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July 18, 2006

賞与の基礎知識

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第136号 2006/7/17
▼ まえがき
▼ [賃金決定の仕組み] 賞与予算は成果が出る前に決まっている
▼ [賃金決定の仕組み] 赤になっても黒になっても予算どおり払う
▼ [賃金決定の仕組み] 成果は反映されるが、絶対評価ではない
▼ [賃金決定の仕組み] 現在主流となっている賞与制度
▼ [賃金決定の仕組み] 中小ソフト会社、ITベンチャーの賞与
▼ 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今回は賞与について基本的な話をします。

「賃金決定の仕組み」シリーズに分類します。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
「バックナンバー 賃金決定の仕組み」
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。

または、ブログ( http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/ )の
左列にあるCategories「賃金決定の仕組み」をクリックしてください。

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[賃金決定の仕組み] 賞与予算は成果が出る前に決まっている
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7月14日(金)の日経新聞朝刊に「夏のボーナス2.0%増加」という記事
が載っていました。
上場企業と有力非上場企業の計4,323社を調査対象とした記事です。
下記はそこからの引用です。

> 伸び率は03年から3年連続で3%台だったが、今夏は2%台にとどまった。
> 特に夏のボーナスを春の賃金改定と切り離して交渉している企業は
> 支給額の伸び率が1%台に鈍化しており、直近の原油高や株価の動向が
> 影響したもようだ。


この中に「夏のボーナスを春の賃金改定と切り離して交渉している企業」
という言葉があります。

実は今でもほとんどの会社は、その期の賞与予算を春の賃金改定と
一緒に決めてしまうのです。
その際、前年度の会社の決算結果が重要指標となります。

「夏のボーナスを春の賃金改定と切り離して交渉している企業」に
しても、これは前年度の会社の決算結果に直近の会社全体の収益予想も
加味するという意味です。
前年度の会社の決算結果が最も重要な指標であることにはかわりは
ありません。

「賞与の本質は利益の分配」とよく言われます。
(例:http://www.primec.co.jp/system/bonus.php )

しかし、現実に世間で行われている賞与制度では、利益が出る前に
予算は決まってしまっているのです。


> その期の決算状況に応じて、ボーナスの予算を決めるという
> スタイルもなくはない。「よし、今期はみんなよくがんばって
> いるから、ボーナスは奮発しよう」という社長さんのイメージだ。
>  ・・・(中略)・・・
> ただこういった企業は、割合としては非常に少ない。
>
>       (城繁幸著「日本型「成果主義」の可能性」より)

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[賃金決定の仕組み] 赤になっても黒になっても予算どおり払う
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春に予算を立てたということは、現実に利益が出ても出なくても、
それだけ払うと従業員に約束したということです。
会社は基本的には予算どおり払う必要があります。
特に下げる場合には、頑強な抵抗を受けることになるでしょう。

直近の会社全体の収益予想を加味したとしても、上記日経の記事を
読んでも分かるとおり、たかだか1%程度の修正にすぎません。

借入してでも、赤字になってでも、払わなくてはならないのです。
会社の業績が非常に悪く、借入さえできない状況に至ったとき、
初めて大幅なカットとなります。


逆に予想よりも業績がUPした場合はどうでしょうか?

社員が上半期に必死に頑張り、予想よりも良い業績が達成できたと
しましょう。
その場合にも、社員が12月に受け取る賞与の総額は、春の段階で
決まった予算が基本となります。

会社は業績が悪い場合にも、春に立てた予算どおりの賞与を払います。
その代わり、業績が良かった場合にも、堅実な会社はその期には予算
どおり支払い、残った利益は将来に備えて内部留保します。
あるいは、業績が悪かったときに作った借入を返済します。
これはゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)とも関係することで、
企業としては正しい態度です。

「よし、今期はみんなよくがんばっているから、ボーナスは奮発
しよう」という社長の会社が少ないということは、そのような
気前のよい社長は長期的には生き延びて来なかったということかも
しれません。

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[賃金決定の仕組み] 成果は反映されるが、絶対評価ではない
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上記説明で注意しなければならない点を指摘しておきます。

(1)個人の成果はその期の賞与に反映される

春に立てた予算どおりに賞与を払うと言っても、それは総額の話です。
個人への配分は半期の個人の成果が反映されます。
そのような意味では、個人の成果はその期の賞与に反映されるのです。

