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October 2005

October 31, 2005

資産としてのソフトウェア

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第99号 2005/10/31
▼ まえがき
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の「ソフトウェア」
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替とは
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替のメリット
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の他の財務数字
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・10月28日(金)に羅針盤21( http://www.r-21.jp/ )主催「新会社法
 研修会」が開催され、本メルマガ読者からも6名が参加されました。
 新会社法は平成17年6月29日に成立しましたが、施行時期は未定です。
 非常に大幅な改正であり、様々な可能性を感じさせるものとなっています。
 本メルマガでもそのうちテーマとして取り上げようと思います。

・第97号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを連載しています。

・「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを最初から読みたい方は、
 http://www.kei-it.com/sailing/back_furikae.html を参照してください。

・バックナンバーはブログでも公開しています。
 ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の「ソフトウェア」
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今週号では、本シリーズの名前にもなっている「ソフトウェア振替」
について解説します。


上場しているほとんどのソフトウェア会社は、自社のホームページで
財務諸表を公開しています。

例えば、NRI(野村総合研究所)、CEC、富士ソフトABCの
貸借対照表、損益計算書は下記ページで公開されています。

NRI http://www.nri.co.jp/ir/koukoku.html
CEC http://www.cec-ltd.co.jp/ir_info/p03/index.html
富士ソフトABC http://www.fsi.co.jp/ir/koukoku/


それらを参照すれば、貸借対照表の無形固定資産の欄に「ソフトウェア」
という項目があることに気付きます。
平成16年度の3社のソフトウェアの金額は次のとおりです。

 NRI 173億円
 CEC 5億円
 富士ソフトABC 2億円

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[ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替とは
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この「ソフトウェア」とは何でしょうか?

NRIの財務諸表の注記には、「販売目的ソフトウェア」または
「顧客サービス提供目的の自社利用ソフト」だと書いてあります。
つまり、自社パッケージ商品、ASPサービスプログラム、自社内で
システム開発用に使用するツールなどのことです。

NRIが富士ソフトABCやCECに比べてソフトウェアの金額が
はるかに大きいのは、NRIが自社製品開発型、富士ソフトABCや
CECが要員派遣型ということなのでしょう。

自社製品開発には多くの経費がかかます。
そして、請負開発の場合は納品後2ヶ月以内に開発費用が回収できますが、
自社製品開発に要した費用の回収には長い時間がかかります。

したがって、自社製品開発を資産として計上し、それに要した費用は
その資産の減価償却費として3年または5年に分割して計上することが
できるのです。
(「販売目的ソフトウェア」は3年、「顧客サービス提供目的の自社利用
ソフト」は5年で償却することができます。)

損益計算書の売上原価の中から、自社製品開発に要した費用分を
貸借対照表の資産欄に持ってくることを「ソフトウェア勘定振替」
または「ソフトウェア振替」と呼びます。

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[ソフトウェア振替という麻薬] ソフトウェア振替のメリット
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ソフトウェア振替には非常に大きなメリットがあります。

もしもこれが無ければ、パッケージの開発をした年度は大幅な赤字に
なってしまいます。
また、次の年度でパッケージが売れて大きな利益が出た場合は、
納税額も膨らんでしまいます。

ソフトウェア振替をすれば、開発した年度も赤字になりません。
また、次の年に利益が出ても、減価償却費で経費が膨らむので、
利益が減り、納税額を減らすことができます。

しかし、ソフトウェア振替には有害な副作用もあります。
この点については次号以降で解説します。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 大手ソフト会社の他の財務数字
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富士ソフトABC、NRI、CECの平成16年度の財務諸表に出てくる
他の数字も比較してみました。


(1)資本金
富士ソフトABC 262億円
NRI      186億円
CEC       66億円

(2)売上高
富士ソフトABC 990億円
NRI     2,300億円
CEC      342億円

(3)税引前当期利益
富士ソフトABC 62億円
NRI      160億円
CEC      23億円

(4)借入金(短期借入金、長期借入金の合計)
富士ソフトABC 359億円
NRI       0?
CEC      186億円


NRIの借入金は平成14年度の決算書には4億円と記載されてますが、
平成15年度、平成16年度の決算書には見当たりません。
平成15年度から無借金経営になったのでしょうか?

