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October 2004

October 24, 2004

超巨大企業の時代

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第46号 2004/10/25
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 巨大組織がかかりやすい病気
▼ [永久運動の設計] 大企業が有利でなくなる理由
▼ [永久運動の設計] 超巨大企業の時代へ
▼ [永久運動の設計] 次回以降の予告


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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは2003年12月8日に創刊され、第32号(2004年7月12日号)
までは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している個人
事業主の方々のみに配信していましたが、第33号からは一般の方々
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発行者Webサイト: http://www.kei-it.com/sailing/ で、
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読者数が増えれば、ソフトウェア業界の情報発信基地へと発展させていき、
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本メルマガの内容に興味を持つであろう方をご存知なら、是非
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[永久運動の設計] 巨大組織がかかりやすい病気
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第45号( http://www.kei-it.com/sailing/45-041018.html )では
「規模の経済」「範囲の経済」の解説をしました。

一般に大企業は規模が大きくなり、範囲が大きくなる方が、生産費用が
低下します。
多くの企業が本能的に規模を拡大したがり、多角化したがる理由は
実はここにあるのです。

もちろん、組織が大きくなることによるデメリットもあります。
非効率になり、共同体化し、鈍重になっていくのです。

堺屋太一氏は「組織の盛衰」で、豊臣家、帝国陸海軍、日本石炭産業を
例にあげて巨大組織が崩壊していく様を解説しています。
組織は巨大化すると、次のような病気にかかりやすいのです。

(1)人事圧力シンドローム
社員からの昇進・賃上げ要求が強まりすぎると、無謀な事業拡大を
してしまうこと。(豊臣秀吉の朝鮮出兵のように)

(2)共同体化による機能の低下
組織としての機能よりも、構成員の満足と組織そのものの拡大を
求めるようになること。(帝国陸海軍のように)

(3)環境への過剰適応・成功体験への埋没
ある環境で成功し、その環境に過剰適応してしまうと、環境が変
わって業績が悪化しても、環境変化に適応できなくなること。
(日本石炭産業のように)

身近な大企業や公官庁を観察しても上記傾向は感じられるでしょう。


しかし、1980年代までは日本の大企業は「規模の経済」「範囲の経済」
のメリットを享受していました。
巨額の資金を使って生産設備や人に投資してますます繁栄していく
大企業とそれを支えている優秀な下請け・系列企業という図式が、
支配的でした。

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[永久運動の設計] 大企業が有利でなくなる理由
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しかし、1990年代以降、「今後は大企業が必ずしも有利でなくなる」
という見方が出てきました。

例えば、先に言及した「組織の盛衰」(1993年出版)で、堺屋太一氏は
「今後は組織は非属人的で大規模なフィルハーモニー型から属人的で
小規模なジャズバンド型へと変わっていくであろう」という見方を
示しています。
それ以外にも多くの論者が、今後は大企業が必ずしも有利でなくなると
説いています。その根拠は次の通りです。


【生産手段が安価になる】
IT系新興企業の生産手段(PC、情報インフラなど)は従来の大量生産型
企業の工場や機械と比べると安価です。
最近プロ野球参入問題で話題となっている楽天やライブドアは、
今でこそお金持ちですが、事業開始時に巨額の投資を必要としたわけ
ではありません。

【重要なのはアイデアとノウハウ】
従来の大量規格生産型の産業では、生産手段(工場や機械)が良ければ
安くて良い製品ができました。だから高価な生産手段を購入できる
大資本が有利だったのです。
しかし、IT系新興企業はアイデアやノウハウが命であり、生産手段が
良ければ良い製品できるということはありません。
高いコンピュータを買えば面白いサービスを提供できるわけではない
のです。

【情報格差がなくなる】
かつては情報のルートが限られていて、大企業でなければ手に
入らない情報が多かったのですが、インターネットの普及によって、
均質な情報が誰でもどこでも手に入るようになりました。
コンピュータの世界ではIBMや富士通内部にいなければ最先端の
情報が手に入らなかった時代もありましたが、現在では多くの
研究者、技術者、企業が最先端の情報をインターネットで公開
しているので、大企業でなければ手に入らない技術情報は少なく
なりました。

【顧客開拓が容易】
かつては「大手と下請け」「大手の系列」「長年のつきあい」
という関係で仕事が流れました。
しかし、インターネットの普及によって顧客や提携相手を全世界的に
求めることができるようになりました。

【標準化が進んだ】
標準化が進んだことにより企業間での分業が容易になりました
広い分野を自足的に行なう巨大企業よりも、専門の分野で高度な
能力を持つ企業同士が連携するほうが効果的になったのです。

