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July 25, 2005

M&Aが大好きな会社

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_/_/_/_/_/_/_/  ソフトウェア業界 新航海術  _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第85号  2005/07/25
  ▼  まえがき
  ▼  [永久運動の設計] M&Aが大好きな会社
  ▼  [永久運動の設計] コアになるアイデアは個人からしか生まれない
  ▼  [永久運動の設計] 成功確率が低く、成功しても寿命が短い
  ▼  [永久運動の設計] インターネットは規模の利益が大きく作用する
  ▼  [永久運動の設計] M&Aする側の論理・される側の論理
  ▼  [永久運動の設計] 次回以降の予告

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  まえがき
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こんにちは、蒲生嘉達(がもう よしさと)です。

「永久運動の設計」シリーズは、ソフトウェア会社の最適な組織
について探っていくシリーズです。

「永久運動の設計」シリーズを最初から読みたい方は、
http://www.kei-it.com/sailing/back_forever.html を参照してください。

今週号は金持ち会社がM&Aをする理由を解説します。

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  [永久運動の設計] M&Aが大好きな会社
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先月GMOメディア社 http://www.gmo.jp/ を訪問しました。
システム部門の方とお会いし、今後慶が取引可能かどうか打ち合わせ
しました。

その際、GMOメディア社の担当者から頂いた名刺の裏には、GMOグループが
行っている事業のロゴが数十個印刷されていました。
「GMOグループ概要」( http://www.gmo.jp/profile/group_outline.html )
に載っているロゴの全てです。

これらの事業はGMOインターネット社が自前で立ち上げたものではありません。
全て会社買収( M&A:Mergers and Acquisitions )で手に入れたものです。

「うちはM&Aが大好きな会社なんですよ」とGMOメディア社のシステム
部門の方もおっしゃっていました。

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  [永久運動の設計] コアになるアイデアは個人からしか生まれない
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楽天、ライブドア、サイバーエージェントなど、上場して莫大な資金を
手にした金持ち会社は皆M&Aが大好きです。
これらの金持ち会社は何故M&Aが大好きなのでしょうか?

それはインターネットビジネスの次のような性格から来ています。

(1)コアになるアイデアは個人からしか生まれない
インターネットビジネスで成功している例として
トクー!トラベルがあります。
通常のインターネットビジネスでは、利用者は無料にして、
企業の側からお金を取りますが、トクー!は利用者から会費を
徴収しています。
ちなみに私もプレミアム会員になって、会費を払っています。
会員から金を取って成功している例を、私は他に思いつきません。
トクー!はよくできたビジネスモデルなのです。

このような優れたビジネスモデルのコアになるアイデアは、
個人の才能、ノウハウ、人脈、さらには運からしか生み出せません。
大企業が金と時間をかけたら生み出せるというものではないのです。
ライブドアがいくら金を持っているからといっても、自前では生み
出せないのです。
組織が大きくなれば、逆に、新規なアイデアは生まれなくなって
しまいます。

> ほとんどの大企業で、新規事業開発室が新規事業の開発に成功した
> ためしがない。
>          (森永卓郎著「リストラと能力主義」より)

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  [永久運動の設計] 成功確率が低く、成功しても寿命が短い
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(2)成功確率が低い
我々はAmazon.comやトクー!のようにヒットして利益を上げている
ビジネスしか目にすることがありません。
しかし、我々が目にすることすらなく、消えていったビジネスの方が
はるかに多いのです。
ヒットすれば莫大な利益を手にできますが、実際には、ヒットせず
開発コストも回収できない投資のほうが圧倒的に多いのです。

> 欧米というモデルがあり、技術開発の目標がはっきりしている場合
> には、どの分野に投資をして何をやればよいかがはっきりしていた。
> しかし、いまは何を開発すれば市場が受け入れるのかが、まったく
> 見えない時代である。
>          (森永卓郎著「リストラと能力主義」より)

(3)ビジネスの寿命が短い
上述のように成功確率は低いのに、その成功の寿命は短いのです。
ブログがはやったかと思うと、次はソーシャルネットワークです。
トクー!だって5年後も同じ形で存続しているとは思えません。
インターネットビジネスはアイデアがベースになっているだけに、
すぐにマネされて、いずれは「当たり前」のものになってしまい、
利益を生み出せなくなってしまうのです。

