仮想マシンの誕生
第231号「仮想化の原型」の補足です。
「MINIXオペレーティング・システム」(1989年7月版)「1.5.3 仮想マシン」からの引用です。
仮想マシンの誕生の経緯とその本質が、簡潔に分かりやすく魅力的に書かれています。
「1.5.3 仮想マシン」の章はわずか1ページの短い章で、下記引用はその8割程度です。図1.21は原本と少し変えています。
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1.5.3 仮想マシン
OS/360の最初のリリースはただのバッチシステムだった。しかし、360ユーザーの多くは時分割の機能を必要としていた。そこでIBMの内外を問わず多くのグループがこのオペレーティング・システム用に時分割システムを書こうと考えた。IBMによる正式の時分割システムであるTSS/360の発表は遅れ、やっと市場に出てきても大きすぎて、速度も遅かったためこれを採り入れるものは少なかった。結局50,000,000ドルものお金を注ぎ込んだこのシステムの開発は中止となった。しかしマサチューセッツ州ケンブリッジにあるIBMの科学技術センタの開発グループが全く新しいシステムを完成し、IBMは後にこれを製品化し、現在でも広く使用されている。
このシステムは最初CP/CMSと名付けられたが、現在ではVM/370と呼ばれており、かなり鋭い洞察に基づいている。それは、時分割システムは(1)マルチプログラミング(2)裸のハードウェアより便利なインターフェイスを備えた拡張マシンを提供する、ということであり、VM/370の本質はこれら2つの機能を完全に分離することである。
システムの中心は仮想マシンモニタ(virtual machine monitor)と呼ばれ、裸のハードウェア上で稼働する。そして図1.21の様に複数の仮想マシンを1つ上のレイヤに置いてマルチプログラミングを行う。しかし他のオペレーティング・システムと異なり、これらの仮想マシンは拡張されたマシンではなくファイルやその他の便利な機能も備えていない。その代わり、これらは裸のハードウェアの正確なコピーであり、カーネル/ユーザモード、入出力デバイス、割込みおよび実際のマシンが持っているその他すべてが含まれている。
仮想マシンは実際のハードウェアと同一なため、そのハードウェア上で直接実行できるオペレーティング・システムならどれでも実行できる。事実異なる仮想マシンが異なるオペレーティング・システムを実行することができるし、またそれが一般的である。
・・・(中略)・・・
マルチプログラミングと拡張マシンを提供する機能を完全に分離することによって、それぞれの部品はかなり簡素化され、柔軟性を持つようになる。
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