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September 2006

September 25, 2006

ハリウッドの映画制作のように

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第146号 2006/9/25
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] クリンジリーの映画スタジオモデル
▼ [グーグルの衝撃] 進化した映画スタジオモデル
▼ [グーグルの衝撃] 近未来のソフト業界の主要なプレーヤー
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「グーグルの衝撃」をクリックして
ください。


バックナンバーは、発行者サイトまたはブログで、体系として
見てもらいたいので、「まぐまぐ!」でのバックナンバー公開は
最新号のみとなっています。

発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/
バックナンバーブログ:http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[グーグルの衝撃] クリンジリーの映画スタジオモデル
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「コンピュータ帝国の興亡」の「第15章 未来のコンピューティング」
の中でロバート・X・クリンジリーは、ハリウッドの映画制作のような
方式でソフトウェアを生産すべきだと主張しています。
要約すると次のようなことです。

 ハリウッドの映画スタジオは、資金、管理、製造、そして配給の
 機能しか持っていない。それ以外のほとんどすべては外部との契約
 でまかなっている。ライター、監督、プロデューサー、俳優と
 いったほとんどすべての人間は、契約によって雇っている。
 
 ソフトウェア業界もこのモデルを採用すべきだ。
 映画スタジオモデルを採用したソフトウェア会社のマネージャは、
 それぞれの仕事に合わせて最良のスタッフを調達することになる。
 
 また、大物になりたい人間は自分のスタジオを作ってもいいし、
 現代の映画界の独立プロデューサのようにアイデアと才能を結び
 つける仕事をしてもいい。


スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスの世界です。

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[グーグルの衝撃] 進化した映画スタジオモデル
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「コンピュータ帝国の興亡」は1991年に書かれた本です。
その後、インターネットの爆発的な進歩があり、現代の映画スタジオ
モデル論は次のように進化しています。

 通信コストが低下し続け、インターネットの統合力が強まれば、
 企業による集中的な管理とは無縁の状態であっても、企業が行って
 いる活動の大半は市場を介して行えるようになる。産業界は、
 ハリウッドの映画制作のような方式で、商品を生産するようになる。

上記は「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」の中で、ニコラス・
G・カーが要約したIT革命論者たちの主張です。


梅田望夫著「ウェブ進化論」では「ハリウッドの映画制作のような
方式」という言葉は使われていませんが、梅田望夫氏やWeb2.0革命を
標榜するベンチャー企業の経営者は、おそらく次のような考え方に
賛同するのではないでしょうか。

「今後は様々なウェブサービスAPIを無料または無料に近い金額で
利用できるようになる。斬新なアイデアを持った若くて俊敏な企業は、
それらのAPIを利用して極めて容易にシステムを作り上げ、インター
ネット上でビジネスを展開できる。そして、インターネット上の
ビジネスは極端に変化の激しいものである。
したがって、それらの俊敏な企業は長期継続型の組織ではなく、
ハリウッドの映画制作のように、目的に応じて解散と再結成を繰り
返す組織になるであろう。」

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[グーグルの衝撃] 近未来のソフト業界の主要なプレーヤー
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梅田望夫著「ウェブ進化論」を読むと、近未来のソフトウェア業界の
主要なプレーヤーは次の三者になるように思えます。

(1)ウェブサービスAPIを提供する巨人

グーグルやアマゾンのように、ウェブサービスAPIを無料または
無料に近い金額でグローバルに提供する巨人たちです。
ウェブサービスAPIは技術的には、誰でも作ることも公開することも
できますが、それで大儲けをするためには、まず無料または無料に
近い金額で提供して、デ・ファクト・スタンダードの地位を確立
しなければなりません。そのためには規模が必要なのです。

参考記事:
 第144号「デ・ファクト・スタンダード」
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_a59f.html
 http://www.kei-it.com/sailing/144-060911.html


(2)映画スタジオモデル

アイデアと才能あふれる小さな会社です。
公開されているウェブサービスAPIを駆使して、ごく短期間に優れた
システムを作り、それを使ってインターネットサービスを提供する
会社です。
長期継続型の組織ではなく、ハリウッドの映画制作のように、必要に
応じて解散と再結成を繰り返す組織です。

(3)厖大なアマチュア群

ここには次の3種類の人々が含まれます。
・無償でウェブサービスAPIを作るオープンソースプログラマ。
・ウェブサービスAPIを使って自社システムを作成するユーザ。
・アドセンスやアマゾン・ウェブサービスなどで小遣い稼ぎをする人々。


そして、一方で、ネットの「こちら側」にいるインハウス開発や
パッケージは徐々に衰退していくように思われます。
「インハウス開発」については、第103号を参照してください。

 第103号「インハウス開発とは」:
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/11/post_5f75.html
 http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html


本当にそうでしょうか?

