「デフレの正体」に対する批判についての私見
第235号「デフレの正体」の補足です。
藻谷浩介著「デフレの正体」に対するネット上での批判は大きく次の3つだと思います。
①グローバル化(特に新興国との競争)による相対価格の低下を無視している。
(例:http://agora-web.jp/archives/1044148.html )
②高齢化は成長率低下の一つの原因にすぎない。東アジアだけでも、韓国、台湾、シンガポール、香港の出生率は日本より低く、高齢化率も90年代までは日本は主要国の平均程度である。(例:http://agora-web.jp/archives/1044148.html )
③マクロ経済学の基本的知識がない。
③については私もマクロ経済学の基本的知識がないので、語ることができません。
しかし、①②の批判は誤解だと思います。
①について:
グローバル化による相対価格の低下については、同書は少し触れています。
現在生じている「デフレ」には、国内の諸物価が国際的な水準に向けて下がっているという面もあります。90年代から中国という巨大な生産者が立ち上がってきましたが、彼らの生産コストや国内物価は日本よりもずっと低いわけです。そういう存在が横にあれば、中国でも製造できるものの日本国内での値段が国際的に標準的な価格に向けて下がっていくのは当然ということになります。
(P.187)
②について:
「デフレの正体」で重視にしていることは、出生率の減少や高齢化率の上昇ではなく、生産年齢人口の減少です。
出生率減少、あるいは、高齢化率上昇、イコール 生産年齢人口減少ではありません。
例えば、女性就労比率が上がれば生産年齢人口減少のペースは弱まります。
(オランダでは)人口が高齢化していく中で、昔は3割くらいしかなかった女性就労比率がどんどん上がっていった。
(P.225)
また、移民を積極的に受け入れている国では、出生率が低下しても生産年齢人口減少のペースは弱まります。
したがって、外国と比較する場合は、その国の出生率や高齢化率ではなく生産年齢人口で比較すべきでしょう。
また、外国と比較する場合には、日本とその国との消費水準の違いも考慮しなければならないと思います。
こういうふうに時間を単位にして考えると、一人当たりの消費水準がすでに高くしかも人口が減っている日本のような国での、一人当たりではなく総額としての経済成長というものがいかに困難か、よくおわかりいただけると思うのです。
(P.173)
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