル参照)
で表されている様々な役者が存在します。

中小企業の場合、「図:株式会社の基本形」ほどには機能と組織が
分化されていません。代表取締役が株主であり、取締役は業務執行
兼任取締役でもあるでしょう。

しかし、株式会社という仕組みが健全に作動し、永続的に成長して
いくためには、これらの構成要素を理解することが不可欠です。
たとえ兼務しているとしても、一人二役であることを意識しながら
行動することが必要です。

個人企業から中小企業、大企業となるとは、これらの機能が分化して
いくことであり、この分化がうまくいかないと、会社は停滞し、やがて
衰退してきます。

商法上の機関としては、株主総会、取締役会、代表取締役、監査役の
4つがあり、これが株式会社の骨格を形作っています。
これらについては第29号、第31号で解説したので、今回はそれ以外の
構成要素について解説します。


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[永久運動の設計] 銀行
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会社にとって銀行は単なる取引先以上の存在です。
現実に必要な運転資金の大部分は株式ではなく、銀行からの借り入れで
賄われています。
銀行は会社に融資をし利子を取るので、銀行から見たら融資は投資です。
今の慶に対する最大の投資家は株主ではなく銀行です。

「企業者はけっして危険の負担者ではない。・・・もし事が失敗すれば、
損失を蒙るのは信用供与者である。」(シュンペーター)


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[永久運動の設計] 業務執行兼任取締役・執行役員
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株主総会は取締役の選任・解任はしますが、経営には携わりません。
取締役会は業務執行の決定と監督は行いますが、実際の業務執行は
行いません。
代表取締役は業務執行機関ですが、取締役会は業務執行機関では
ないのです。

代表取締役から委任されて、業務執行も行う取締役が業務執行兼任
取締役です。

代表取締役が業務執行を従業員に委任した場合は、その従業員は
「執行役員」となります。
執行役員は、取締役会の構成員ではありません。
しかし、業務執行会議としての役員会議などの構成員にはなり得ます。

執行役員は取締役と異なり商法で定められたものではないので、
その地位と役割は会社によって異なります。
契約形態が雇用契約なのか委任契約なのかも会社によって異なります。
形式上は雇用契約でも、業務執行兼任取締役と同程度の職務権限を
有している場合は、実質的には委任契約だと考えてよいでしょう。

委任契約は雇用契約と異なり、任せられた範囲内で大幅な自由裁量が
認められています。
その代わり、任せられた部門の業績に責任を持つことになります。

一つの部門に責任を持てる執行役員が従業員の中から次々と誕生する
ことが、慶が発展するためには不可欠です。


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[永久運動の設計] 「新航海術」のホームページ
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「ソフトウェア業界 新航海術」のホームページを立ち上げました。
URL: http://www.kei-it.com/sailing/

ここでバックナンバーを見ることができますし、全文検索もできます。
全文検索はファーストサーバのサービスを使っていますが、
そのサービスはnamazuを使っています。

「ソフトウェア業界 新航海術」は、慶の社員と個人事業主に
対するクローズされたメルマガでしたが、今後はオープンにして
いきます。
オープンを基本とし、クローズにしたい情報は特別号として、従来
どおり社員と個人事業主のみに発行します。

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次回以降の予告
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次号は、7月19日発行予定です。乞うご期待!!

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発行:
株式会社 慶
 代表取締役 蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp

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July 05, 2004

代表取締役は信任受託者

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第31号 2004/07/05
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 株式会社の設計者が考えたこと
▼ [永久運動の設計] 代表取締役は株主とも会社とも契約していない
▼ [永久運動の設計] 代表取締役は信任受託者
▼ [永久運動の設計] 忠実義務と注意義務
▼ [永久運動の設計] 委任に含まれる信任の要素
▼ 次回以降の予告

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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。


> SE・プログラマは町工場の金型職人と同様、人的資産ですが、
> より汎用的な(組織特殊的ではなく)人的資産です。
>
> 次号ではソフトウェア会社における従業員について考察します。