次号以降では、長期継続、企業文化、会社組織が、ウェブサービス
時代だからこそ重要なのだという話をします。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制


次号は、9月25日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
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September 19, 2006

取引コスト

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第145号 2006/9/18
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」
▼ [グーグルの衝撃] 取引コストとは市場を利用するためのコスト
▼ [グーグルの衝撃] ソフトウェア請負契約の取引コスト
▼ [グーグルの衝撃] 内製する米国、外注する日本
▼ [グーグルの衝撃] 労働者派遣契約・準委任契約と取引コスト
▼ [グーグルの衝撃] インターネットは取引コストを下げる
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

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[グーグルの衝撃] ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」
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複雑な世界を見通すときに役立つ強力なレンズが存在します。

例えば、WEBでのマーケティングについては、ロングテール理論は
強力なレンズと言えるでしょう。

第143号「ロングテール」参照:
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/09/post_70c5.html
http://www.kei-it.com/sailing/143-060904.html


今週号では、ロングテール理論よりもはるかに応用範囲の広い
レンズを紹介します。

ロナルド・コースが提唱した「取引コスト」です。

「取引コスト」という概念は、名前からして非常に地味な概念です。
「ロングテール」はネット上でも様々な論争が繰り広げられていますが、
「取引コスト」の方はほとんど話題にのぼりません。

例えば、先ほどグーグルで「ロングテール」で検索したところ、
3,660,000件ヒットしました。
一方、「取引コスト」で検索したところ、わずか138,000件しかヒット
しませんでした。
しかも、その138,000件の半分以上は証券会社のサイトで、「外貨
取引のコスト」という意味で使われていました。
例えば次のように・・・。

 『米ドル/円の取引を行った場合1ドルにつき、わずか1銭の
  取引コスト!!』

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[グーグルの衝撃] 取引コストとは市場を利用するためのコスト
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したがって、コースが提唱した「取引コスト」を知らない人も多いと
思います。実は私も、つい数ヶ月前に知りました。

コースの「取引コスト」の詳細については、下記URLを参照してください。
http://www.stanford-jc.or.jp/research/news-event/imai/imai030203.html

日本経済新聞で2003年2月2日から2月12日にかけて連載された「やさしい
経済学-巨匠に学ぶ『コース』」(今井賢一氏筆)というコラムが転載
されています。


製品やサービスを提供するためには、原材料費、人件費、輸送費、
資本費といった様々なコストがかかります。
今までの経済学では、これらのコストの分析ばかりしてきました。
しかし、市場での価格メカニズムを利用するためには、実は他にも
様々なコストがかかります。
「諸価格がいくらであるかが発見されねばない。交渉が行われねば
ならず、契約が書き下ろされ、検査が行われ、紛争を処理するための
取り決めが設定されねばならない」(コース)

この「市場での価格メカニズムを利用するためにかかる様々なコスト」
を「取引コスト」と呼びます。

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[グーグルの衝撃] ソフトウェア請負契約の取引コスト
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これだけ聞いても、「取引コスト」がいかに重要な概念であるか
理解できないと思います。

「取引コスト」が企業、組織、雇用などの複雑な問題を見通すために
いかに強力であるかを示すために、「取引コスト」の観点から、
ソフトウェアの請負開発について考えてみましょう
ソフトウェア会社にとって身近な問題なので、分かりやすいと思います。

請負契約では、ビル建設でもソフトウェア開発でも、納品物の価格は
市場での価格メカニズムで決まります。
ごく小規模なシステム、大手SIやメーカにぶら下がっている下請け
会社への発注の場合を除き、請負契約には「入札」や「相見積もり」
という手順が発生します。
発注側が要件を提示し、複数の請負会社が見積もりを提出します。
発注側はその中から、価格・納期・品質の観点で最も優れた業者を
選択します。

