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June 21, 2004

会社法の主要な登場人物

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_/_/_/_/_/_/_/ ソフトウェア業界 新航海術 _/_/_/_/_/_/_/_/_/
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第29号 2004/06/21
▼ まえがき
▼ [永久運動の設計] 会社法の主要な登場人物
▼ [永久運動の設計] 株主とは
▼ [永久運動の設計] 株主と代表取締役との関係
▼ [永久運動の設計] 会社法の魅力的で奥の深い部分
▼ [永久運動の設計] 取締役会、取締役、執行役員
▼ [永久運動の設計] 中小企業の実際
▼ 次回以降の予告

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まえがき
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蒲生嘉達です。お疲れ様です。

本メルマガは、慶の社員(正社員・契約社員)及び慶と契約している
個人事業主の方々に配信しています。

感想をお持ちなら是非返信してください。

今週号から「永久運動の設計」シリーズを本格的にスタートします。

会社の「お金」の話しをするとき、会計の基本を避けて通れないのと
同様に、会社の「かたち」の話しをするとき、会社法の基本は避けて
通れません。
したがって、今週号では会社法の基本をお話しします。


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[永久運動の設計] 会社法の主要な登場人物
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会社法での主要な登場人物は株主、代表取締役、取締役、監査役です、

会長、社長、副社長、常務、専務、部長、課長、などの役職は
たとえば「当社では○○とはこのような役職です」と勝手に
決めることができます。

しかし、株主、代表取締役、取締役、監査役の役割と権限は
会社法によって定められており、会社独自に変更することは
できません。
法律で決まっているから守らなければならないというよりも、
株式会社という仕組みや原理から、それらの役割と権限が必然的に
導き出されるのです。

添付ファイルに会社法のエッセンスが示されています。
この絵を理解すれば、会社法の本を何冊読んでも分からないことが
理解できます。


「図1:個人事業主」は、オーナーと経営者がいる下記のような
個人事業主を想定しています。
・慶太郎が個人事業として八百屋YAO-KEIを経営していました。
・慶太郎は他の仕事を立ち上げるため、弟の慶次郎にYAO-KEIの
 経営者となってもらいました。

「図2:株式会社」は株式会社SUPER-KEIを表しています。


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[永久運動の設計] 株主とは
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YAO-KEIで売られているリンゴは事業主である慶太郎のものです。
慶太郎はそのリンゴを売ってもいいし、自分で食べてもいいのです。

一方、SUPER-KEIで売られているリンゴの所有者はSUPER-KEIという
法人です。
株式を100%所有している株主でも、SUPER-KEIで売られている
リンゴを勝手に食べることはできません。
株主は会社資産の持ち主ではありません。

今度は借金について考えてみましょう。
YAO-KEIの借金が膨らみ、YAO-KEI名義の資産を全て処分しても
足りないなら、慶太郎は自分の貯金も持ち家も全て処分して借金を
返さなければなりません。

一方、SUPER-KEIの場合は、SUPER-KEI名義の資産を全て処分し、
尚且つ借金が残っていても、株主は自分の資産を差し出す必要は
ありません。
それによって、会社が倒産しても株主は自分が出資した株式を
失うだけです。

> 船が行方不明になった場合、船員は命を落とすが、金持ちが
> 受ける損害はその航海に出資したお金だけにとどめることができる。
(ロバート・キヨサキ「金持ち父さん 貧乏父さん」より)


株主は会社資産の持ち主でないのと同様、負債の持ち主でもないのです。
負債の持ち主はSUPER-KEIという法人です。

つまり、株式会社にあっては、株主の資産・負債と会社の資産・
資産とは厳格に区別されているのです。

しかし「会社は株主のモノ」という主張も間違いではありません。
株主は下記の権利を所有しているという意味で、会社を所有して
いるのです。
・株主総会における議決権
・利益にたいする配当の請求権


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[永久運動の設計] 株主と代表取締役との関係
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YAO-KEIの経営者である慶次郎は慶太郎の代理人であり、太郎と次郎
との契約は委任契約です。

 「私は慶次郎を代理人と定め、下記事項を委任しました。
  委任内容:YAO-KEIの経営全般       慶太郎」

という委任状による契約です。

それでは、株主と代表取締役との間に委任契約があるのでしょうか?