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[ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ソフトウェア振替という麻薬
・増資


次号は、11月7日発行予定です。

乞うご期待!!

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目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年10月30日現在、431名です。


本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非
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October 24, 2005

無借金経営なら赤字の方がいい

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第98号 2005/10/24
▼ まえがき
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 無借金経営なら赤字の方がいい
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 借入れは節税を封じ込める
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 先週号の訂正
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・第97号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを開始しています。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 無借金経営なら赤字の方がいい
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多くの人は「会社は利益を出した方がいい」と思っています。
しかし、もしも無借金経営なら、「会社は利益を出さない方がいい」が
正解なのです。

利益が出てその40%を税金に取られるよりも、儲かったお金を帳簿外の
資産にして、決算書上は赤字基調にしておいた方が有利なのです。

儲かったお金を帳簿外の資産にする方法として、次の二つが考えられます。

(1)全額損金型の保険。

(2)岡村吏郎氏が「会社にお金が残らない本当の理由」「裏帳簿のススメ」
 などで提唱している「裏金」。
 (名目は役員報酬にし、経費化するが、役員個人が使えないよう
 別口座にして管理するという方法。)

そのようにして貯えられた帳簿外資産は、多くの会社が借入れを
必要とする局面(事業拡大時の投資、貸し倒れ損失の発生など)で、
営業外収益として帳簿内に還流され、無借金経営を維持します。

またその営業外収益は、全て経費に使われてしまうので、やはり
決算上は赤字基調となり、税金を納める必要はありません。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 借入れは節税を封じ込める
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借入れがある場合はどうでしょうか。

第97号で記したとおり、借入れの返済は経費ではありません。

営業利益であろうと、営業外利益であろうとその利益が返済に
使われた場合は、その利益分は税金がかかってしまいます。

それでも納税を阻止しようとすると、別途その利益分の経費を作ら
なければなりません。
上記(1)(2)の方法のどちらを選ぶにしても、返済分と裏金分の二倍の
現金が必要になるわけで、現実的には無理です。


私は会社を始めたころ、他社が何故決算上の利益を出そうとするのか
不思議でした。
利益の40%を税金に取られてしまうなら、その分、何故社員に還元
しないのか、あるいは、何故役員報酬を増やし次の投資に備えないのか
理解できませんでした。

そして、そのころの私は、「決算上の利益を多く出している会社は、
外部株主が入っているため配当を出さねばならない会社だろう」と
思っていました。(配当は税引き後の利益から出されます。)

しかし、慶がある程度大きくなり、借入れをするようになったとき、
現金を返済に使うと、その分決算上も利益が出てしまうことに気付きました。
借入れは節税を封じ込めるのです。

また、借入れをするようになると、銀行からの評価を常に意識しなければ
ならなくなります。
そして、銀行は決算書のみで融資金額も融資金利も決定します。
「決算書は赤字だけど本当は帳簿外資産があります」と言ったら、
逆に怪しい会社だと思われ、評価を下げられるでしょう。

次のような言い方もできます。

決算上利益が出ているように見えても、借入れの多い会社は利益が
返済に充てられるので、自由に使える金は少ない。
社員への還元、新規投資に回される分は少ないのです。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 先週号の訂正
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第97号で正確でない記述がありましたので、訂正します。

次のように書きました。

> 借入れの返済は経費ではありません。
> したがって、363万円経常利益が出て、その全額を返済に充てたため、
> 手持ちの現金が無くなっても、363万円に対する税金は払わなければ
> なりません。

しかし、金利分30万円は営業外費用になるので、「元本返済分333万円
に対する税金は払わなければなりません」がより正確です。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・ソフトウェア振替
・増資


次号は、10月31日発行予定です。

乞うご期待!!

