グーグルの検索やアマゾンの推薦は中立か?
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第142号 2006/8/28
▼ まえがき
▼ [グーグルの衝撃] オプティミズムに支えられたビジョン
▼ [グーグルの衝撃] 「ウェブ進化論」だけ読んだら誤解する
▼ [グーグルの衝撃] 電子メールに広告を忍ばせる
▼ [グーグルの衝撃] 実は金を出した出版社の利益を守っていた
▼ [グーグルの衝撃] グーグル八分
▼ [グーグルの衝撃] 誰が本当にコントロールしているのか
▼ 次回以降の予告
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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。
第138号から「グーグルの衝撃」シリーズを開始しています。
このシリーズではIT業界の現在と未来について考えます。
「グーグルの衝撃」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー グーグルの衝撃」
( http://www.kei-it.com/sailing/back_google.html )を参照して
ください。
または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「グーグルの衝撃」をクリックして
ください。
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[グーグルの衝撃] オプティミズムに支えられたビジョン
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> シリコンバレーにあって日本にないもの。それは、若い世代の創造性
> や果敢な行動を刺激する「オプティミズムに支えられたビジョン」
> である。
>
> (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)
「ウェブ進化論」は、日本もシリコンバレーのように「オプティミズム
に支えられたビジョン」を持って欲しいという、梅田望夫氏の願いが
込められている本です。
したがって、IT革命に懐疑的な議論(注)はあえて無視して、グーグル
やアマゾンの輝かしい部分のみが書かれています。
暗い面は書かず、肯定的な面のみを描いたことによって、「ウェブ
進化論」は、分かりやすく、読みやすい本となっています。
(注)IT革命に懐疑的な議論の例:
・なぜITは社会を変えないのか
(ジョン・シーリー ブラウン, ポール ドゥグッド著)
・ITにお金を使うのは、もうおやめなさい
(ニコラス・G・カー著)
・日本経済「暗黙」の共謀者
(森永卓郎著)
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[グーグルの衝撃] 「ウェブ進化論」だけ読んだら誤解する
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上記(注)で示したような本を読んで理解した人が「ウェブ進化論」を
読んだ場合、単に「シリコンバレーの最新情報」として読むでしょう。
あるいは、IT革命に懐疑的な本と「ウェブ進化論」での主張とを比較
しながら、バランスの取れた読み方をするでしょう。
しかし、IT革命論に批判的な議論を聞いたことがない人が「ウェブ
進化論」だけを読んだら、誤解する点も多いと思います。
なにしろグーグルやアマゾンの輝かしい面しか書かれていないの
ですから・・・。
例えば、彼らは次のように考えるでしょう。
「グーグルの検索もアマゾンの推薦(リコメンデーション)も、
中立で公平で清潔で、我々の味方である。」
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[グーグルの衝撃] 電子メールに広告を忍ばせる
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「ウェブ進化論」ではグーグルもアマゾンも(特にグーグルは)、
テクノロジー志向の会社として描かれています。
そして、テクノロジー志向が強く人間の介在を嫌う会社だからこそ
中立で公平で清潔なサービスを提供できるのだという書き方がされて
います。
例えば、グーグルは「個々人の電子メールの内容を自動的に判断し、
最適な広告へのリンクを電子メールに忍ばせる」というビジネスを
構想しているそうです。
これについて、梅田望夫氏は、「グーグルがやれば人間が介在
しないからプライバシー侵害の危険はない」というグーグルの
考え方を代弁しています。
> 「迷惑メールの除去やウィルスの駆除のために、電子メールの
> 内容をその判断材料に使うのは現代の常識です。これまで
> それを誰も問題にしなかったでしょう。電子メールへの広告挿入
> にも同じような技術を使います。作業は全部コンピュータが
> 自動的にやるんです。そのプロセスに人間は関与させません。
> 悪いことをするのは人間でコンピュータではありません。
> 人間はこのプロセスから遠ざけます。このルールはがっちり守ります。
> だからプライバシー侵害の危険はないのです」
> こんな全く独特の思考回路で、個人の電子メールというプライベート
> 空間までを広告事業の対象にできないかと、グーグルは発想するの
> である。
> (梅田望夫著「ウェブ進化論」より)
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[グーグルの衝撃] 実は金を出した出版社の利益を守っていた
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しかし、グーグルの検索やアマゾンの推薦は本当に中立なのでしょうか?
