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March 06, 2006

「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のようなソフトを作るべき

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第117号 2006/3/6
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 開発コストとユーザの意識の乖離
▼ [製造業の呪縛] マイクロソフトは、Solarisは怖くないが、Linuxは怖い
▼ [製造業の呪縛] のこぎり入れ方パターン計算ソフト
▼ [製造業の呪縛] オープンソースが苦手とするソフトを作るべき
▼ [製造業の呪縛] これまでにパッケージについて触れた号
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

今週号は、パッケージソフトについて考えます。

「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html
を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[製造業の呪縛] 開発コストとユーザの意識の乖離
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2月中旬、S社を訪問し、T常務と会談しました。
S社は、創業1987年、売上高約9億円、社員数85名、資本金4,000万円の
会社です。

特殊な監視制御装置、計測機器の製造販売からスタートした会社で、
今でもハードウェアの売上が売上全体の1/3を占めています。
会社案内に、パッケージソフトの製作・販売もやっていると
書かれていたので、「パッケージは売れていますか?」と質問した
ところ、次のような回答が返ってきました。

「全然売れていません。開発コストは1,000万円以上なのに、ユーザの
意識は『パッケージなら1本10万円~20万円だろう』ですからね。」


日本ではもともと、パッケージソフトで儲かっている会社は
ほとんどありませんでしたが、その傾向はますます強まっています。

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[製造業の呪縛] Solarisは怖くないが、Linuxは怖い
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それでは、外国のパッケージソフト会社が好調なのかというと、
そうでもありません。


> 世界のパッケージ・ソフト市場は、急激な低価格化やセキュリティ問題、
> 優れたオープン・ソースの登場など、深刻な問題に直面しつつある。
> 現在、パッケージ・ソフト収入の源泉は、インストール・ベースの
> ライセンス料金から、保守サービス料金へと移っている
>   (日経コンピュータ2006/1/9号 
>    マイケル・クスマノ著「日本のソフトウェア産業の謎」より)


パッケージソフトが儲からなくなっているのは、世界的な傾向です。

現代は、技術の標準化が世界的な大競争を生み、その結果として、
あらゆる商品が安くなる時代です。
(第8号「ポスト産業資本主義の時代」
http://www.kei-it.com/sailing/08-040126.html 参照)

しかし、パッケージソフトの世界では、もう一つのデフレ要因が
あります。

例えば、自動車業界なら車を無料で配るなどという連中はいません。
しかし、ソフトウェアの世界ではそのような連中がいるのです。
オープン・ソース・コミュニティーです。

しかも彼らが無料で配るソフトウェアはものすごく優秀です。
巨大なソフトウェア・ベンダーが莫大な開発費をかけて開発した
製品よりも、優秀なオープンソース製品も少なくありません。


マイクロソフトもオラクルも、オープンソースを意識した事業
展開を余儀なくされています。

マイクロソフトはSolarisやAIXは怖くありませんが、Linuxは怖いのです。
オラクルもSybaseやDB2は怖くありませんが、MaySQLやPostgreSQLは
怖いのです。

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[製造業の呪縛] のこぎり入れ方パターン計算ソフト
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エリック・レイモンド著「魔法のおなべ」の中で次のような話が
載っています。


> 1999年頭にぼくは、丸太から垂木をなるべくたくさんとりたい
> 製材所向けの、のこぎりの入れ方パターンを計算するソフトを
> 書いている会社から相談を受けた。
> 「うちはオープンソースにすべきでしょうか?」
> ぼくは「ノー」と結論した。


エリック・レイモンド氏はオープンソース運動の理論的な指導者です。
彼が書いた「伽藍とバザール」はオープンソース運動の聖典のような
存在です。

そのエリック・レイモンド氏がなぜ「のこぎり入れ方パターン計算ソフト
はオープンソースにすべきではない」と言ったのでしょうか?

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[製造業の呪縛] オープンソースが苦手とするソフトを作るべき
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エリック・レイモンド氏は、オープンソースのメリットが高いのは
次のようなケースだと言っています。

(a) 信頼性、安定性、スケーラビリティがとても重要な場合。
(b) デザインや実装の正しさが、独立ピアレビュー以外の方法では
  きちんと検証できない場合。
(c) そのソフトがその利用者のビジネス展開を決定的に左右する
  ような場合。
(d) そのソフトが、共通のコンピュータ・通信インフラを確立するか
  可能にする場合。
(e) その核となるメソッド(あるいは機能的にそれと等価なもの)が、
  よく知られた工学的な知識の一部であるとき。

Linux、Appache、MySQL、PsotgreSQL は、正しく、この要件を満た
しています。

しかし、「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」は、これらの要件を
一つも満たしていないのです。


あれば確かに便利だが、また特殊なノウハウが詰まっているのだろうが、
「でもいざとなったら、経験豊かなオペレータが自分でのこぎりの入れ方を
手動で計算できるだろう」(エリック・レイモンド氏)という類の
ソフトです。

また、市場が小さいから大手パッケージ会社も手を出さないソフトです。


パッケージを自社開発するとき、ついつい格好いい立派なコンセプトを
描いてしまいます。
しかし、実は、この「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のような
ソフトを作るべきなのです。

つまり、オープンソースにするメリットがないソフト、オープンソース
コミュニティが苦手とするソフト、そして、大手パッケージ会社も手を
出すメリットがないソフトです。


慶でも来期は「のこぎり入れ方パターン計算ソフト」のような
パッケージを作っていきます。

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[製造業の呪縛] これまでにパッケージについて触れた号
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これまで、パッケージソフトについて触れた号は次のとおりです。
参考にしてください。

第103号「パッケージソフト会社は何を売っているのか?」
http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html

第104号「立地さえ良ければ多少商品が悪くても売れてしまう」
http://www.kei-it.com/sailing/104-051205.html

第106号「パッケージがプログラマの職を奪うことはない」
http://www.kei-it.com/sailing/106-051219.html

第109号「パッケージ・ソフトが置かれている状況」
http://www.kei-it.com/sailing/109-060109.html


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次回以降の予告
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次号以降では次のようなテーマも取りげていきます。

労務系:
・雇用契約、裁量労働制、個人事業主

技術系:
・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー

外国系:
・中国は脅威か?


次号は、3月13日発行予定です。

乞うご期待!!

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