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October 17, 2005

完済には「元本1.4倍+金利分」の経常利益が必要

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第97号 2005/10/17
▼ まえがき
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] シリーズで書きたいこと
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 税金のない世界での借入れと返済
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 税金のある世界での借入れと返済
▼ [ソフトウェア振替という麻薬] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

・今週号から「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズを開始します。

・第94号でご案内した「新会社法研修会」
 ( http://www.kei-it.com/sailing/94-050926.html )
 には本メルマガ読者から5名の申し込みがあり、全員無料ご招待
 しました。
 まだ、1,2名なら追加可能なので、受講を希望される方は、
 office@kei-ha.co.jp にメールでお申し込みください。

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[ソフトウェア振替という麻薬] シリーズで書きたいこと
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「ソフトウェア振替という麻薬」シリーズでは次のようなことを
書きたいと思っています。

(1)いくらまでなら借りていいの?
中小企業は通常は銀行からの借入れで資金を調達します。
この借入れの限度額はいくらでしょうか?
銀行が貸してくれるという限度額ではなく、会社として借りてもいい
限度額です。

(2)借入れは納税額を増やす
適正な限度額を決定する要素は、返済能力であり、返済能力とは
どれだけ利益を上げられるかということです。
しかし、100万円の返済をするために100万円利益を出せばよいと
いうわけではなく、税金を考慮すると、140万円利益を出さなければ
なりません。

(3)ソフトウェア振替とは
パッケージや独自サービスを作り出そうとすると、銀行からの借入れは
増大し、それに比例して返済額と納税額は膨らんでいきます。
この納税額を抑える手法として「ソフトウェア振替」があります。
「ソフトウェア振替」とは開発したソフトウェアを資産として計上する
手法であり、返済のかなりの部分が減価償却費として経費化されて、
納税額が減ります。
しかし、このソフトウェア振替には、減価償却というものが一般に持つ
有害な副作用があります。

(4)増資
資金調達のもう一つの手法として、増資があります。
しかし、よほど利益率が高くないとIPOはできないし、数千万円の現金を
持っている中小企業経営者などほとんどいないでしょう。
したがって、作り出そうとしている商品が大きな投資を必要として
いる場合には、大手との資本提携による増資という選択肢もあり得るのです。

(5)その他
米国ソフトウェア会社はソフトウェアを資産として計上することは嫌う
という話も聞きます。その真相は?


借入れ、投資、資産、原価償却、資本金、M&A、といったことを
テーマとするので、体系的には「金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社」
シリーズの中のサブシリーズに位置づけられます。

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[ソフトウェア振替という麻薬] 税金のない世界での借入れと返済
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話を分かりやすくするために、まず税金のない世界で考えてみましょう。

銀行から1,000万円を返済期間3年で借りたとしましょう。
3年間毎年、元本約333万円を返済するだけでなく、金利も払わなければ
なりません。
金利は元本が減るにしたがって減りますから、大雑把に1年目30万円、
2年目20万円、3年目10万円としましょう。

1年目は元本分333万円+金利分30万円=合計363万円 を銀行に支払わな
ければなりません。

これはたとえ363万円経常利益を出しても会社には現金が残らないことを
意味します。再投資にまわせるお金は0円です。

もしも経常利益が363万円に満たなければ、返済するために新たに借入れを
起こさなければなりません。

それでも30万円の金利分の利益が出ていれば、返した分だけ新たに借入れを
すればよいので、元本は増えません。
もしも30万円の経常利益すら無ければ、金利分も新たに借入れなければ
ならないので、借入れの元本は増え続けることになります。
(現実には新たな借入れをするためには保証金や手数料が発生するので、
元本を増やさないためだけでも、約40万円の経常利益が必要となります。)


また、上記は年利3%程度を前提としています。
金利が今後上昇しそうだという話は、第81号「借入れ依存体質の危険性」
http://www.kei-it.com/sailing/81-050627.html を参照してください。)

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[ソフトウェア振替という麻薬] 税金のある世界での借入れと返済
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次に税金を考慮してみましょう。

借入れの返済は経費ではありません。
したがって、363万円経常利益が出て、その全額を返済に充てたため、
手持ちの現金が無くなっても、363万円に対する税金は払わなければ
なりません。

税率を40%とすると、363万円×40%=146万円 の税金を払わなければ
ならないのです。

したがって、新たに借入れをせずに返済するためには最低509万円の
経常利益が必要ということになります。

もしも、経常利益が509万円に満たなければ、税金を払うために新たな
借入れをしなければならないのです。

今の日本でひとたび多額の借入れをして、元本を完済しようとすれば、
「元本の1.4倍+完済までに要する年月の金利」分の経常利益が必要と
なります。


会社として借りてもいい限度額は、今後予想される経常利益によって
決定されます。

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[賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・会社として借りてもいい限度額(もう少し踏み込んで)
・ソフトウェア振替
・増資


次号は、10月24日発行予定です。

乞うご期待!!