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[永久運動の設計] 超巨大企業の時代へ
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必ずしも大企業が有利でなくなり、大企業のデメリット(非効率性、
共同体化など)がそのままであるとすると、中小企業が繁栄する時代に
なるはずです。

しかし、現実を観察すると世の中はそのようには動いていないことが
分かります。

銀行は統合を繰り返し、メガバンクが誕生しています。
日本の銀行は不良債権問題に苦しんでいるから統合するという面も
ありますが、それだけではなく、全世界的に金融の再編成、寡占化が
進んでいるのです。

自動車業界も全世界的に再編成が進み、日本でも日産、マツダ、
三菱などが外資の傘下に入りました。

通信業界、流通業界でも再編成と寡占化が進んでいます。

IT業界に目をやれば、マイクロソフト、アマゾン、IBM、オラクル
など巨大企業は次々と他の企業を買収しています。
2003年6月2日にピープルソフトがJDエドワーズを買収したら、6月6日
にはオラクルはピープルソフト自体を買収してしまう対抗措置を打ち
出しました。

第45号( http://www.kei-it.com/sailing/45-041018.html )で
「規模の経済」の例にあげたリクナビやリクナビNEXTはかつてない
ほど強大になっています。

「大企業の時代」から「中小企業の時代」になるのではなく、
「超巨大企業の時代」になってしまったようなのです。

> 資金はないが強力なアイデアを持つ小規模で身軽な企業が
> 前途洋々した新興企業になれる、というような伝説はもはや
> 成り立たないのだ。
> (ジョン・シーリー・ブラウン、ポール・ドゥグッド著
> 「なぜITは社会を変えないのか」より)


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[永久運動の設計] 次回以降の予告
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次号では、「超巨大企業の時代」についてより詳しく分析し、その中
での中小企業の生き方を探ります。

次号は、11月1日発行予定です。乞うご期待!!

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October 18, 2004

規模の経済、範囲の経済

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第45号 2004/10/18
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 大きくなるか?小さくなるか?
▼ [永久運動の設計] 一人当たりの採用コストは大企業の方が安い
▼ [永久運動の設計] 中小企業の中途採用の現状
▼ [永久運動の設計] リクナビやリクナビNEXTも「規模の経済」
▼ [永久運動の設計] 慶の営業に見る「範囲の経済」
▼ [永久運動の設計] 次回以降の予告
▼ [その他] マガジン紹介:ブランディング・コーチング


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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

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[永久運動の設計] 大きくなるか?小さくなるか?
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今週号から数回にわたって、「会社の規模」をテーマにします。

第40号( http://www.kei-it.com/sailing/40-040913.html )で次のように
表現した問題です。

> 【問6】
> 売上2億円の会社を5つ作るべきか、売上10億の会社を1つ作るべきか?


また、第13号( http://www.kei-it.com/sailing/13-040301.html )では
次のように表現しました。

> ○大きくなるか?小さくなるか?
> 会社は「規模の経済」「範囲の経済」の論理で大きくなる方がよいのか?
> それとも、コア・コンピタンスに集中し、残りの機能は極力アウトソーシング
> する、つまり小さくなる方がよいのか?
> ソフト会社の適正規模はどのくらいなのか?

カテゴリーとしては「永久運動の設計」に分類します。
「金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社」シリーズは財務寄りの話題、
「永久運動の設計」シリーズは、組織や制度的な話題を扱います。


それでは、「規模の経済、範囲の経済とは何か」から話しを始めましょう。

「規模の経済」「範囲の経済」は、経営学の教科書では次のように
定義されます。
・規模の経済:ひとつの製品を大量に生産することによる生産費用の低下
・範囲の経済:多数の製品を同時に生産することによる生産費用の低下

サービス業においては「製品」を「サービス」、「生産」を「提供」と
置き換えてもよいでしょう。


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[永久運動の設計] 一人当たりの採用コストは大企業の方が安い
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「規模の経済」の身近な例をあげましょう。

人材募集というものは中小ソフト会社にとっては悩みのタネです。

新卒採用の代表的なサイトはリクナビ( http://www.rikunabi2006.com/ )、
中途採用の場合はリクナビNEXT( http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/ )です。
これがものすごく高いのです。

リクナビは年間約500万円、リクナビNEXTは2週間で100万円以上かかります。
リクナビNEXTには2週間55万円のコースもありますが、実際には100万円
以上のコースでないと効果は期待できません。
ちなみに最も高いコースは2週間600万円です。
したがって、リクナビNEXTは1ヶ月で200万円~1,200万円かかることに
なります。しかも1ヶ月で求める人材を採用できる保証はありません。