請負業者間で競争が発生するので、発注側から見ると、外注コストを
削減できます。

しかし、請負契約とは、実は取引コストが非常に高い契約形態なのです。
要件の確定、見積もりの妥当性の検討、詳細な契約書の作成、発注後の
進捗管理、納品後の検収テストといった様々な取引コストが発生します。
仕様変更が発生した場合の追加契約では、さらに同じループが何度も
発生します。
そして、失敗した場合のリスクも引き受けなければなりません。

請負開発がしばしば失敗するのは米国も日本も同じです。

参考記事:
 第63号「途中放棄の米国、品質低下の日本」
  http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/02/post_61ce.html
  http://www.kei-it.com/sailing/63-050221.html

 第73号「ファウラー氏の請負契約観」
  http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2005/05/post_deaf.html
  http://www.kei-it.com/sailing/73-050502.html

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[グーグルの衝撃] 内製する米国、外注する日本
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請負契約による外注の対極が、自社情報システム部門による内製です。
社員を使って作れば取引コストはゼロになります。
しかし、別のコストが発生します。長期的な人件費です。

したがって、社内で作るかどうかは、「社員を雇うことにより発生
する長期的な人件費」と「外注費+取引コスト」のどちらのコストが
高いかという問題です。

以前、マイクロソフトのPOS関係の営業マンから、次のような話を
聞いたことがあります。
「日本ではイトーヨーカドーやセブンイレブンなどの巨大な店舗
システムは、NECなどのベンダーに一括請負契約で発注される方が
一般的ですが、米国の流通業では社内で開発される方が一般的です。
したがって、社内の情報システム部の要員数は、日本より米国の方が
多いのです。」


社内の情報システム部の要員数が、日本より米国の方が多いことが
事実だとしたら、それには下記の理由が考えられます。
・日本の場合、終身雇用制がまだ生きていて、長期雇用によるコスト
 の方が取引コストよりも大きい。
・日本では、請負契約といえども、純粋な市場メカニズムで決まって
 いるわけではなく、長期的・系列的な取引で決まっており、それが
 取引コストを押し下げている。
・日本では、受注会社が頑張って大赤字になってでもやってしまうので、
 それが取引コストを押し下げている。

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[グーグルの衝撃] 労働者派遣契約・準委任契約と取引コスト
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自社での内製と請負開発による外注の中間形態として、労働者派遣や
準委任契約という形態があります。
労働者派遣の場合、発注側には長期雇用によるコストも、請負契約の
ような取引コストもかかりません。
但し、労務管理コスト、指揮命令コストは発生します。

特定派遣の場合は長期雇用によるコストを派遣会社側が負担しますが、
一般派遣の場合は派遣会社側も負担しません。

準委任契約は請負契約の一種ですが、納品物ではなくサービスに
着目した契約形態です。
労働者派遣では労務管理コスト、指揮命令コストは発注側が負担
しますが、準委任契約の場合は労務管理コスト、指揮命令コストは
受注側が負担します。

労働者派遣契約と準委任契約については下記を参照してください。

第52号「人材派遣業は指揮命令権のレンタル業」
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/12/post_8e31.html
http://www.kei-it.com/sailing/52-041206.html

第54号「準委任と人材派遣を分かつもの」
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2004/12/post_75f8.html
http://www.kei-it.com/sailing/54-041220.html


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[グーグルの衝撃] インターネットは取引コストを下げる
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取引コストという概念は、今後の組織、企業のあり方を考える上で
極めて重要です。

> 社外の企業との取引コストが上昇すれば、企業の規模は大きく
> なりがちだ。逆に、取引コストが低下すれば、企業の規模が
> 小さくなる。
> (ニコラス・G・カー著「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」)


そして、インターネットは取引コストを下げると言われています。

面白いところは、IT革命論派とアンチIT革命論派とでは、
「インターネットが取引コストを下げる」という点では一致して
いながら、それぞれが描く未来の組織像が正反対であると言う点です。

この点について次号以降で解説します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制


次号は、9月25日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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September 11, 2006

デ・ファクト・スタンダード

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第144号 2006/9/11
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ネットの「こちら側」と「あちら側」
▼ [グーグルの衝撃] マイクロソフトの圧倒的な強さの理由
▼ [グーグルの衝撃] デ・ファクト・スタンダード
▼ [グーグルの衝撃] グーグルが標準になるということ
▼ [グーグルの衝撃] 猛烈な価格破壊が始まる(?)
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