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October 11, 2005

起業する若い人達へ

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第96号 2005/10/10
▼ まえがき
▼ [賃金決定の仕組み] 空洞化する大手ソフト会社
▼ [賃金決定の仕組み] 定着率が悪く、中途採用も難しい
▼ [賃金決定の仕組み] 起業する若い人達への苦言
▼ [賃金決定の仕組み] 新しいビジネスモデル対応型成果主義の可能性
▼ [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。

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[賃金決定の仕組み] 空洞化する大手ソフト会社
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先週、M&A仲介を専門としている会社の営業マンが来社しました。
以下はその営業マンが語ったことの要約です。


 上場している大手IT企業の業績は現在下降気味です。
 ライブドアなどのIT系ベンチャー企業は一見好調ですが、彼らは
 実態はIT企業ではありません。
 ITサービスやシステム開発で儲けているわけではなく、金融で儲け
 ているのです。

 上場しているシステム開発会社は、知名度と信用があるので、
 仕事はいくらでも取れます。しかし、仕事をこなせる人がいません。
 大手システム開発会社でも仕事は常駐型が主流ですが、常駐させる
 技術者がいません。


そして、その営業マンは「実は、慶のように人がある程度いる中小
ソフト会社を買収したがっている上場企業があるんですが・・・」
と切り出しました。

買収の話はお断りしましたが、この話は、大手ソフトウェア会社が
人材面で非常に困っていることを示しています。

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[賃金決定の仕組み] 定着率が悪く、中途採用も難しい
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大手ソフトウェア会社に人がいない理由は下記の二つです。
・定着率が悪い。
・経験者の中途採用が難しい。

そしてこの二つの根っ子は同じなのです。


第83号「個人事業主が増えた理由」で、技術の標準化とPCの劇的な
高性能化・低価格化が個人事業主を増やしたと述べました。
( http://www.kei-it.com/sailing/83-050711.html 参照)

同じ理由から、転職も容易になりましたし、個人事業主に毛の
生えた程度の小規模な会社設立も容易になりました。

「うちは定着率が高いです」というソフトウェア会社の多くは、
「つぶしの利かない」技術を使って開発している会社です。
制御系に多いです。

ある程度の規模以上で、標準的な技術を使って開発している会社の
定着率はよくありません。
しかもようやく一人前になったレベルの人たちが辞めていきます。

彼らの中には、より待遇のいい会社の正社員になる人もいますが、
自由と独立を求めて、契約社員、個人事業主、起業という選択を
する人も少なくありません。

また、やはり同じ理由で、経験者の中途採用も難しくなっています。
よほど魅力的な待遇を示さないと経験者の中途採用は不可能ですし、
しかも、そのように高給を出して採用した技術者は必ずしも優秀では
ありません。
なぜなら、技術力に自信のある人ほど、個人事業主や起業の選択を
しやすいからです。

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[賃金決定の仕組み] 起業する若い人達への苦言
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ここで起業する若い人達にほんの少し苦言を呈しておきましょう。

純粋にプログラムが好きでプログラムに専念したい、プログラム
について様々な経験をしたい、また、報酬は個人売上に応じた
成果主義でもらいたいという理由で個人事業主になり、その延長線上で
会社を起こすことは理解できます。

しかし、ヒルズ族を夢見て、お金のためだけに起業したなら、後で
「こんなはずじゃなかった」と思うでしょう。

冒頭に紹介したM&A仲介業者が言うように、ヒルズ族はITサービスで
儲けているわけでも、システム開発で儲けているわけでもありません。
金融で儲けているのです。

ホリエモンの「起業しろ!」という言葉を真に受けて起業した若い
人たちは、残念ながら、ホリエモンのように金融で儲けることは
できません。
多少プログラムが書けても、ちょっとしたアイデアを持っていても、
稼げるお金というものは高が知れているのです。