> 産業資本主義の時代において、製鉄会社が建設した溶鉱炉、
> 造船会社が建設した造船所、石油精錬会社が建設した製油施設は、
> 20年も30年も利益を生みだし続けてくれます。・・・(中略)・・・
> これに対して、ポスト産業資本主義の利益の源泉である「違い」の
> 耐用年数は、短い。
>           (岩井克人著「会社はだれのものか」より)

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  [永久運動の設計] インターネットは規模の利益が大きく作用する
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(4)インターネットは規模の利益が大きく作用する
一方、インターネットは規模の利益が大きく作用する世界でもあります。
アイデアは個人にしか生み出せなにのに、普及させる段階では莫大な
資金が必要となります。
ヒットする目処がついたら、模倣者に追いつかれないように全速力で
走り抜けなければならないのです。
ここで、組織力、資金力が必要となります。
個人や小さな企業にはこれがありません。

(第48号「巨大にならなければならない理由」
http://www.kei-it.com/sailing/48-041108.html 参照。)

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  [永久運動の設計] M&Aする側の論理・される側の論理
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そこでM&Aが登場します。

M&Aをする金持ち会社にしてみれば、新規ビジネスを一から自分達で
作り上げるよりも、成功する兆しを見せている小さな会社を大金
(彼らにしてみれば「はした金」)を出して、買収してしまった方が
楽なのです。

また、買収される企業にしても、「自前で普及させるのは大変だし、
(彼らにとっては)夢のような大金でアイデアを売れるなら、その方が得」
という思惑が働きます。

しかし、金持ち会社がM&Aに成功し、豊富な資金力、組織力で
ビジネスを軌道に乗せたとしても、上述(3)のようにビジネスの寿命が
短いために、そのビジネスでいつまでも利益をあげられるわけでは
ありません。
次から次へと新しいサービスを立ち上げていかなければならないのです。
したがって、次から次へとM&Aを繰り返さなければならないのです。

第84号では、「今後は人材登録型の業務請負をやる大手派遣会社とそれに
登録している個人事業主が、ソフトウェア業界の大きな勢力になっていく
であろう」という予測を述べました。

今週号でお話したことは、システム開発そのもののノウハウで生きていこう
としているソフトウェア会社にとっては、直接的には関係のない世界です。
システム開発そのもののノウハウは時代によってあまり変わるものでは
ないからです。
(第12号「ソフトウェア技術者の幸福:難しさが市場を守る」
http://www.kei-it.com/sailing/12-040223.html 参照。)

しかし、「金持ちをますます金持ちにする」デフレ経済のもとで、
M&Aする側の金持ち会社はますます強大になり、日本の経済、社会、
そしてソフトウェア業界にも大きな影響を与えるようになってきています。
システム開発そのもののノウハウで生きているソフトウェア会社も
彼らと付き合う機会は増えてくるはずです。

また、独自サービスやパッケージ商品で生きていこうとするソフトウェア
会社にとっては、今週号でお話した世界は近しい世界です。

・コアになるアイデアは個人からしか生まれない。
・成功確率が低く、成功しても寿命が短い。
・M&Aと親しい関係にある。

という点において・・・。

慶としてもこれまでのノウハウ・資産を生かして、様々な独自
サービスを立ち上げていきたいと考えています。

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  [永久運動の設計] 次回以降の予告
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次号以降で下記のことを書いていきます。

・創造的な技術者が個人的な能力で牽引する会社は短期的には成功するが、
 長期的には息切れする。

・「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」方式の会社が長期的には成功する。
 でも、それをやるためには、個人ではなく組織が必要である。

・技術の標準化が引き起こす人材流動化は正社員の給与体系にも影響を
 与える。成果主義型報酬体系とは正社員の社内個人事業主化である。

・M&Aは成功するか?

次号は、8月1日発行予定です。

乞うご期待!!

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本メルマガは2003年12月8日に創刊されました。
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彼らには慶社内のメーリングリストで配信しています。

また、多くのソフトウェア会社・技術者が直面している問題を扱っているので、
ソフトウェア会社の経営者、管理者、技術者にとっても参考になると思い、
第33号(2004年7月19日号)からは「まぐまぐ!」で一般の方々にも公開する
ことにしました。

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