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[グーグルの衝撃] ネットの「こちら側」と「あちら側」
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梅田望夫氏は「ウェブ進化論」で、ネットの「こちら側」と
「あちら側」を次のように説明しています。


> ネットの「こちら側」とは、インターネットの利用者、つまり
> 私たち一人一人に密着したフィジカルな世界である。

> 一方、ネットの「あちら側」とは、インターネット空間に浮かぶ
> 巨大な情報発電所とも言うべきバーチャルな世界である。
> いったんその巨大設備たる情報発電所に付加価値創造のシステムを
> 作りこめば、ネットを介して、均質なサービスをグローバルに提供
> できる。


そして、IT産業の重心がネットの「こちら側」から「あちら側」に
移行することによって、グーグルがマイクロソフトに代わって、
IT業界の盟主になるというのが、「ウェブ進化論」で提示されている
近未来像です。

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[グーグルの衝撃] マイクロソフトの圧倒的な強さの理由
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ここで、マイクロソフトが圧倒的な強さを持てた理由について復習
しておきましょう。

インテルは最近AMDの激しい追い上げを受けて、業績に陰りが出て
きています。
SUNはここ数年業績が低迷しています。

しかし、マイクロソフトだけは、嫌われたり、けなされたりしながらも、
毎年増収増益を続けています。

本メルマガの第124号、第125号、第132号で、私は、
「マイクロソフトの大成功の理由を、ビル・ゲイツの天才にのみ求める
のは間違えている。マイクロソフトが売れる製品を出し続けることが
できたのは、マイクロソフト独特の『プログラムマネージャ』という
制度がうまく機能したからだ」ということを述べました。

・第124号 マイクロソフトの「ブルックスの法則」対策
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/04/post_3020.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/124-060424.html

・第125号 マイクロソフトのプログラムマネージャ
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/05/post_a4c0.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/125-060501.html

・132号 オープンでもクローズドでも良い製品を生み出す環境は似ている
 http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/06/post_8949.html
 または http://www.kei-it.com/sailing/132-060619.html


しかし、もちろん「プログラムマネージャ」だけではマイクロソフトの
圧倒的な強さは説明できません。

周知のとおり、マイクロソフトの力の源泉は、OSとオフィス製品で
デ・ファクト・スタンダードの地位を獲得したことです。

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[グーグルの衝撃] デ・ファクト・スタンダード
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岩井克人氏は「会社はこれからどうなるのか」で、「情報を流通させる
ための媒体」と「デ・ファクト・スタンダード」について次のように
解説しています。

> 情報の商品価値とは、その差異性です。
> いくら有用な情報であっても、それが多くのヒトによって共有されて
> しまえば、経済的な意味での価値を失います。
> だが、情報そのものではなく、その情報を流通させるための媒体に
> かんしては、これとはまったく逆の原理がはたらくのです。
> それは「デ・ファクト・スタンダード」の原理です。
> デ・ファクト・スタンダードとは、直訳すれば「事実上(DE FACTO)
> の標準(STANDARD)」ということです。
> それは、あるモノが標準として使われているのは、それが標準として
> 使われているという事実以外には何の理由もないという意味です。
> すなわち、あるモノがデ・ファクト・スタンダードであるというのは、
> それが他のモノより優れているから多くのヒトに使われるのでは
> なくて、それがたんに多くのヒトに使われているから多くのヒトに
> 使われているにすぎないということであるのです。
> まさに、「自己循環論法」にほかならないのです。


インターネットの検索サービスも「情報を流通させるための媒体」
です。

私はグーグルの動きには、デ・ファクト・スタンダードの地位を獲得
するために米国企業が持つ凄まじいまでの執念を感じます。
マイクロソフトと同じDNAを感じます。

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[グーグルの衝撃] グーグルが標準になるということ
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グーグルは検索エンジンとして非常によくできていたから、多くの
人がグーグルを使うようになりました。

日本語でも「ググる」と言いますが、英語でも'google'は動詞として
使われています。

しかし、そのうち、「多くのヒトに使われているから多くのヒトに
使われている」という状況になります。

そこで起きることは次のようなことです。

> サービス提供者が「個」に対して「あちら側」での利便性を提供する。
> 「個」がその利便性を享受するために、色々な情報を「あちら側で
> オープン」にしていく。「個」が「あちら側でオープン」にした情報
> をサービス提供者が集積し「全体」としての新たな価値を創出する。
> これが、Web2.0時代のサービスの構造である。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