例えば、アマゾンは過去に書評記事を広告として売買していたことが
あります。
(1)
> 2月8日『ニューヨーク・タイムズ』の記事は,新たなる不信感と幻滅の
> 始まりとなったかもしれない。書評記事が広告として売買されていた
> のである。
> アマゾン・パッケージという書籍広告の仕組みでは,出版社は最大
> 12500ドルを支払うと,分野別に紹介したトップページにタイトルを
> 載せることができる。
( http://www.tdupress.jp/network/network_606.html )
(2)
> オンライン小売り大手のAmazon社は、顧客向けの電子メールで書籍を
> 推薦する代わりに、その料金を出版社に負担させるという計画を始め
> ようとしている。Amazon社はこれを出版社に提供するサービスとして
> 位置づけており、これにより出版社は書籍をAmazon社のWWWサイトで
> より目立つように掲載することが可能となる。
( http://bizns.nikkeibp.co.jp/cgi-bin/search/wcs-bun.cgi?ID=122953&FORM=biztechnews )
両方とも古い記事です。((1)は1999年、(2)は2001年)
今はどうなっているかは分かりません。
当たり前のこととしてやられているのか、分からないようにやって
いるのか、「これは広告です」と明示してやっているのか、それとも
批判を受けたので止めたのか・・・。
もしも今でもやっているなら、アマゾンの推薦は、消費者の便宜を
図っているかのように見せて実は金を出した出版社の利益を守って
いるということです。
今やっていないとしても、批判を受けなければ続けていたでしょう。
あるいは将来、多少批判されても広告収入の方が重要だとアマゾンの
経営者が判断すれば、再開するでしょう。
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[グーグルの衝撃] グーグル八分
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グーグル八分とは、グーグルが特定のウェブサイトをグーグルの
検索用インデックスから削除し、グーグルの検索で表示されなく
することです。
グーグルがウェブサイトをグーグル八分にする基準は公開されて
いません。
ある日突然検索しても出てこなくなり、初めてグーグル八分にされた
ことが分かるのです。
通常グーグル八分は検索する国の法律に従って行われますが、その
国の法律に反するか否かはグーグルが判断します。
また、米国内の法律によって違法と判断されたサイトは全世界で
表示されません。
さらに、中国のグーグルでは、同国政府側からの要請により、
同政府に反する記事を検索しても一切表示されません。
ウェブサイトの来訪者は、通常、検索エンジン経由でたどり着きます。
したがって、検索エンジンで表示されないということは、事実上
インターネット上で存在しないということに近くなります。
この「抹殺」が、グーグルという一米国企業の判断に委ねられて
いるのです。
そして背後には米国人の世界観・倫理観があり、(米国法に準拠する
という意味で)米国政府の意図も入ってきます。
さらに、グーグルは中国政府から圧力を受ければ中国政府の便宜まで
図ってしまうのです。
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[グーグルの衝撃] 誰が本当にコントロールしているのか
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上記「電子メールに広告を忍ばせる」の節で、「ウェブ進化論」の
下記の言葉を引用しました。
> 悪いことをするのは人間でコンピュータではありません。
> 人間はこのプロセスから遠ざけます。このルールはがっちり守ります。
しかし、アマゾンの推薦もグーグルの検索も、コントロールしている
のは、コンピュータだけではありません。
陰でコントロールしているのは、グーグルやアマゾンのごく少数の
経営者であり(彼らが独善的判断を下さない保証はありません)、
スポンサー企業であり、米国政府であり、さらに中国政府も関与して
いるのです。
> われわれは誰でもエージェントを利用できるかもしれないが、そのうち
> どれだけの人間が、自分の嗜好の組み合わせを積極的に導き出すための
> 複雑な計算処理に組み込まれているバイアス(偏り)を理解できる
> だろうか。
> 自分のエージェントは中立なのか、バイアスがかけられているのか、
> あるいは単に操作が偏っているだけなのかといったことを確認する必要
> がある。
> 誰がそのエージェントを本当にコントロールしているのか、それは自分
> なのか、設計者それとも情報提供者なのか。
>
> (「なぜITは社会を変えないのか」より)
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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。
グーグルの衝撃シリーズ:
・ロングテール論の誤解
・ウェブサービス時代のソフトウェア会社のあり方
ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。
・IPOとゴーイング・コンサーン
財務系
・資産と費用
法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権
労務系:
・裁量労働制
営業系:
・売れる営業マン
次号は、9月4日発行予定です。
乞うご期待!!
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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。
したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。
また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年8月27日現在、535名です。
本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非
本メルマガの存在を教えてあげてください。
(以下をそのまま転送するだけです。)
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