先週号では上記のように予告しましたが、その前にもう一度会社法に
立ち戻ってみましょう。


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[永久運動の設計] 株式会社の設計者が考えたこと
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株式会社を設計した人はおそらく次のようなことを考えたのでしょう。
(1)多くの株主から資金を集められる仕組みにしたい。
(2)その見返りとして株主に利益が還元されるような仕組みにしたい。
(3)しかし、株主に負債は負わせたくない。
(4)つまり、会社は株主にとっては、共同購入した鶏のようなもので、
 卵(配当)を生んでくれさえすればよい。鶏の飼育(経営)は経営者に
 任せる。
(5)そのために経営者は株主が選択する。

(6)会社資産・負債は株主のものでないと同時に、経営者のものにも
 したくない。なぜなら、もしもそうしたら、
 ・経営者が変わるたびに会社資産の相続問題が起きてしまう。
 ・巨額の負債を経営者個人が負えるものではない。

(7)したがって、会社資産・負債の持ち主は「法人」という「生物
 としては存在しないが法律上は存在する人」にしたい。

このようにして、株主が法人を所有し、法人が会社資産を所有する
という二重構造ができたのです。

株主と法人の二つの起点があり、それによって下記の二つの流れが
あるというところが会社法の面白いところです。
・株主→取締役会→代表取締役
・法人→代表取締役→取締役・従業員・会社資産 

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[永久運動の設計] 代表取締役は株主とも会社とも契約していない
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第29号では、株主と代表取締役との間に委任契約はないことを解説し、
さらに「代表取締役はSUPER-KEIという法人に信任されて、法人の
利益のために仕事をしているのです」と書きました。
いきなり「信任」という言葉が出てきたので分からなかったと思います。

実は株主との間だけでなく、会社と代表取締役との間にも委任契約は
ないのです。

会社と取締役との間には委任契約があります。
通常は委任状を作りませんが、例えば次のように作ることができます。

「株式会社SUPER-KEIは山田一郎に下記事項を委任しました。
 委任内容:株式会社SUPER-KEIの取締役
      株式会社SUPER-KEI 代表取締役 慶太郎」

しかし、下記の委任状には意味がありません。

「株式会社SUPER-KEIは慶太郎に下記事項を委任しました。
 委任内容:株式会社SUPER-KEIの代表取締役
      株式会社SUPER-KEI 代表取締役 慶太郎」

EXCELの循環参照のようなもので、「この委任状で慶太郎に
代表取締役を委任した『代表取締役 慶太郎』はいったい誰に
委任されたのか」という循環が永遠に発生してしまうからです。

選任の手続きは「株主→取締役会→代表取締役」ですから、本来
なら株主総会か取締役会が委任する主体となるのが自然です。
しかし、そうすると株主や取締役会が会社資産・負債の持ち主に
なってしまいます。
それは株式会社の設計者が求めるものではありませんでした。


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[永久運動の設計] 代表取締役は信任受託者
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上記例で慶太郎が株主ともSUPER-KEIとも契約していないとすると、
慶太郎が代表取締役として振舞える理由は何なのでしょうか?

株式会社の設計者は「生物としては存在しないが法律上は存在する人」
を会社資産の所有者としたかったのですが、「生物として存在しない
人」は契約書に署名できません。したがって、契約の主体たり得ません。

しかし、世の中には「契約はできないが、生物的にも法律的にも
存在する人」はいます。
例えば、未成年者や精神障害者や痴呆老人などです。
このような人達の社会的な行為(例えば財産管理)などは「信任」
された後見人が行います。

> 重要なことは、信任とは契約とは異質の概念であるということです。
> たとえば無意識の状態で運ばれてきた患者を手術する医者を考えて
> みましょう。この患者は自分で医者と契約をむすべません。
> だがそれにもかかわらず、救急病棟に詰めている医者は、まさに
> 医者であることによって、患者のために手術を行います。
>      (岩井克人「会社はこれからどうなるのか」より)