かつてPCの世界で、Windowsがデ・ファクト・スタンダードとなった時、
世界中のソフトウェア会社がWindows上で動く様々なソフトウェアを
開発し、それがさらにWindowsのデ・ファクト・スタンダードを強固な
ものにしました。

それと似たことが、グーグルでも起こります。

世界中の利用者の情報がグーグルに集積される。
→グーグルはその膨大な情報を利用して新しいサービスを提供する。
→さらに新たに莫大な情報が集積される。
という循環が始まるのです。

ネットでデ・ファクト・スタンダードの地位を獲得したグーグルは、
かつてのIBM、マイクロソフト以上の巨人になるでしょう。

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[グーグルの衝撃] 猛烈な価格破壊が起きる(?)
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では、今後ソフトウェア会社はどうなるのでしょうか?

> ネットの「あちら側」では、ありとあらゆるリソースが自在に融合
> され始めている。それがWeb2.0の核心だ。
> 「はてなマップ」の開発に1週間しかかからないのだとすれば、
> いずれ「あちら側」のサービスのコスト構造は、「こちら側」の
> システムのコスト構造の何万分の一になってしまう。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


そして、次の10年間でシステム開発において猛烈な価格破壊が
起きるというのが、梅田望夫氏の予測です。

> それだけのコスト差が出れば、徐々に経済合理性が働き、少しずつ
> 大企業の情報システムも「あちら側」「開放性」といったキーワード
> で動き始める時がやってくる。
> チープ革命とWeb2.0が手に手を取り合って進展することで訪れる
> その時に、IT産業は再び大激震に見舞われる。
> それが「次の10年」の間に必ず起こるはずだ。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


しかし、私の意見は違います。

次号以降では、この点について解説します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・取引コスト
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、9月18日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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September 04, 2006

ロングテール

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第143号 2006/9/04
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] ロングテールとは
▼ [グーグルの衝撃] ロングテール現象は標準化が前提
▼ [グーグルの衝撃] ニッチな規格品を安く売る人が恩恵を受ける
▼ [グーグルの衝撃] グーグルのアドセンス
▼ [グーグルの衝撃] 無に近いものの提供者とそれを集積するグーグル
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。

このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。

「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「グーグルの衝撃」をクリックして
ください。

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[グーグルの衝撃] ロングテールとは
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今週号では、ロングテールについてお話します。

ロングテールは、WEB2.0の話をするときに必ず出てくるキーワードで、
一般的には次のように説明されます。

> インターネットを利用したネット販売などにおいては、膨大な
> アイテム(商品)を低コストで取り扱うことができるために、ヒット
> 商品の大量販売に依存することなく、ニッチ商品の多品種少量販売に
> よって大きな売り上げ、利益を得ることができるという経済理論。
>
>  ( http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/longtail.html )

ロングテールが、「インターネットの本質に関わる極めて重要な問題
提起を含んでいる」(梅田望夫氏)ということは事実でしょう。

しかし、ロングテール現象を正しく理解するためには、まずインター
ネットの基本的性格を理解する必要があります。
ロングテール現象とは、インターネットの基本的性格の上で起きている
現象ですから。

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[グーグルの衝撃] ロングテール現象は標準化が前提
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ロングテール現象を「規格外の製品、非標準の製品がインターネット
で売れるようになった」と理解しているとしたら、それは誤りです。

ロングテール現象の大前提として標準化、規格化があるのです。

> インターネット企業初の最大店舗は書籍の販売店だった。
> 書籍は最も古くから大量生産されている日常的製品だ。
> 見事に標準化され、ある版の書籍は次に出る版のそれとほとんど
> 変わらない姿をしている。
>
> (ブラウン, ドゥグッド著「なぜITは社会を変えないのか」より)


アマゾンが成功したのは、書籍がもともと「見事に標準化された」
製品だったからです。
標準と規格に対する信頼があるからこそ、デルもインターネット上で
受注生産ができるのです。