中小企業の人事部長のため息が聞こえてきそうです。

但し、ここで重要なことは、単純に「中小企業が資金的にそれだけの
人材募集費を用意できない」というだけではないということです。
採用人数が少ないが故に一人当たりの採用コストが大きくなってしまう
という面もあるのです。

例えば、新卒を5名しか採らない中小企業がリクナビをやると一人当たりの
採用コストは、500万円÷5人=100万円 となります。
一方、新卒を100人採る大企業なら、一人当たりの採用コストは、
500万円÷100人=5万円 に過ぎません。

規模が大きくなることにより、費用が低下するという例です。


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[永久運動の設計] 中小企業の中途採用の現状
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少し余談になりますが、中小企業の中途採用の現状について記して
おきましょう。

大企業なら、中途採用の場合も採用予定人数が多く、人材募集費も
潤沢なので、迷うことなくリクナビNEXTの100万円以上のコースを選びます。

一方、中小企業は中途採用でも採用予定人数が少なく、人材募集費も
乏しいので、人材募集費を小出しに、中途半端に使ってしまいます。
例えば、リクナビNEXTの55万円のコースを契約してしまうのです。
55万円のコースだと100万円以上のコースよりも表示スペースは小さく、
表示位置も最後の方にまわされてしまいます。
知名度のある大企業ならともかく、知名度のない中小企業がそのような
ことをやっても効果が出るわけがありません。
効果が出ないから、さらに50万円位の単位で人材募集費を逐次投入して
いくことになります。
結局、人材募集費の年間の総額は相当な金額になりますが、良い人材は
いっこうに採用できずに、「人材募集費をドブに捨てた」という思い
だけが残ります。


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[永久運動の設計] リクナビやリクナビNEXTも「規模の経済」
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一人当たりの採用コストは中小企業よりも大企業の方が安くなる
ということは、規模の経済の一つの例です。
しかし、リクナビやリクナビNEXTそのものも「規模の経済」の好例です。
規模が大きいから下記の循環が発生するのです。

規模が大きく、情報量が豊富。
→情報が豊富だから、求職者が集まる。
→求職者が集まるから、ユーザ企業も高い金を払って契約する。
→さらに情報量が増えるし、リクルートは儲かるので再投資できる。

再投資の一例として「Yahoo!リクナビ」があげられます。
リクルートはソフトバンクに大金を払って今年の4月からYahoo!JAPANの
求人ページを買い取りました。
それがYahoo!リクナビ( http://rikunabi.yahoo.co.jp/ )です。
これによって、二番手以下の求人サイトは大きな打撃を受けたはずです。


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[永久運動の設計] 慶の営業に見る「範囲の経済」
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次に「範囲の経済」の身近な例をあげましょう。

慶には下記の3つの事業部が存在します。
・Javaによる一括請負を得意とするWEBシステム開発事業部
・準委任契約による技術支援に特化したITサービス事業部
・有料職業紹介を行う人材コンサルティング事業部


例えば、WEBシステム開発事業部に一括請負の仕事を発注している
会社があったとしましょう。
慶の営業マンがある日その会社を訪問し、担当者と雑談している時、
その担当者が「そう言えば、弊社の中国オフショア部門が『日本語と
中国語ができる優秀なSEを採用できなくて困っている』って言って
いましたよ」と話したとしましょう。
慶の営業マンは、「それなら弊社の人材コンサルティング事業部に
お任せください」と言うことができます。
あるいは、「他部門で行っているテレビ会議システム開発プロジェクトで
VC++のプログラマが2名不足しています。弊社内常駐になりますが・・・」
と言われたら、慶の営業マンは「それなら弊社のITサービス事業部で
対応します」と言うことができます。

つまり、1社で複数の製品やサービスを持っていれば、生産費用
(この場合は営業コスト)が低下するのです。これが「範囲の経済」です。


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[永久運動の設計] 次回以降の予告
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それでは、企業は規模が大きくて、製品が多い方が有利かというと
必ずしもそうではありません。このあたりを次号で解説します。
次号は、10月25日発行予定です。乞うご期待!!

また、「金持ちソフト会社、貧乏ソフト会社」シリーズで、近いうちに、
「適正な自己資本比率はどのくらいか?」という問題も取り上げようと
思っています。
売上が大きくなっていくと自己資本比率は下がってきます。
「売上数億円で資本金が1,000万円ということは、アンバランスなこと
なのか?」という問題です。


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