慶太郎が代表取締役として振舞える理由は、慶太郎が「私が
SUPER-KEIの信任受託者である」と言い、それを社会が認めたからです。


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[永久運動の設計] 忠実義務と注意義務
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慶太郎が「私はSUPER-KEIから信任され、会社の経営を任された」と
言った瞬間に、慶太郎には下記の義務が生じます。

忠実義務:自己の利益ではなく、信任関係の相手の利益にのみ忠実に
     仕事を行うこと

注意義務:それぞれの立場に要求される通常の注意を払って仕事を
     行うこと

また、慶太郎は信任されたつもりになっていますが、実際には
SUPER-KEIの利益にならないことをしているかもしれません。
そのために株式会社の設計者は下記の仕組みを用意しました。

・株主代表訴訟
・取締役会による監督
・監査役による監督

これらの仕組みは、代表取締役に「貴方は会社から信任されていない」
「貴方は信任受託者としての義務を果たしていない」と宣告する
仕組みなのです。

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[永久運動の設計] 委任に含まれる信任の要素
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上述のとおり、無意識の状態で運ばれてきた患者と手術する医者との
関係は「信任」です。
一方、意識のある患者の同意を得て医者が手術する場合は、患者
と医者との関係は「委任契約」です。

しかし、患者は素人で医者は専門家です。
いくら医者が丁寧に説明しても、また、患者の同意を得たとしても
患者としては医者を信頼して任せているのです。

> 一般に、形式的には契約関係であっても、当事者の間で知識や能力に
> 大きな格差があるかぎり、そこでは信頼によって一定の仕事を任せる
> という要素が必然的に入り込んでくるのです。
>      (岩井克人「会社はこれからどうなるのか」より)

そして、そこでは信任と同じように、「忠実義務」と「注意義務」が
生じるのです。

例えば、会社と取締役との契約は委任です。
取締役との委任契約の主な内容は、下記のとおりです。

(1)取締役会のメンバーとして
・代表取締役の選任・解任
・重要な財産の処分
・業務執行の決定
・業務執行の監督
(2)業務担当取締役としての業務執行

取締役は、会社から経営の専門家として信頼され、自由裁量を
認められ、上記を任されているのですから忠実義務と注意義務を
もって上記行為を行わなければなりません。

また、「ソフトウェア業界 航海術」で、技術者の常駐作業は
「労働者派遣」ではなく「準委任」であることを説明しました。
準委任契約は派遣契約よりも自由裁量が認められた契約です。
任せるほうと引き受けるほうとの信頼関係が基礎となっている
契約です。ここでも同様に忠実義務と注意義務が生じます。

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次回以降の予告
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「代表取締役は株主とも会社とも契約していない」「代表取締役は
信任受託者」などは、一般の会社法の本に書かれていることは違います。

しかし、このように考えると株式会社というものが鮮明に立体的に
見えてきます。


次号は、7月12日発行予定です。乞うご期待!!

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発行:
株式会社 慶
 代表取締役 蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp

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June 28, 2004

組織特殊的な人的資産

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第30号 2004/06/28
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 初期の製造業における従業員
▼ [永久運動の設計] 組織特殊的な人的資産
▼ [永久運動の設計] 終身雇用と年功序列の慣行
▼ 次回以降の予告

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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。


第29号は今読み返しても内容の濃い号でした。
会社法の本を数冊読むよりも会社法の本質が理解できる内容となって
いると思います。

しかし、会社法というものが元々そういうものなのですが、株主、
代表取締役、取締役、監査役についてのみ書かれており、会社の
もう一方の主役である従業員については全く言及しませんでした。

今週号は従業員について考えてみます。
ここで言う「従業員」には、雇用契約で働いている社員(正社員、
契約社員)だけでなく、請負契約で働いている個人事業主も含まれ
ています。


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[永久運動の設計] 初期の製造業における従業員
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製造業の場合、高価な機械が中心にあり、従業員はそれに群がる
ように存在しています。