株主が株主総会で取締役を選任し、取締役会が取締役の中から
代表取締役を選任します。
このことを考えると、代表取締役は株主の代理人であるかのように
思ってしまいます。

しかし、株主と代表取締役との間に委任契約はありません。
その理由は下記のとおりです。

・YAO-KEIの場合は慶太郎の意思で経営代理人を置くことも置かない
 こともできるのに対し、SUPER-KEIの場合は株を100%所有している
 株主でも、代表取締役そのものを無くすことはできません。
 株主の意志によって代表取締役が存在するのではなく、
 SUPER-KEIが法人であるが故に代表取締役が存在するのです。

・慶次郎の経営は慶太郎の代理であり、慶次郎の行為は委任された
 範囲内である限り慶太郎の行為であると見なされるのに対し、
 SUPER-KEIの代表取締役の行為は株主の行為とは見なされません。
 法人としてのSUPER-KEIの行為と見なさます。


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[永久運動の設計] 会社法の魅力的で奥の深い部分
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株主と代表取締役との間に委任契約が無いとすると、代表取締役は
誰に頼まれて仕事をしているのでしょうか?

SUPER-KEIという法人に信任されて、法人の利益のために仕事をして
いるのです。
しかし、SUPER-KEIという法人が代表取締役に頼んでいるところを
見た人がいるでしょうか?いるわけがありません。
法人というものは形の無い抽象的存在だからです。

実は、この部分は「代表取締役とは会社から信任によって、経営を
任せられているヒトである。これは法人という抽象的存在を社会的に
実在させるために不可欠な仕組みなのだ」と言うしかないのです。
代表取締役とは社内の役職ではなく、会社そのものを社会的に実在
させるための機関です。

この仕組みによって、会社は社会的に形を与えられ、会社資産の
所有者になれるのです。
株主は会社負債からの自由を獲得し、積極的な投資活動ができるよう
になります。
その一方で、「会社は株主の意志とは別の独立した意志を持っている」
という主張も出てきます

このあたりが会社法の魅力的で奥の深い部分です。

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[永久運動の設計] 取締役会、取締役、執行役員
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> 注意しなければならないのは、取締役会のメンバーである取締役と、
> その取締役会で選ばれる代表取締役とは、言葉の上ではほんとうに
> 混同しやすいのですが、法律的には厳密に区別されるべきであると
> いうことです。(岩井克人著「会社はこれからどうなるか」)

取締役会の権限は下記の3つです。
・重要な会社の業務を決定し、
・会社を代表して実際に業務を執行する代表取締役を選び、
・代表取締役の職務の執行を監督する。

代表取締役を選んだ後は、代表取締役と執行役員の監督が取締役会の
主な仕事になります。執行役員とは代表取締役から権限を一部委譲
されて、実際に経営を行う役員です。

したがって、取締役会の仕事は代表取締役を選んだ後は、監査役の
仕事に近くなります。このことは下記の事実にも示されています。

> 2002年4月の商法改正では、取締役会の過半数を「社外取締役」
> にし、実際の経営をおこなう執行役員を取締役会と切り離して
> その下に置く、アメリカ型の経営者モデルがオプションとして
> 導入されています。そして、そのようなオプションを選んだ会社
> は監査役を廃止してもよいことにしたのです。
> (岩井克人著「会社はこれからどうなるか」)


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[永久運動の設計] 中小企業の実際
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但し、上記は法律的な建前であり、特に中小企業においては、
株主も代表取締役も取締役も執行役員も未分化です。
監査役は大企業でも中小企業でも形骸化しています。

それどころか、多くの中小企業では、経営者個人が会社の借金の
連帯保証人になっています。
これは会社の借金にたいして経営者個人が自分の資産を担保に差し
出していることに等しく、会社資産と個人資産の峻別という原則すら
怪しいのです。

しかし、本来の役割を整理してみると慶のあるべき姿について
様々なアイデアが浮かんで来ます。

・執行役員を明確にした方がよいのでは?
・社員を執行役員に登用してもよいのでは?
・社外取締役を入れて、執行部を監視した方がよいのでは?

株式会社という仕組みは非常に柔軟で、永久運動を設計するために
様々な形態を生み出せるものなのです。

> 物財に関心を持ち、物財を豊富にすることに幸せを感じる精神が
> 生み出した近代は、自らの期待を実現するために数々の「作品」
> を創り出したが、その中でも「企業」という組織は最高の傑作と
> いってよい。
> (堺屋太一「組織の盛衰」より)

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次回以降の予告
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次号は、6月28日発行予定です。乞うご期待!!


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発行:
株式会社 慶
 代表取締役 蒲生 嘉達
y_gamou@kei-ha.co.jp http://www.kei-ha.co.jp
TEL:03-5951-8490 携帯:090-1258-6347

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