規格化されていないものはたとえアマゾンと言えども、売りづらい
のです。
規格化されていないものの品質をアマゾンが保証しなければならない
からです。

例えば、同じ本でも古本には「本の汚れ」「希少性」といった規格化
されていない要素が入りこみます。
したがって、新刊書にはない難しさが出てきます。

> アマゾンは最低価格の書籍を薦めるという保証のもとに絶版書の
> 検索をするボット(注)を提供しているのだが、このサービスを
> 利用した人は市場の最低価格でない本をよく薦められるという苦言を
> 呈している。
> (ブラウン, ドゥグッド著「なぜITは社会を変えないのか」より)
(注)ボット:人工知能エージェント


ロングテール現象とは、より正確に言うと、

「標準化が進んだ世界のネット販売では、ヒット商品の大量販売に
依存することなく、『ニッチな規格品』の多品種少量販売によって
大きな売り上げ、利益を得ることができる」

ということなのです。

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[グーグルの衝撃] ニッチな規格品を安く売る人が恩恵を受ける
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もう一つ理解しておかなければならないことは、インターネットでは
低価格が決定的な購買動機になるということです。

インターネットは規格品の価格の比較は得意です。
しかし、サービス(例:店員の態度、料理人の腕前)や品質(例:
本の中身、靴の履き心地)の比較は苦手です。
そこには主観的な要素が入ってくるからです。

低価格ではなく、気のきいたサービスや高い品質を売りにしている
サービスや製品は、もともとネット販売には向いていません。
これはロングテールに対しても作用するインターネットの本質的な
性格です。

したがって『ニッチな規格品を低価格で提供している人』が、最も
ロングテール現象の恩恵を受けることになります。
(本当に最も恩恵を受けるのは、プラットフォームを提供している
アマゾンやグーグルなどでしょうが・・・。)

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[グーグルの衝撃] グーグルのアドセンス
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「ロングテール現象は標準化が前提」と書くと、次のように反論
されるかもしれません。

「本を売っているアマゾンではそうかもしれないが、グーグルの
アドセンスは違う。アドセンスは標準や規格に関係なくどんな製品
でもバーチャル市場に出せる。」

アドセンスについては私には梅田望夫著「ウェブ進化論」で得た
知識しかありません。

「無数のウェブサイトの内容を自動識別し、それぞれの内容にマッチ
した広告を自動掲載する登録制無料サービス」だそうです。
自動マッチングされたアフェリエイトのようなものでしょうか。

しかし、それを利用して普通の人がどれだけ稼げるというのでしょうか?
少ししか稼げないということは、梅田望夫氏も認めています。

> 月に10万円稼ぐにはテーマ性の高い人気サイトを作らなければ
> ならないからたいへんだが、月数万円規模ならば少々の努力で、
> 月数千円規模ならばかなりの確率でたどりつく。
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)

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[グーグルの衝撃] 無に近いものの提供者とそれを集積するグーグル
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梅田望夫氏はアドセンスで少ししか稼げないことをむしろ肯定的に
考えています。
彼が言わんとしていることは次のようなことです。

「個人にとっては月数千円でもありがたいはずです。
グーグルは全世界の人々に小遣い稼ぎをさせてやって、そこから
ほんの少し徴収します。
全世界から広く浅く徴収するので、グーグルは莫大な利益を得る
ことができます。」


> わずかな金やわずかな時間の断片といった無に近いものを、無限大に
> 限りなく近い対象から、ゼロに限りなく近いコストで集積できたら何
> が起こるのか。ここに、インターネットの可能性の本質がある
>
>            (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)


そこは、「わずかな金やわずかな時間の断片といった無に近いもの」を
ほんの少しの報酬で提供する大衆と、それを集積して莫大な利益を生み
出すグーグルの世界です。

その世界で、中小ソフトウェア会社はどのようにして生きていったら
よいのでしょうか?

第141号で「その世界で利益を上げていくためには、他の会社が容易に
模倣できない独自の差異性を創造し維持し拡大していくしかありません」
と書きました。

第141号:
http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/2006/08/post_a37c.html
または、http://www.kei-it.com/sailing/141-060821.html


次号以降では、この点についてもう少し具体的に考察します。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

グーグルの衝撃シリーズ:
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・取引コスト
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン

財務系
・資産と費用

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・裁量労働制

営業系:
・売れる営業マン


次号は、9月11日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年9月2日現在、547名です。


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