第9の嘘「世界は脱工業化時代に突入した」の要約
第2xx号(未発行)の補足です。
「世界経済を破綻させる23の嘘(ハジュン・チャン著)」の中の「第9の嘘:世界は脱工業化時代に突入した」の要約です。
(1)製造業の生産性向上によって非工業化が起きる
サービスではその性格上、多くの場合、生産物の品質を落とさずに生産性の向上をはかるのは本質的に難しい。
したがって、サービスは製造品よりも生産性の向上が遅く、そのため、国内生産に占める製造業の比率は減って行く。
国内生産に占める製造業の比率の減少のほとんどは、製造品の絶対量の減少のせいではなく、サービス業と比較して製造品の価格が安くなったためである。
(2)非工業化のマイナス面
しかし、非工業化には次のマイナス面がある。
- 生産性向上のスピードが遅いサービス部門のほうが優勢になった経済では、全体の生産性向上のスピードも落ちてしまう。
- ある国の製造業部門の生産性向上のペースが他国よりも遅い場合も非工業化は進む。その場合、その国の製造業部門は国際競争力に欠けるということであり、短期的には国際収支の問題が生じ、長期的には生活水準の低下を招いてしまう。
- 次の理由で国際収支の赤字をサービスの輸出で穴埋めすることは難しい。
- サービスは貿易品になりにくい。
- サービスの中にも知識サービスは交易可能で、生産性も急速に向上し得るが、知識サービスをどこよりも発展させているとされるイギリスとアメリカにしても、その輸出によって長期的には国際収支の赤字を穴埋めすることはできそうにない。
- 生産性が急速に向上しうるサービスは、おもに製造会社に仕えるサービスであり、したがってまず先に強い製造業の基盤を築かないかぎり、そうしたサービス業を発展させるのはきわめて難しい。
そして、
わたしたちはいま脱工業化時代に生きているのだという神話のせいで、非工業化のマイナス面を無視するようになった政府がたくさんある。
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