しかし、総額が決まっているということは、絶対評価はあり得ない
ということを意味します。
たとえ評価の現場で絶対評価で付けたとしても、分配の段階では
限られたパイを相対評価で分け合うという構図になります。


(2)利益の分配という面もある

賞与予算を立てる際に前年度の会社の決算結果が重要な指標となります。
その意味では、その期の賞与は前期の利益の分配であるという面が
ないわけではありません。
しかし、直接的な分配ではありません。

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[賃金決定の仕組み] 現在主流となっている賞与制度
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従来から日本企業の賞与予算は会社の業績に敏感に連動していました。
そのような意味では、賞与は人件費を変動費化する強力な手段だった
のです。
しかし、個人の業績評価によって賞与に大きな差を付けることは
ありませんでした。
賞与支給額の差のほとんどは基本給、役職手当の差であり、評価の
差ではありませんでした。

> 年功序列の場合、報酬は「ポスト」という形で支払われてきた。
> だから賞与において大きな差は存在せず、定期昇給という形で、
> 基本給も揃って上昇し続けたのだ。報酬はいずれ出世という形で
> 支払われることになっていたからだ。
>
>        (城繁幸「日本型「成果主義」の可能性」より)


1993年頃から、いくつかの異なる動機から成果主義が導入され、
極端な差を付ける会社も出てきて、その後、成果主義の弊害が指摘され、
今は職能資格給ベースの相対評価に若干成果主義的味付けをしている
というのが主流だと思います。


7月14日(金)の日経新聞朝刊で「同期の支給格差「30%以上」8割超」
というタイトルの記事もありました。

> 同期入社の大卒社員の最高支給額と最低支給額の格差は「30%程度」
> と回答した企業が38.6%と最も多く、「50%程度」(18.6%)と
> 「10%未満」(16.2%)が続いた。


もしも25歳前後の同期の賞与の格差が30%だというなら、かなり大きい
と思いますが、これは30代、40代、あるいはそれ以上の同期も含めた
数字です。
30%程度の格差というものはそれほど大きいとは思えません。

賞与の計算は、通常は基本給をベースに行われます。
ある程度の年齢になると基本給にも30%程度の格差は付いてくるでしょう。

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[賃金決定の仕組み] 中小ソフト会社、ITベンチャーの賞与
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これまでお話ししてきたことは、比較的組織のしっかりした会社での
話です。

中小ソフトウェア会社、ITベンチャーの賞与は制度的に未整備、
検討が不十分、良く言えば、制度的に硬直化していません。


厳密な予算組みはありません。
春にその期の賞与予算を決めてしまうということもありません。
請負型や派遣型の中小ソフトウェア会社はまだ予算の立てようが
ありますが、ITベンチャー系は、毎月、毎年の変動が激しすぎて、
予算を立ててもすぐに現実と大きく乖離してしまいます。

社長も社員も、日常業務で精一杯で、時間をかけてしっかりとした
人事・給与制度を作り上げていくことができません。
経営者は人事・給与制度についての経験も知識も不足している上に、
関心もありません。

慶も、賞与制度を含めて、人事・給与制度はまだまだ不十分です。
私は下記の方向で改善していかなければならないと考えています。

・十分に裁量を持った管理職に対しては成果主義の強化。
・若年層では能力給ベースの相対評価。
・財務的にはより厳密な予算組み。
・賞与予算の配分権の管理職への委譲。
・新しい技術や分野への挑戦を促す仕組み作り。
・数値目標が有効な部門には数値目標を取り入れる。

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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマを取りげていきます。

ゴーイング・コンサーンシリーズ:
・会社は継続しなくてもよいという考え方もある。
・メリーチョコレートを支えている人事制度。


技術系:
・グーグルの衝撃
  本を読むこと、ネットで読むこと
  ITバブルは詐欺だった
  ポスト産業資本主義化はIT革命によって引き起こされたのではない。

・メーカからの請負、エンドユーザからの請負
 (品質管理、検収、瑕疵担保責任の違い)
・オブジェクト指向再論
・PMBOK
・SEO対策

外国系:
・中国は脅威か?

財務系
・資産と費用

経営系:
・壊れ窓の理論

法務系:
・コンプライアンス
・執行役の裁量の範囲と取締役会の決定権

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主
・景気回復、新卒の採用難、2007年問題

営業系:
・売れる営業マン


次号は、7月24日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年7月16日現在、516名です。


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