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October 31, 2005

資産としてのソフトウェア

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第99号 2005/10/31
▼ まえがき
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の「ソフトウェア」
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替とは
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替のメリット
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の他の財務数字
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・10月28日(金)に羅針盤21( http://www.r-21.jp/ )主催「新会社法
 研修会」が開催され、本メルマガ読者からも6名が参加されました。
 新会社法は平成17年6月29日に成立しましたが、施行時期は未定です。
 非常に大幅な改正であり、様々な可能性を感じさせるものとなっています。
 本メルマガでもそのうちテーマとして取り上げようと思います。

・第97号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを連載しています。

・「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_furikae.html を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の「ソフトウェア」
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今週号では、本シリーズの名前にもなっている「ソフトウェア振替」
について解説します。


上場しているほとんどのソフトウェア会社は、自社のホームページで
財務諸表を公開しています。

例えば、NRI(野村総合研究所)、CEC、富士ソフトABCの
貸借対照表、損益計算書は下記ページで公開されています。

NRI http://www.nri.co.jp/ir/koukoku.html
CEC http://www.cec-ltd.co.jp/ir_info/p03/index.html
富士ソフトABC http://www.fsi.co.jp/ir/koukoku/


それらを参照すれば、貸借対照表の無形固定資産の欄に「ソフトウェア」
という項目があることに気付きます。
平成16年度の3社のソフトウェアの金額は次のとおりです。

 NRI 173億円
 CEC 5億円
 富士ソフトABC 2億円

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[ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替とは
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この「ソフトウェア」とは何でしょうか?

NRIの財務諸表の注記には、「販売目的ソフトウェア」または
「顧客サービス提供目的の自社利用ソフト」だと書いてあります。
つまり、自社パッケージ商品、ASPサービスプログラム、自社内で
システム開発用に使用するツールなどのことです。

NRIが富士ソフトABCやCECに比べてソフトウェアの金額が
はるかに大きいのは、NRIが自社製品開発型、富士ソフトABCや
CECが要員派遣型ということなのでしょう。

自社製品開発には多くの経費がかかます。
そして、請負開発の場合は納品後2ヶ月以内に開発費用が回収できますが、
自社製品開発に要した費用の回収には長い時間がかかります。

したがって、自社製品開発を資産として計上し、それに要した費用は
その資産の減価償却費として3年または5年に分割して計上することが
できるのです。
(「販売目的ソフトウェア」は3年、「顧客サービス提供目的の自社利用
ソフト」は5年で償却することができます。)

損益計算書の売上原価の中から、自社製品開発に要した費用分を
貸借対照表の資産欄に持ってくることを「ソフトウェア勘定振替」
または「ソフトウェア振替」と呼びます。

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[ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替のメリット
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ソフトウェア振替には非常に大きなメリットがあります。

もしもこれが無ければ、パッケージの開発をした年度は大幅な赤字に
なってしまいます。
また、次の年度でパッケージが売れて大きな利益が出た場合は、
納税額も膨らんでしまいます。

ソフトウェア振替をすれば、開発した年度も赤字になりません。
また、次の年に利益が出ても、減価償却費で経費が膨らむので、
利益が減り、納税額を減らすことができます。

しかし、ソフトウェア振替には有害な副作用もあります。
この点については次号以降で解説します。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の他の財務数字
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富士ソフトABC、NRI、CECの平成16年度の財務諸表に出てくる
他の数字も比較してみました。


(1)資本金
富士ソフトABC 262億円
NRI      186億円
CEC       66億円

(2)売上高
富士ソフトABC 990億円
NRI     2,300億円
CEC      342億円

(3)税引前当期利益
富士ソフトABC 62億円
NRI      160億円
CEC      23億円

(4)借入金(短期借入金、長期借入金の合計)
富士ソフトABC 359億円
NRI       0?
CEC      186億円


NRIの借入金は平成14年度の決算書には4億円と記載されてますが、
平成15年度、平成16年度の決算書には見当たりません。
平成15年度から無借金経営になったのでしょうか?

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[ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ソフトウェア振替という麻薬
・増資


次号は、11月7日発行予定です。

乞うご期待!!

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ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年10月30日現在、431名です。


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