仮に、彼がものすごく運がよく、(例えば株で大儲けをして)ヒルズ族の
仲間入りしたとしましょう。
喜びもつかの間、彼には地獄が待っているかもしれません。
現在ヒルズ族が我が世の春を謳歌していられるのは、バブル崩壊
以降の日本のデフレ経済が前提です。
日本経済がひとたびインフレに振れたとたんに、彼らは元気がなくなる
でしょう。
インフレの時に元気だったダイエーがデフレになって潰れたのと
ちょうど逆のことが、ヒルズ族にも早晩起きる可能性が高いのです。

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[賃金決定の仕組み] 新しいビジネスモデル対応型成果主義の可能性
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今度はソフトウェア会社の側から見てみましょう。

技術者が自由と独立を夢見て起業することが自然なことなら、それを
制度として積極的に認めていくべきではないでしょうか?

その一つの方向は、個人事業主のエージェントになるという方向です。
これについては、第87号「ICグループは吉本興業や大野事務所に学べ」
( http://www.kei-it.com/sailing/87-050808.html )
を参照してください。

もう一つは第95号で述べた「新しいビジネスモデル対応型の成果主義」
( http://www.kei-it.com/sailing/95-051003.html 参照)の発展型です。

「新しいビジネスモデル対応型の成果主義」で役職者の責任と権限を
明確に定義していくと、その延長線上に横請け型の分社化があるような
気がします。
(横受け型アウトソーシングについては第78号を参照してください。
http://www.kei-it.com/sailing/78-050606.html


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[賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号は次のようなテーマで書こうかなと思っています。

・インターネットで稼ぐことは何故難しいか?


次号は、10月17日発行予定です。

乞うご期待!!


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本メルマガについて
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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
創刊号 http://www.kei-it.com/sailing/01-031208.html で述べたとおり、
本メルマガのコンセプトは「読みものとしても面白い慶の事業計画」であり、
目的は「事業計画の背後にある基本的な考え方を語ること」です。

したがって、第一の読者としては、慶の社員(正社員・契約社員)及び
慶と契約している個人事業主を想定しています。
彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年9月24日現在、428名です。


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October 03, 2005

新しいビジネスモデル対応型成果主義

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第95号 2005/10/03
▼ まえがき
▼ [賃金決定の仕組み] 総人件費抑制目的型の成功の条件
▼ [賃金決定の仕組み] 新しいビジネスモデル対応型成果主義
▼ [賃金決定の仕組み] 管理職ポストへの登用、降格の仕組みが中心
▼ [賃金決定の仕組み] 次回以降の予告


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まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

第86号から成果主義型賃金制度をテーマとしています。
このテーマはあと数回続きそうなので、また、一旦終了しても、
断続的に続きそうなので、「永久運動の設計」シリーズから独立させて
「賃金決定の仕組み」シリーズとしました。

「賃金決定の仕組み」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_salary.html を参照してください。

バックナンバーはブログでも公開しています。
ブログ: http://kei-it.tea-nifty.com/sailing/

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[賃金決定の仕組み] 総人件費抑制目的型の成功の条件
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城繁幸氏は「日本型『成果主義』の可能性」(東洋経済新報社)で
成果主義を導入する目的は、大きく分けると次の二つのパターンになる
と指摘しています。

(1)総人件費を抑制し、優秀な人材にのみ報いるシステムをつくる。
(2)優秀な人材をどんどん抜擢し、新しいビジネスモデルに対応する。


成果主義を導入する目的としてよく言われることは(1)の方です。
例えば次のように。

 年功制や職能資格制度は給料が基本的に右肩上がりになる。これらは、
 多くの日本企業が右肩上がりに成長していた時代にはうまく機能したが、
 バブル崩壊以降、企業業績が低迷する中では維持できなくなってきた。
 一方、企業としての競争力強化は以前にも増して強く求められている。
 そのため、総人件費の抑制を図り、且つ、成果を出した人にはより多く、
 出していない人にはより少なく配分すべきだ。

このタイプの成果主義については、多くの論者が「賃下げの口実
として成果主義を悪用している」と批判しています。

しかし、城繁幸氏は会社の状況によっては、総人件費抑制目的の
成果主義導入も必要な場合があり、また、それが成功する場合もあると
言っています。そして、下記が成功の条件です。