初期の製造業では、「機械とその下で単純労働をする労働者」という
図式でした。
そこでは、労働力は資源(リソース)であり、交換可能な部品や
製品の原材料と同じように考えられていました。
株式会社という仕組みが考え出された時代はそのような時代でした。
したがって、会社法では従業員のことは全く問題にしていないのです。


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[永久運動の設計] 組織特殊的な人的資産
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しかし、機械が高度化するにつれて、それを操作する熟練工や
専門家が必要になってきます。
また、組織が複雑になるにつれて、財務や法務や人事の専門家も
必要になってきますし、中間管理職も必要になってきます。
また、根回し、気配りに長けた人材も必要になってきます。

これらの、人材は会社にとって極めて重要な資産ですが、それは
貸借対照表には直接的には表現されない資産です。
いわゆる人的資産です。

以前NHKで日本の製造業の空洞化を憂いた番組を見たことがあります。
その中で、町工場の金型職人が取り上げられていました。
その熟練職人は手で1000分の1ミリの差を感じられるそうです。
まさに日本の宝とも言える職人芸です。
実際に携帯電話の金型作りでこの職人芸は活用され、数年前は仕事が
殺到していたそうです。日本の製造業の強さを町工場の職人の技が
支えていたのです。
ところが、今は製造が海外に移転し、その金型の熟練職人が勤めて
いる町工場の仕事も激減し、困っているという内容の番組でした。


この職人の技は会社にとって資産です。
しかし、機械設備のような物的資産と違って、その職人と切り離せ
ないものです。これが「人的資産」と言われるゆえんです。
また、その職人の技はその町工場の仕事と環境と設備の中で最も
高く評価されます。
これが「組織特殊的な人的資産」と言われるゆえんです。
いわば「つぶしのきかない人的資産」なのです。


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[永久運動の設計] 終身雇用と年功序列の慣行
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上述の金型職人は極めて高度な技能を持ちながら、現在仕事が無くて
困っています。
これは彼が高度な技能と同時に「専門家の弱さ」(第27号参照)も
身に付けてしまったということです。

> 専門家というものは、「たった一つの産業でしか通用しない技能を
> 習得するために生涯を捧げる」人たちです。
> そして人生をかけて獲得したその技能は、ほかの産業では通用
> しません。
>                     (第27号より)


熟練工や専門家は会社にとって大切な「人的資産」です。
したがって、会社は彼らを囲い込み、保護しようとします。

一方、熟練工や専門家は自分の人的資産価値がその会社を離れては
評価されないことを知っています。
したがって、自分を最も評価し、守ってくれる会社に愛着を感じ、
忠誠を誓い、会社のために働いたのです。

このようにして終身雇用と年功序列の慣行が生まれました。

注意しなければならないことは、終身雇用と年功序列の慣行の中で
生きている従業員がイメージしている「会社」とは、株主でも
経営者でもありません。生身の人間ではなく、抽象的な法人です。

政治家や国民が変わっても「日本」という国が永続するように、
経営者や株主や従業員が変わっても永続する存在としての法人です。

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次回以降の予告
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SE・プログラマは町工場の金型職人と同様、人的資産ですが、
より汎用的な(組織特殊的ではなく)人的資産です。

次号ではソフトウェア会社における従業員について考察します。

次号は、7月5日発行予定です。乞うご期待!!

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発行:
株式会社 慶
 代表取締役 蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp

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June 21, 2004

会社法の主要な登場人物

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第29号 2004/06/21
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 会社法の主要な登場人物
▼ [永久運動の設計] 株主とは
▼ [永久運動の設計] 株主と代表取締役との関係
▼ [永久運動の設計] 会社法の魅力的で奥の深い部分
▼ [永久運動の設計] 取締役会、取締役、執行役員
▼ [永久運動の設計] 中小企業の実際
▼ 次回以降の予告

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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。

