サービス業のオフショアリング
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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第157号 2006/12/11
▼ まえがき
▼ [慶2.0] (1)日本のオフショアリングは製造業が中心
▼ [慶2.0] (2)米国では会計業務までがオフショアリングされている
▼ [慶2.0] (3)米国人プログラマは5年間で14.1万人も減った
▼ [慶2.0] (4)もしも13億の中国人が完璧な日本語を使えたら
▼ [慶2.0] (5)サービス業労働者の世界競争時代
▼ 次回以降の予告
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まえがき
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今週号は、「慶2.0 本当の大変化はこれから始まる」シリーズです。
このシリーズでは、次の10年で慶(及び類似した中小ソフトウェア会社)
が目指すべき方向性について、組織、営業、企画、労務など多方面から
考察します。
題は「慶2.0」ですが、多くの中小ソフトウェア会社にとっても共通
の課題を扱います。
「慶2.0」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー 慶2.0」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_kei2.html )を参照して
ください。
または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
「カテゴリー 慶2.0」(↓)を参照してください。
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/cat6545629/index.html
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[慶2.0] (1)日本のオフショアリングは製造業が中心
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週間東洋経済12月9日号に「落ちる中間層」という特集記事が載って
いました。
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/1892352/s/
今後数十年にわたって続く大きな流れとして私が感じていたことと
一致する内容だったので、今回取り上げます。
我々は100円ショップに行って、モノが本当に安くなったことを実感
します。
100円ショップには、「こんなものまで100円で買えるの?」という
ような安い商品がいっぱい並んでいます。
そして、その安い商品のほとんどが中国製です。
「生産コストが安い中国が世界の工場となったために、低価格の製品
が怒涛のように押し寄せてくるようになった」というのが、多くの
日本人が感じている「グローバリゼーション」です。
要するに製造業のオフショアリングです。
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[慶2.0] (2)米国では会計業務までがオフショアリングされている
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しかし、米国では、製造業だけでなく、サービス業のオフショアリング
が急速に進んでいます。
そのために、ホワイトカラー、中間層が苦境に立たされている様子が
「落ちる中間層」の中の「これが日本の5年後?沈みゆく米国の中間層」
という章に生々しく描かれています。
米国企業のコールセンター業務がオフショアリングされていることは、
よく知られています。
> マイクロソフトは約数千人の顧客サポートセンターの仕事を
> インドに移転している。
> 過去5年間に、米国のテレホンマーケターの数は約13%も減少した。
> (「落ちる中間層」より)
会計業務までがインドなどにオフショアリングされています。
> 単純な税金還付処理はすでに米国の会計士が関与できない状況だ。
> 1990年代末にインドで設立された企業がインターネット上に設けた
> “受付窓口”を経由して、インドの会計士に直接手続きを依頼
> できるようになった。
> (「落ちる中間層」より)
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[慶2.0] (3)米国人プログラマは5年間で14.1万人も減った
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そして、米国人プログラマは、インド人プログラマに職を奪われて
います。
> オラクルにはすでに数千人のインド人社員が在籍し、ソフトウェア
> 設計、経理、顧客サービスなどに従事している。
> インテル、テキサス・インスツルメンツ(TI)も、チップ回路設計に
> 従事するインド人・中国人技術者を多数雇用している。
> マイクロソフト、GE、JPモルガン・チェース、ベストバイなどを
> 顧客に持つインドのIT企業ウィブロでは、3ヶ月ごとにインド人
> 数千人を採用しないと、業務が回らない。
> (「落ちる中間層」より)
米国労働省統計局の資料によると、米国人プログラマは2000年には
53万人だったのに、2005年には38.9万人になっています。
5年で14.1万人も減っているのです。
関連記事:第79号「(2)米国におけるインドオフショア開発の影響」
[B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/06/post_a84f.html
[H] http://www.kei-it.com/sailing/79-050613.html
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[慶2.0] (4)もしも13億の中国人が完璧な日本語を使えたら
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一方、日本人プログラマは、日本語という障壁があるため、外国人
プログラマに職を奪われることはありません。
日本国内で働く外国人プログラマの数は増えていますが、そのために
日本人プログラマの数が減ったという話は聞きません。
確かに、中国オフショアの影響は出てきています。
> 中国を活用する企業が増えれば増えるほど、システム開発の単価の
> 相場は下がり、そのシワ寄せは下請けにやってくる。実際、空前の
> 人不足にもかかわらず、下請け企業の給与、単価は以前の好景気時の
> ようには上昇していない。
> (「落ちる中間層」より)
しかし、日本における中国オフショアの影響は、米国におけるインド
オフショアに比べれば、はるかに限定的です。
米国におけるインドオフショアのすさまじさ、恐ろしさは、「もしも
13億の中国人が日本語をネイティブレベルで使える人々だったら、
いったい何が起きるのか」ということを想像してみたら、ある程度
分かるのではないでしょうか?
関連記事:第49号「(3)中国オフショア開発の成長」
[B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/11/post_dd89.html
[H] http://www.kei-it.com/sailing/49-041115.html
関連記事:第119号「(2)IT技術者不足なのに単価は上がらない」
[B] http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/03/post_68af.html
[H] http://www.kei-it.com/sailing/119-060320.html
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[慶2.0] (5)サービス業労働者の世界競争時代
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日本語の壁は、日本のプログラマーにとっては、当面はありがたい
ことです。しかし、長期的には日本のソフトウェア産業の競争力を
弱めていきます。
米国は自国のプログラマ14.1万人の首を切ってでも、コストパフォー
マンスを追及しています。
また、インド人プログラマとの競争にさらされた米国人プログラマは
必死になって自らの技術力を磨いています。
> 自らのスキルアップを怠れば、失業という底なし沼に落ちていく。
> それがアメリカ人技術者の現実だ。
> (「落ちる中間層」より)
一方、日本人プログラマは、日本語という壁に守られ、安くて優秀な
外国人プログラマと同じ土俵で戦う必要がなく、「スキルアップを
怠っても何かしら仕事はある」という状況にいます。
これは、米国企業と日本企業との生産性のギャップがさらに広がる
ことを意味します。
米国は中間層が没落し、超格差社会となったと言われます。
そのことの是非はともかくとして、我々は、オフショアリングによって
生産性が飛躍的に高まった彼らと競争していかなければならないのです。
本日お話ししたことは、日々の業務に直接関わることではありません。
しかし、サービス業のオフショアリングという巨大な潮流を理解
することは、10年単位で会社や個人の方向性について考える上で
非常に重要なことです。
> アラン・ブラインダー・プリンストン大学教授は、現在進行して
> いるサービス業のオフショアリングを“第3次産業革命”と呼んだ。
> ブラインダー氏によれば、オフショアリングという新たな形の貿易は、
> 今後数十年にわたり世界の産業に甚大なインパクトを与え、およそ
> 2800万人のサービス業労働者を世界競争に巻き込むことになるという。
> (「落ちる中間層」より)
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次回以降の予告
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次号は、12月18日発行予定です。
「新営業マニュアル」シリーズを予定しています。
乞うご期待!!
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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。
また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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