> 会社の財務状況から社長の給与まで、一定の情報は社員に公開すべきだ。
> ・・・(中略)・・・
> 「会社の置かれている状況から考えて、賃金体系の抜本的な見直しは
> 避けられない」ということを、従業員にも納得してもらうことが、
> 制度見直しの第一ステップだ。
> そのうえで世代間のギャップが発生しないよう、すでに高い賃金を
> 得ている世代の基本給の見直しも必須だ。
>
>        (城繁幸著「日本型『成果主義』の可能性」より)

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[賃金決定の仕組み] 新しいビジネスモデル対応型成果主義
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一方、(2)の「優秀な人材をどんどん抜擢し、新しいビジネスモデルに
対応する」は、正しく慶が目指すべき方向です。

第85号「M&Aが大好きな会社」で、ポスト産業資本主義の利益の源泉
である「違い」の耐用年数が短いが故に金持ち企業はM&Aに狂奔する
という話を書きました。
( http://www.kei-it.com/sailing/85-050725.html 参照)

お金の無い中小企業は、金持ち会社がM&Aでやることを社内で
やらなければなりません。
金持ち会社が有望なシーズを持っている小さな会社を札束で買い漁る
のに対し、お金の無い中小企業は社内で次々とシーズを生み出さな
ければならないのです。

そして、第85号では書きませんでしたが、M&Aはそれほどいいもの
ではありません。M&Aに成功した後のその事業の成功確率は決して
高いものではありません。
もしも可能なら社内で生み出す方がよいのです。

慶はこれまでに多くのビジネスを立ち上げて来ました。
・自社製Javaフレームワークによる請負開発事業
 ( http://www.kei-ha.co.jp )
・ITサービス事業 ( http://www.kei-it.com )
・人材紹介事業 ( http://www.k-bank.jp )
・携帯&PC ECサイト事業 ( http://kcode.jp/kcode/index.html )
などです。

どれも新しいビジネスモデルではなく、既存のビジネスモデルです。
しかし、どれも他社とは一味違っていることは確かです。

今後も様々な新しいビジネスモデルを立ち上げていかなければなりません。
なぜなら、岩井克人氏が言うように、ポスト産業資本主義の時代とは、
まさに意識的な違いからしか利益が生まれない時代であるからです。

それを支える仕組みとして、新しいビジネスモデル対応型の成果主義が
あります。

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[賃金決定の仕組み] 管理職ポストへの登用、降格の仕組みが中心
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新しいビジネスモデル対応型の成果主義について、城繁幸氏は次の
ように説明しています。

> 「新しいビジネスモデル対応型の成果主義」を目指す場合、極端な話、
> 一般従業員は目標管理などやる必要はまったくない(従来の能力給
> ベースの相対評価で十分だ)。
> もともと、目標管理制度は「十分な裁量を持ったポストにある人間向き」
> の評価制度だ。
> だからそういったポストにある人間には、常に成果を求め、地位に
> 甘んじることがないシステムをつくることが最大の課題になる。
> その場合、管理職ポストへの登用、降格の仕組みが中心であって、
> けっして一般従業員の成果だの目標だのというテーマではないはずだ。
>
>        (城繁幸著「日本型『成果主義』の可能性」より)

私も全く同感です。

付け加えるなら、「十分な裁量を持ったポストにある人間」とは、
ビジネスモデルの責任者であり、大企業では課長クラスでしょうが、
中小企業では事業部長、部長クラスです。

また、ここで求められる成果は売上・利益の大小だけではありません。
ビジネスモデルの社会的な価値や技術的な価値も含まれています。

そして、管理職ポストへの登用の仕組みは、正社員だけでなく、
契約社員、個人事業主にも開かれているべきです。
もしもその人にアイデアと意欲があるなら・・・。

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[賃金決定の仕組み] 次回以降の予告
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次号以降は次のようなテーマで書く予定です。

・成果主義のまとめ
・社内起業

あるいは、久々に技術的なテーマを取り上げるかもしれません。
例えば、

・オープンソース


次号は、10月10日発行予定です。

乞うご期待!!

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第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。
「まぐまぐ!」での読者数は平成17年9月24日現在、423名です。


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