今週号から「永久運動の設計」シリーズを本格的にスタートします。

会社の「お金」の話しをするとき、会計の基本を避けて通れないのと
同様に、会社の「かたち」の話しをするとき、会社法の基本は避けて
通れません。
したがって、今週号では会社法の基本をお話しします。


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[永久運動の設計] 会社法の主要な登場人物
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会社法での主要な登場人物は株主、代表取締役、取締役、監査役です、

会長、社長、副社長、常務、専務、部長、課長、などの役職は
たとえば「当社では○○とはこのような役職です」と勝手に
決めることができます。

しかし、株主、代表取締役、取締役、監査役の役割と権限は
会社法によって定められており、会社独自に変更することは
できません。
法律で決まっているから守らなければならないというよりも、
株式会社という仕組みや原理から、それらの役割と権限が必然的に
導き出されるのです。

添付ファイルに会社法のエッセンスが示されています。
この絵を理解すれば、会社法の本を何冊読んでも分からないことが
理解できます。


「図1:個人事業主」は、オーナーと経営者がいる下記のような
個人事業主を想定しています。
・慶太郎が個人事業として八百屋YAO-KEIを経営していました。
・慶太郎は他の仕事を立ち上げるため、弟の慶次郎にYAO-KEIの
 経営者となってもらいました。

「図2:株式会社」は株式会社SUPER-KEIを表しています。


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[永久運動の設計] 株主とは
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YAO-KEIで売られているリンゴは事業主である慶太郎のものです。
慶太郎はそのリンゴを売ってもいいし、自分で食べてもいいのです。

一方、SUPER-KEIで売られているリンゴの所有者はSUPER-KEIという
法人です。
株式を100%所有している株主でも、SUPER-KEIで売られている
リンゴを勝手に食べることはできません。
株主は会社資産の持ち主ではありません。

今度は借金について考えてみましょう。
YAO-KEIの借金が膨らみ、YAO-KEI名義の資産を全て処分しても
足りないなら、慶太郎は自分の貯金も持ち家も全て処分して借金を
返さなければなりません。

一方、SUPER-KEIの場合は、SUPER-KEI名義の資産を全て処分し、
尚且つ借金が残っていても、株主は自分の資産を差し出す必要は
ありません。
それによって、会社が倒産しても株主は自分が出資した株式を
失うだけです。

> 船が行方不明になった場合、船員は命を落とすが、金持ちが
> 受ける損害はその航海に出資したお金だけにとどめることができる。
(ロバート・キヨサキ「金持ち父さん 貧乏父さん」より)


株主は会社資産の持ち主でないのと同様、負債の持ち主でもないのです。
負債の持ち主はSUPER-KEIという法人です。

つまり、株式会社にあっては、株主の資産・負債と会社の資産・
資産とは厳格に区別されているのです。

しかし「会社は株主のモノ」という主張も間違いではありません。
株主は下記の権利を所有しているという意味で、会社を所有して
いるのです。
・株主総会における議決権
・利益にたいする配当の請求権


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[永久運動の設計] 株主と代表取締役との関係
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YAO-KEIの経営者である慶次郎は慶太郎の代理人であり、太郎と次郎
との契約は委任契約です。

 「私は慶次郎を代理人と定め、下記事項を委任しました。
  委任内容:YAO-KEIの経営全般       慶太郎」

という委任状による契約です。

それでは、株主と代表取締役との間に委任契約があるのでしょうか?

株主が株主総会で取締役を選任し、取締役会が取締役の中から
代表取締役を選任します。
このことを考えると、代表取締役は株主の代理人であるかのように
思ってしまいます。

しかし、株主と代表取締役との間に委任契約はありません。
その理由は下記のとおりです。

・YAO-KEIの場合は慶太郎の意思で経営代理人を置くことも置かない
 こともできるのに対し、SUPER-KEIの場合は株を100%所有している
 株主でも、代表取締役そのものを無くすことはできません。
 株主の意志によって代表取締役が存在するのではなく、
 SUPER-KEIが法人であるが故に代表取締役が存在するのです。

・慶次郎の経営は慶太郎の代理であり、慶次郎の行為は委任された
 範囲内である限り慶太郎の行為であると見なされるのに対し、
 SUPER-KEIの代表取締役の行為は株主の行為とは見なされません。
 法人としてのSUPER-KEIの行為と見なさます。


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[永久運動の設計] 会社法の魅力的で奥の深い部分
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株主と代表取締役との間に委任契約が無いとすると、代表取締役は
誰に頼まれて仕事をしているのでしょうか?

