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January 10, 2006

ソフトウェアのコモディティ化が進むということ

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第109号 2005/1/9
▼ まえがき
▼ [製造業の呪縛] 3分の2は開発・実装に関連するサービス収入
▼ [製造業の呪縛] インドはサービスとしてのソフト開発に専念している
▼ [製造業の呪縛] パッケージ・ソフトが置かれている状況
▼ [製造業の呪縛] 安くて気の利いたものしか売れなくなる
▼ [製造業の呪縛] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第102号から「製造業の呪縛」シリーズを連載しています。

・「製造業の呪縛」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_maker_service.html 
 を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[製造業の呪縛] 3分の2は開発・実装に関連するサービス収入
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日経コンピュータ2006/1/9号にマイケル・クスマノ氏が書いた
「日本のソフトウェア産業の謎」という記事が載っています。

「製造業の呪縛」シリーズで私が言いたかったことと近いことが
書かれているので、今回その記事を引用しながら、これまでの
まとめをします。


第103号、第106号では、「ソフトウェア産業というと、ついつい
パッケージ・ソフトを思い浮かべてしまうが、実際にはインハウス
開発の方がはるかに大きい」ということを述べました。
( http://www.kei-it.com/sailing/103-051128.html
http://www.kei-it.com/sailing/106-051219.html 参照)

マイケル・クスマノ氏も同じようなことを言っています。

> ソフトウェア産業の3分の1は標準化された製品の販売、残りの3分の2は
> カスタマイズやITコンサルティングといったソフトウェア開発・実装に
> 関連するサービス収入である。

上記数字にはシステム運用管理やデータ・エントリといったサービスは
含まれていません。これらも含めると、サービス系の比重はさらに大きく
なります。


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[製造業の呪縛] インドはサービスとしてのソフト開発に専念している
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マイケル・クスマノ氏は、富士通、日立、NEC、CSK、NTTデータなどの
日本のITベンダーは従業員数や売上高では世界屈指のITベンダーだが、
「ソフトウェア企業というよりは、注文でソフトを生産するカスタム・
ショップであり、システム・インテグレータだ」と指摘しています。

ここまでは誰でも言うことですが、マイケル・クスマノ氏は、「それは
日本だけではない」ということを指摘しています。

> 欧州の大部分やインド、中国でも、パッケージ・ソフトの開発より、
> 顧客個別のニーズに応えるためのソフト開発のボリュームのほうが
> 大きい。例えばインドは、サービスとしてのソフト開発に専念
> している。


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[製造業の呪縛] パッケージ・ソフトが置かれている状況
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マイケル・クスマノ氏はパッケージ・ソフトが置かれている状況
について次のように書いています。

> 世界のパッケージ・ソフト市場は、急激な低価格化やセキュリティ問題、
> 優れたオープン・ソースの登場など、深刻な問題に直面しつつある。
> 現在、パッケージ・ソフト収入の源泉は、インストール・ベースの
> ライセンス料金から、保守サービス料金へと移っている


これは、第104号( http://www.kei-it.com/sailing/104-051205.html )で
私が言いたかったことです。

パッケージ・ソフトの保守サービスは、工業製品の保守サービスよりも
はるかにコストがかかります。
したがって、パッケージ・ソフトで長期的に成功するためには、次の
3つの方法しかないのです。

・マイクロソフトのような独占企業になって、自分の都合で保守サービスを
 打ち切れるようになる。

・保守サービスで金を取れるビジネスモデルを作る。
(例えば、オープンソースの保守サービスを売っているRed Hat
などの Linux ディストリビュータがこれにあたります。)

・保守サービスをセットにした製品企画をする。
(例えば、SAP R/3やオラクルEBSがこれにあたります。)

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[製造業の呪縛] 安くて気の利いたものしか売れなくなる
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オープン・ソースの台頭、パッケージ・ソフトの急速な低価格化により、
ソフトウェアはコモディティ(日用品)化します。
会計ソフトもCADソフトも既にコモディティ化しています。

コモディティ化とは、100円ショップ化するということです。
安いのは当たり前、安くて気の利いたものしか売れなくなるという
ことです。
パッケージ・ソフトだけでなく、カスタム開発もこの巨大な潮流に
引きずられて、価格が下落しています。

これは次のことを意味します。

ソフト会社が開発技術で儲けるためには、極端に安くできるような
優れた生産技術・ノウハウが必要となります。
マイケル・クスマノ氏も「ソフトウェアのコモディティ化が進む
ということは、ソフトウェア開発における効率の高さが極限まで
求められる」と言っています。

もしも、開発で儲けられないなら、気の利いたサービスで儲ける
ことを考えなければなりません。


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[製造業の呪縛] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ブルックスの法則を超えるもの
・贈与と交換
・ピアレビュー


次号は、1月16日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガについて
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創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は2006年1月7日現在、450名です。


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