SUPER-KEIという法人に信任されて、法人の利益のために仕事をして
いるのです。
しかし、SUPER-KEIという法人が代表取締役に頼んでいるところを
見た人がいるでしょうか?いるわけがありません。
法人というものは形の無い抽象的存在だからです。

実は、この部分は「代表取締役とは会社から信任によって、経営を
任せられているヒトである。これは法人という抽象的存在を社会的に
実在させるために不可欠な仕組みなのだ」と言うしかないのです。
代表取締役とは社内の役職ではなく、会社そのものを社会的に実在
させるための機関です。

この仕組みによって、会社は社会的に形を与えられ、会社資産の
所有者になれるのです。
株主は会社負債からの自由を獲得し、積極的な投資活動ができるよう
になります。
その一方で、「会社は株主の意志とは別の独立した意志を持っている」
という主張も出てきます

このあたりが会社法の魅力的で奥の深い部分です。

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[永久運動の設計] 取締役会、取締役、執行役員
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> 注意しなければならないのは、取締役会のメンバーである取締役と、
> その取締役会で選ばれる代表取締役とは、言葉の上ではほんとうに
> 混同しやすいのですが、法律的には厳密に区別されるべきであると
> いうことです。(岩井克人著「会社はこれからどうなるか」)

取締役会の権限は下記の3つです。
・重要な会社の業務を決定し、
・会社を代表して実際に業務を執行する代表取締役を選び、
・代表取締役の職務の執行を監督する。

代表取締役を選んだ後は、代表取締役と執行役員の監督が取締役会の
主な仕事になります。執行役員とは代表取締役から権限を一部委譲
されて、実際に経営を行う役員です。

したがって、取締役会の仕事は代表取締役を選んだ後は、監査役の
仕事に近くなります。このことは下記の事実にも示されています。

> 2002年4月の商法改正では、取締役会の過半数を「社外取締役」
> にし、実際の経営をおこなう執行役員を取締役会と切り離して
> その下に置く、アメリカ型の経営者モデルがオプションとして
> 導入されています。そして、そのようなオプションを選んだ会社
> は監査役を廃止してもよいことにしたのです。
> (岩井克人著「会社はこれからどうなるか」)


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[永久運動の設計] 中小企業の実際
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但し、上記は法律的な建前であり、特に中小企業においては、
株主も代表取締役も取締役も執行役員も未分化です。
監査役は大企業でも中小企業でも形骸化しています。

それどころか、多くの中小企業では、経営者個人が会社の借金の
連帯保証人になっています。
これは会社の借金にたいして経営者個人が自分の資産を担保に差し
出していることに等しく、会社資産と個人資産の峻別という原則すら
怪しいのです。

しかし、本来の役割を整理してみると慶のあるべき姿について
様々なアイデアが浮かんで来ます。

・執行役員を明確にした方がよいのでは?
・社員を執行役員に登用してもよいのでは?
・社外取締役を入れて、執行部を監視した方がよいのでは?

株式会社という仕組みは非常に柔軟で、永久運動を設計するために
様々な形態を生み出せるものなのです。

> 物財に関心を持ち、物財を豊富にすることに幸せを感じる精神が
> 生み出した近代は、自らの期待を実現するために数々の「作品」
> を創り出したが、その中でも「企業」という組織は最高の傑作と
> いってよい。
> (堺屋太一「組織の盛衰」より)

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次回以降の予告
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次号は、6月28日発行予定です。乞うご期待!!


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株式会社 慶
 代表取締役 蒲生 嘉達
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